高齢の親がギャンブルにのめり込んでいるかもしれない…そんな不安を抱えていませんか?ギャンブル依存症は若年層だけの問題ではなく、シニア世代にも広がりつつあります。近年の調査では、日本の成人人口の約1.7~2.2%がギャンブル依存症の疑いがあるとされ、その約4割は50代以上の中高年層が占めているとの報告もあります¹。高齢者の場合、一見穏やかに見えても、その陰でギャンブルに生活を蝕まれているケースが潜んでいるのです。
ギャンブル依存症は本人の意思の弱さや性格の問題ではなく、アルコール依存症などと同じ「病的賭博」という心の病です。放置すれば家庭崩壊や経済破綻、健康悪化にまで繋がりかねません。一方で、適切な治療や支援によって回復は可能であり、家族の気づきと働きかけが何より重要です。本記事では、シニア世代特有のギャンブル依存のリスク要因や兆候、そして家族として取るべき対処法と利用できる制度・支援策について、実例や統計データを交えながら丁寧に解説します。
高齢者のギャンブル依存症が増える背景
少子高齢化が進む日本では、高齢者のギャンブル依存が新たな社会問題として浮上しています。かつてギャンブルは若者の娯楽という印象がありましたが、定年退職後のシニア層がパチンコや競馬などにのめり込むケースが増えているのです。実際、日本は世界有数のギャンブル市場を抱えており、中でも身近なパチンコは年間約14.6兆円規模とも言われます。2020年代後半にはカジノを含むIR(統合型リゾート)の開業も見込まれており、専門家からは「高齢者ギャンブル依存症への対策が急務」と指摘されています。
こうした背景には、高齢者を取り巻く社会環境の変化があります。内閣府の「高齢社会白書」によれば、一人暮らし高齢者の数は1980年から2015年にかけて男性で約19万人から192万人(全高齢男性の4.3%→13.3%)、女性で約69万人から400万人(同11.2%→21.1%)へと急増しました。高齢者の単身世帯が増え孤立しがちな現状は、寂しさや退屈を埋める手段としてギャンブルに走りやすい土壌を生んでいるのです。実際、「定年後に家に一人でいると寂しくてついパチンコ屋に行ってしまう」という話は珍しくありません。
さらに、高齢になると若い頃に比べ意志力や判断力が低下し、ストレス対処能力も落ちる傾向があります。厚生労働省の調査でも、高齢者は社会的孤立や収入減少など複数のリスク要因を抱え、ギャンブル依存症になりやすいことが指摘されています。加えて現在のシニア世代は、若い頃からパチンコや競馬を娯楽としてきた経験率が非常に高い層です。国立病院機構久里浜医療センターの調査によれば、60代男性の生涯ギャンブル経験率は77.4%、70代でも67.9%に達しています。長年の娯楽だったギャンブルが、退職後の生活でも習慣的に続き、気付けば依存症レベルに陥ってしまうケースも少なくありません。
こうした要因が重なり、高齢者のギャンブル依存症は「静かな増加傾向」にあります。しかし周囲からは気づかれにくく、当の本人も「自分が依存症だ」とは認めたがらないため、問題が表面化しにくいのも特徴です。
高齢者がギャンブル依存症に陥りやすい理由
退職後の孤独感と喪失感
第一に挙げられるのが、退職後の環境変化によるストレスです。英語で“Retirement, Relationship, Reduction of income”の頭文字を取った「3つのR」という言葉があるように、定年後は収入の減少、人間関係の変化(子どもの独立や配偶者との死別など)、そして日々の役割を失う退職そのものと、大きな生活の転機が重なります。これらは高齢者にとって大きな心理的負担となり、現実の寂しさや不安から逃れるためにギャンブルにのめり込んでしまうことがあります。
