ギャンブルによる借金問題に直面しているあなたへ。ギャンブル等依存症は、自分でコントロールできなくなり日常生活に支障を及ぼす精神疾患であり、健康問題だけでなく多重債務や貧困といった経済的問題にも発展しがちです¹。また、一度借金をしてまでギャンブルを始めてしまうと、借金返済のためにさらにギャンブルで稼ごうと考え、負けが重なるほど借金が増えるという悪循環に陥りがちです²。「借金をギャンブルの儲けで返そうとする」のは極めて危険で、この考えから抜け出さない限り状況は悪化する一方です。ですがどうか絶望しないでください。正しい対処と支援によって、借金問題もギャンブル依存症も必ず改善できます。ここでは経済再建のための5つのポイントをチェックリスト形式でご紹介します。
1. 債務整理を検討し、専門家に相談する
借金問題を抱えたとき、まず考えるべき現実的な解決策が債務整理です。債務整理とは、弁護士や司法書士といった法律の専門家に依頼して、借金(債務)の額や返済方法を見直し、将来の利息カットや元本の減額などを債権者と交渉したり裁判所に申し立てたりする手続きのことです³。任意整理・特定調停・個人再生・自己破産といった手段があり、自力で返済が難しい場合に借金を法的に減額・免除して生活再建を図れます³。特に「ギャンブルが原因の借金でも債務整理は可能」であり、任意整理や個人再生では借金の理由を問われないためギャンブルによる借金でも手続きできます⁴。一方、自己破産だけは借金の原因が問われ、ギャンブルによる借金は原則として免責(借金帳消し)されない点に注意が必要です⁴(※裁判官の裁量で事情次第では免責が認められるケースもあります⁴)。専門家に相談すれば、債務整理に着手した段階で受任通知(介入通知)を債権者へ発送してもらえるため、取り立てや督促が即ストップします³。これだけでも精神的負担は大きく軽減されるでしょう。また、債務整理を行うと信用情報機関に事故情報が登録され、以後しばらく新たな借入が難しくなるというデメリットも生じます³。しかし今は借金をこれ以上増やさず生活を立て直すことが最優先です。費用面が不安な場合でも、法テラスなど無料相談窓口や分割払い制度を利用できる場合があります。
① 債務整理の準備度セルフチェック ▶
2. 収支を見直し、現実的な返済計画を立てる
借金返済の基本は、ギャンブル以外の方法でコツコツ返していく計画を立てることです。まず現在の借金総額と毎月の利息、そしてあなたの収入と月々の生活費を洗い出してみましょう。毎月の収入から生活費を差し引いた残りが、実際に返済に充てられる金額です⁵。生活費が無駄遣いで膨らんでいると感じる場合は、家計簿をつけて支出を見直してください。例えば娯楽費や交際費、ギャンブル関連の支出は思い切って削減し、返済に回せる額を少しでも増やします⁵。そのうえで、完済までの期間と毎月の返済額を記載した返済計画表を自分で作成してみましょう。ゴールが見える形にすることでモチベーションも上がり、「〇年後までに完済する」といった具体的な目標意識が芽生えます。返済計画を立てる過程で、自力では完済の目処が立たないと判断した場合は、再度前項の債務整理も検討してください。逆に計画次第では十分に完済可能と分かれば、あとは計画通りに支払いを続けるのみです。
② 収支見直し&返済計画セルフチェック ▶
3. 家族や支援団体の力を借りる
一人で抱え込まないことも重要です。借金やギャンブルの問題は恥ずかしい、と誰にも相談できずにいる方は多いでしょう。確かに打ち明けるのは勇気が要りますが、信頼できる家族や友人に現状を説明し協力を仰ぐことは、問題解決への近道です。あなた自身がギャンブル依存症に陥っている場合、せっかく債務整理で借金を整理しても、またギャンブルで借金を繰り返してしまう可能性があります⁶。ギャンブルによる借金癖を断ち切るには、借金問題と依存症の両方に対処しなければなりません。とはいえ、ギャンブル依存からの自力での回復は困難であるケースが多いため、専門の医療機関や相談窓口に頼ることが大切です⁶。各地の精神保健福祉センターや依存症専門外来では、医師やカウンセラーによる治療・相談が受けられます。自治体の運営する多重債務者向け相談窓口や、公益財団法人日本クレジットカウンセリング協会などでは、借金・家計の立て直しについて無料相談に乗ってもらえます。また、自助グループの力も借りてみましょう。ギャンブル依存症当事者の自助グループであるGA(ギャンブラーズ・アノニマス)や、その家族版であるギャマノンといった団体が全国で定期的にミーティングを開催しています⁷。同じ悩みを持つ仲間の体験談や支え合いは、大きな励みになるはずです。家族に協力を求める場合は、金銭管理を任せてしまうのも一つの方法です。キャッシュカードやクレジットカードを預かってもらい、自分の意思だけでは簡単にお金を下ろせない環境を作りましょう。
③ 家族&支援ネットワークセルフチェック ▶
4. これ以上借金を増やさない工夫をする
借金問題をこれ以上深刻にしないために、新たな借金を絶対にしない工夫を徹底しましょう。まず、消費者金融やクレジットカードでのキャッシング枠は今すぐ利用を止めてください。カードローンやリボ払いなどは一見返済を先延ばしできるように思えますが、金利負担で借金が雪だるま式に増える原因です。手元にクレジットカードがあるとどうしても使ってしまう場合は、思い切って解約してしまうことも検討しましょう。どうしてもカードを残したいなら限度額を引き下げるなど、自分で自分に貸し付けない仕組みを作ることが大事です。また、金融機関が提供する「貸付自粛制度」の活用も有効です。これは浪費癖やギャンブル依存によって生活に支障をきたすおそれがある人が、自分自身(または家族が代理人となって)を対象者として申告することで、信用情報機関にその情報が登録され、一定期間あらゆる金融業者からの新たな借入を事実上ストップできる制度です⁸。簡単に言えば、「自分はこれ以上借金しません」という宣言を信用情報に載せてもらう仕組みで、貸金業者や銀行は貸付自粛情報を見た場合、審査で融資を控えるようになっています⁸。貸付自粛の申請先は日本貸金業協会か全国銀行協会(全国銀行個人信用情報センター)で、郵送や窓口で手続きできます。こうした制度を使えば、自分の意思とは関係なく周囲の金融機関から借金できない状態に自分を追い込めますので、借金地獄へのさらなる転落を防ぐ強力な歯止めになるでしょう。その他にも、日常生活で現金を持ち歩く額を最低限にするといった工夫も有効です。お財布に余分なお金がなければ、ギャンブルへの誘惑に駆られてもすぐには行動に移せなくなります。
④ 新たな借金を作らない工夫セルフチェック ▶
5. 信用回復と生活再建のステップを踏む
債務整理の実行や地道な返済の継続によって借金問題が解消しても、それで終わりではありません。経済的な再建には失った信用を回復し、安定した生活基盤を取り戻すプロセスが必要です。債務整理後や長期延滞の履歴がある場合、信用情報にいわゆる「ブラックリスト」状態として記録が残り、一定期間はローンやクレジットカードの利用ができなくなります。一般的には借金問題の解決後、約5〜7年程度は新たな借入やクレジット利用が難しくなると理解しておきましょう⁹。しかし、この期間は言い換えれば「借金に頼らず健全な生活を送るための準備期間」です⁹。たとえ数年間クレジットが使えなくても、現金やデビットカードで生活費をやりくりし、身の丈に合った支出習慣を身につければ問題はありません。むしろ強制的にローンに頼れない状況を前向きに捉えて、家計を立て直すチャンスにしてください⁹。時間の経過とともに信用情報上の事故情報は抹消されます。その後は再びクレジットカードを作ったりローンを組んだりすることも可能になりますが、同じ過ちを繰り返さないよう十分注意が必要です。信用回復後に真っ先にすべきことは、新たな借金ではなく貯金をすることです。少額でも構いませんので毎月継続的に貯蓄し、「借金ゼロでお金を蓄える」経験を積み重ねていきましょう。これは家族や周囲の信頼を取り戻すことにもつながります。実際、一度ギャンブルで多額の借金を作ってしまうと、家族からの信用も失墜している場合が多いものです。信頼回復には時間がかかりますが、金銭面の透明性を保ち嘘をつかないこと、約束を守ることを徹底してください。必要なら定期的に家族に家計の状況を報告し、今後二度と問題を起こさないという姿勢を示しましょう。働いて収入を安定させることも重要です。借金返済中は副業や収入アップを目指すのも良いですが、ギャンブル依存の回復期には生活リズムを整え心身の健康を取り戻すほうが優先です。就労支援や職業訓練を活用しながら、自分にできる範囲で社会復帰へのステップを踏んでください。新たな趣味や運動などポジティブな活動に時間を使うことも、再発防止と生活再建に効果的です。
⑤ 信用回復と生活再建セルフチェック ▶
まとめ: ギャンブルで作った借金に追い詰められていると、「このまま人生が終わるのでは…」という深い不安に襲われるかもしれません。しかし、借金問題もギャンブル依存症も適切に対処すれば必ず良い方向へ向かいます。実際、専門的な治療と支援を受ければギャンブル依存症からの回復は十分可能であり¹⁰、放置すると悪化する一方の借金問題も、正しい行動を起こせば必ず解決への道筋が見えてきます。大切なのは「もう遅い」と諦めないことです。どんなに多額の借金でも、法律の力や周囲の協力を借りながら計画的に取り組めば完済の日はやって来ます。そしてギャンブル依存症も、恥じるべき「意志の弱さ」ではなく治療可能な病気です。どうかご自身を責めすぎないでください。問題に正面から向き合い、今回ご紹介した5つのポイントを参考に行動していけば、借金まみれの生活から抜け出し、新しい人生を取り戻すことは決して夢ではありません。あなたにはそのチャンスがあります。一人ではありませんから、専門家や家族の手を借りつつ、できることから一歩ずつ始めてみましょう。
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参考文献:
¹ ギャンブル等依存症でお困りの皆様へ|消費者庁
² 〖弁護士が解説〗オンラインカジノで借金!その危険性と解決策|リーガライフラボ(アディーレ法律事務所)
³ 借金等の問題について|おおさか依存症ポータルサイト
⁴ ギャンブルが理由の借金でも債務整理できる?バレるケースについても解説|弁護士法人・響
⁵ ギャンブル依存症の実態と克服方法|借金返済方法も解説|ベンナビ債務整理
⁶ ギャンブルが理由の借金でも債務整理できる?バレるケースについても解説|弁護士法人・響
⁷ ギャンブル等依存症でお困りの皆様へ|消費者庁
⁸ 貸付自粛制度について|金融庁
⁹ ブラックリストとは 載る条件や期間、解除のやり方まで解説|債務整理のとびら(朝日新聞社)
¹⁰ ギャンブル等依存症でお困りの皆様へ|消費者庁