特に「孤独」は高齢者ギャンブル依存症増加の大きな原因です。長年連れ添った配偶者を亡くし、一人暮らしになった寂しさを紛らわせるためにパチンコ店に通い始め、その刺激に救いを求める…そんなシニアの姿は決して他人事ではありません。「暇を持て余してついギャンブルに手を出したらやめられなくなった」というのは典型例で、はじめは少額の遊びでも、気付けば財布のお金がすっからかんになり、生活費(年金)にまで手を付けて借金を重ねてしまう事例もあります。
認知機能の低下と判断力の衰え
もう一つ、高齢者特有のリスク要因として見逃せないのが認知機能の低下です。年齢を重ねると前頭葉の働き(判断力や衝動の抑制)が弱まることがあり、そうした変化はギャンブルへの依存傾向を高めます。例えば認知症の初期段階では、お金の管理が甘くなったり計画性が失われたりしがちです。その結果、「あと一回だけ」「次こそ勝てる」と自制が利かなくなり、年金支給日に下ろした現金をその日のうちにパチンコでほとんど使い果たしてしまうようなケースも報告されています。また物忘れが進むと、昨日大負けしたことさえ忘れてまた翌日も賭けてしまうなど、失敗から学習できずに負のループに陥る危険もあります。こうした認知機能の低下による判断力・自制心の衰えは、高齢者がギャンブル依存に陥りやすく、抜け出しにくくする一因です。
さらに、高齢者は体力や健康状態の悪化からストレス耐性が下がり、不安や落ち込みを感じやすくなります。心の隙間を一時的に埋めてくれるギャンブルは、そうした辛さからの「逃げ場」として誘惑的です。「ギャンブルをしている時だけは嫌なことを忘れられる」「退屈な毎日に張り合いが出る」と感じ、気付けば依存症的な状態に進行してしまうのです。実際、ギャンブル依存症の人には高血圧や不眠症、肥満など身体面の不調が増え、特に高齢者では心血管疾患の発症率が高まるとの研究報告もあります。これは常態化したストレスや生活リズムの乱れが健康を害するためで、ギャンブル依存が単にお金の問題だけでなく健康問題でもあることを示唆しています。
相談しづらさと問題の潜在化
高齢者世代特有の心理的ハードルとして、「人に相談しづらい」ことも挙げねばなりません。ギャンブル依存症はまだ社会的な認知が充分とは言えず、特に年配の方ほど「恥ずかしいことだ」「自分の弱さのせいだ」と抱え込みがちです。戦中戦後の苦労を経てきた世代には「人様に迷惑をかけてはいけない」「家族の問題は家族で解決すべき」という意識が強く、借金や浪費の悩みを他人に打ち明けることへの抵抗感が大きい場合があります。そのため、問題を隠そうと嘘を重ねてしまう傾向も強く、家族ですら気付かないうちに事態が深刻化するケースがあるのです。
また最近ではインターネットやスマホで24時間いつでも賭け事ができるようになり、周囲にバレずにギャンブルを続けられてしまう環境があります。例えば競輪や競馬のネット投票、オンラインカジノや違法な海外ブックメーカーなど、家に居ながらにして利用できる賭博も増えています。高齢者の中にもデジタルに馴染みつつある方は多く、家族が目を離した隙にオンライン賭博に手を出しているケースも否定できません。その意味で、現代の高齢者は「隠れギャンブル依存症」になりやすい状況にあります。
家族が気づくべきギャンブル依存のサイン
高齢のご家族に以下のような不自然な変化は見られないでしょうか?これらはギャンブル依存症に陥った人によく見られる兆候です。特に年金暮らしの高齢者の場合、日々の生活費が限られている中で金銭トラブルの兆しが出やすいため、経済面の変化に敏感になることがポイントです。
- 金銭の消失が早い・不明なお金の使途:毎月の年金やお小遣いがすぐになくなってしまう、財布に入れておいた現金がいつの間にか消えている、通帳残高が急減している、といった金銭面の異変は重要なサインです。ギャンブルにのめり込むと生活費まで賭け事に充ててしまいがちなため、公共料金の滞納通知や借金の督促状が届く、クレジットカードの現金化や消費者金融からの借入が増える、といった形で表面化することもあります。年金を受け取った直後に急に機嫌が良くなり、数日後に落ち込んでいるような場合、その間に大金を使い果たした可能性も疑われます。
- 隠し事や嘘が増える:ギャンブル依存症の人は後ろめたさから嘘を重ねて隠そうとする傾向があります。最近やけに帰宅時間が遅かったり、「友人と会っていた」「ちょっと散歩に行っていた」など言い訳が増えたりしていませんか?部屋を掃除した際に古い競馬新聞や大量のスクラッチくじの削りかすが出てきた、趣味でもないのにパチンコ屋の会員カードを持っていた、といった場合は要注意です。またお金の使い道について質問すると怒ったりはぐらかしたりする、給与明細や年金額を明らかにしなくなった—こうした態度も何かを隠しているサインかもしれません。
- 借金や金銭トラブル:家族や知人にお金を無心する頻度が増える、家に取り立ての電話がかかってくる、質屋やリサイクルショップの利用履歴がある、果ては家財道具が勝手に売られているといった事態は深刻です。高齢者の場合、自分名義のクレジットカード枠や消費者金融からの借入が限界になると、サラ金に手を出したり高利の闇金融に走るケースもあり得ます。放置すれば多重債務による自己破産や、最悪の場合は闇金絡みのトラブルに巻き込まれる危険すら孕んでいます。
- 生活の乱れや健康悪化:ギャンブル中心の生活になると、それまで規則正しかった生活リズムが乱れてきます。朝早くからパチンコ店に出かけて夕飯時まで戻らない、食事をおろそかにして痩せてきた、趣味だった園芸やテレビ観賞をしなくなった、部屋が散らかっていても気にしなくなった等、日常生活への関心が薄れ始めるのも黄信号です。また賭けに負けたイライラから怒りっぽくなったり、逆に落ち込んで塞ぎ込むといった感情の浮き沈みが激しくなる傾向も指摘されています。こうした変化が見られたら、心の中でギャンブルが大きな割合を占めつつある可能性があります。
以上のようなサインに一つでも思い当たることがあれば、早めに声をかけることが肝心です。「まさかうちの親に限って…」「気のせいだろう」と目を背けたくなる気持ちもあるかもしれません。しかし、ギャンブル依存症は糖尿病や高血圧と同じく放置すれば進行する生活習慣病です。症状が軽いうちであればあるほど回復もしやすいため、問題が深刻化する前に適切な対処に乗り出す必要があります。
ギャンブル依存が疑われるときの対処法
責めずに寄り添い、まず問題を認めさせる
ご家族にギャンブル依存の兆候が見られた場合、決して感情的に責め立てたり人格を否定したりしないことが鉄則です。相手が高齢の親となれば、子世代からの説教や非難はプライドを大きく傷つけ、「なぜお前にそんなことを言われなきゃならないんだ!」と反発を招きかねません。まずは本人の苦しみに理解を示し、「やめたくてもやめられなくて辛いね」と共感的な態度で接することが大切です。本人が心を開かなければ、こちらの助言も届きません。どうか孤独に戦わせず、「あなたは一人じゃない、一緒に考えよう」というメッセージを言葉や態度で伝えてあげてください。
声をかけるタイミングも工夫しましょう。効果的なのは、ズバリ大きく負けて落ち込んでいる時です。ギャンブルで大敗した直後は、本人も「もうこんな思いは嫌だ…やめなくては」と内心では思っているものです。そのタイミングで「今ならまだやり直せるよ。専門の病院に行ってみない?」と優しく声を掛けてみてください。「ギャンブルをやめたら、そんな辛い気持ちにならなくて済むよ」と伝えると、相手の心にスッと入りやすくなります。逆に勝っている時やギャンブルに熱中している最中に説得しようとしても耳を貸さないので注意しましょう。
借金の肩代わりは禁物、経済的支援より回復支援
ギャンブル依存症者を抱える家族にとって頭を悩ませるのが借金問題です。もし多額の借金が発覚しても、すぐに家族が立て替えて清算するのは厳禁です。愛する家族を想えばこそ何とか楽にしてあげたいと思うでしょうが、借金を肩代わりしてしまうと本人は痛みを感じずに済んでしまい、かえって問題に向き合う機会を奪ってしまいます。「経済的な援助はできないけど、治療して立ち直る手伝いはするからね」と伝え、お金ではなく回復へのサポートを約束するようにしましょう。
実際、借金整理や財産管理の問題は、本人が治療に取り組み始めた後で進めても遅くありません。まずはギャンブルをやめ続けることが最優先です。家族が代わりに借金を片付けてしまうと、本人は借金が無くなった安心感から再びギャンブルに戻ってしまう恐れも高まります。どうしても生活に支障が出る場合は、弁護士や司法書士に相談して任意整理や自己破産といった法的手続きを検討しましょう。しかしその際も「本人の尻ぬぐいを家族だけで背負い込まない」ことが大事です。専門家の力を借りつつ、最終的には本人に自分の問題と向き合ってもらう姿勢を崩さないようにしてください。
金銭管理のサポートと環境づくり
依存状態が深刻な場合、家族がお金の管理をサポートすることも検討しましょう。例えば毎月の年金については家族が代理受領して生活費を小分けに渡す、キャッシュカードやクレジットカードを預かって一度に大金を引き出せないようにする、といった工夫です。本人の同意が得られるなら、成年後見制度の利用も選択肢に入ります。成年後見人を立てれば、預貯金や不動産の管理・処分に制限をかけることが可能です²。ただし、後見を付けても本人がこっそりギャンブルに出かけてしまうこと自体は法律で止められない点に注意が必要です。あくまで家族の負担軽減策・再発防止策の一つと捉え、根本的な解決には治療やカウンセリングが不可欠であることを忘れないでください。
また、ギャンブルに走る時間や機会を減らす環境調整も重要です。例えばインターネット経由で賭け事をしている場合はPCやスマホのフィルタリング設定を行ったり、暇を持て余さないよう代替となる楽しみや生きがいを提供する工夫をしましょう。趣味のサークルや地域の老人会・サロンへ参加を促し、人との交流や役割を持てる場に引き出すことも効果的です。「行くところが他にないからついパチンコへ…」という状況であれば、お子さんやお孫さんが定期的に遊びに行ったり電話したりして孤独を紛らわせるだけでも違います。最近では、認知症予防目的で開発された福祉向け疑似パチンコ機「トレパチ」というものも登場しています。お金を一切使わずにゲームとして楽しめる機器で、デイサービス等でのレクリエーションに導入する自治体もあります。こうした工夫を取り入れるのも一案でしょう。
専門機関や自助グループの活用
家族だけで問題を抱え込まず、ぜひ専門機関の力を借りてください。各都道府県の精神保健福祉センターやお住まいの市町村の保健所では、ギャンブル依存症に関する相談窓口を設置しています。電話や面談で専門の相談員がアドバイスをしてくれますし、必要に応じて適切な医療機関や支援団体を紹介してくれます。厚生労働省の委託事業として、無料のギャンブル依存症相談電話(通称:サポートコール)も開設されています。実際2023年度には延べ7,897件もの相談が全国から寄せられており³、「誰にも言えない悩み」を抱えた多くの本人・家族がまず電話で専門家に助けを求めています。
治療については、依存症治療の専門医療機関(各都道府県に拠点病院があります)や精神科での外来治療が受けられます。代表的な治療法は認知行動療法で、ギャンブルに関する歪んだ考え方(「今回こそ勝てる」「負けた分を取り戻さなきゃ」等)を修正し、健全な思考パターンを身に付けるアプローチです。必要に応じて抗うつ薬や抗不安薬などの薬物療法を併用しつつ、本人の状態に合わせたプログラムが提供されます。また同じ悩みを持つ者同士で支え合う集団療法や自助グループへの参加も推奨されています。
本人や家族が参加できる自助グループとしては、匿名で無料の集まりであるGA(ギャンブラーズ・アノニマス)やギャマノン(Gam-Anon)があります。GAは本人のための集会、ギャマノンは家族や友人のための集会で、全国各地で定期的にミーティングが開かれています。そこでは体験を分かち合い、再発防止の知恵や心の持ちようを学ぶことができます。
最後に、地域の包括的な支援ネットワークも積極的に活用しましょう。お住まいの地域の地域包括支援センターは、高齢者のあらゆる相談を受け付ける総合窓口です。ギャンブル問題について直接的な専門知識がなくても、適切な相談先や公的制度を案内してくれますし、必要に応じて介護サービスや生活支援につなげる役割も担っています。民生委員やケアマネジャー、地域の社会福祉協議会なども含め、周囲の専門職に遠慮なく相談しましょう。経済的に困窮している場合は生活保護の申請も選択肢ですし、家族だけでは限界を感じる場合は家庭裁判所への成年後見申立てについて弁護士や司法書士に相談することもできます。自治体によってはギャンブル依存症の家族教室や、高齢者の消費問題に関する見守りサポートなどを実施しているところもありますので、市区町村の福祉課に問い合わせてみるとよいでしょう。
実例:年金を使い果たした父が立ち直るまで
ここで一つ、高齢者のギャンブル依存の実例を紹介します。良夫さん(仮名、67歳)は年金暮らしの独居男性。数年前に定年退職した後、趣味だった競艇や競馬にのめり込み、月約7万5千円の年金のほとんどを賭け事につぎ込む生活を続けていました。ギャンブル依存症の典型例で、妻には愛想を尽かされ離婚、5人の子供とも疎遠になり、生活は破綻寸前です。勝っても負けても賭け続け、気付けばガスや水道は止められ、家賃も半年滞納という有様でした。それでも良夫さん本人は「ギャンブルは生きがい。生きている証みたいなもの」と語り、もはや自分では止められない状態でした。
そんな弟を見かねた77歳の兄が、地域包括支援センターに相談し、専門医療機関での治療プログラムを紹介してもらいます。最初は渋っていた良夫さんですが、ある時年金支給日に借金返済に充てた後さらに借金し、その4万円を競馬ですぐ失ってしまったことがありました。さすがに「このままでは飢え死にしてしまう」と危機感を抱き、兄の説得もあって意を決し依存症専門の病院に通院治療を開始します。ちょうど生活保護の申請も通り、治療費は公費で賄われることになりました。さらに長年音信不通だったお子さんたちが連絡をくれ、良夫さんの年金管理を子供たちがサポートしてくれることになったのです。
治療プログラムでは認知行動療法によって衝動のコントロール法を学び、週一回の自助グループにも兄と共に参加しました。最初は落ち着かなかった良夫さんも、次第に「賭けなくても平穏な日々を送れる」感覚を取り戻していきます。食生活も改善し、インスタントばかりだった食事が肉や野菜の入った温かい料理になりました。スマートフォンには孫から写真が送られてくるようになり、それを見るのが何よりの楽しみだと言います。ギャンブルに消えたお金と時間は戻りませんが、「それでも家族の絆は残った」と良夫さんは語ります。死すら考える絶望の淵にいた彼が、再び人生の希望を取り戻せたのは、家族と専門家が一丸となって支えたからこそでした。
このケースは特別なものではなく、適切な支援があれば多くの高齢者が同じように回復への道を歩み出せることを示しています。家族が諦めず手を差し伸べることで、「人生100年時代」の残りの時間を再び笑顔で過ごせる可能性は十分にあります。
おわりに:家族の支えと適切な支援で乗り越えられる
高齢者のギャンブル依存症は、本人だけでなく家族全体に深刻な影響を及ぼす問題です。経済的損失や健康被害はもちろん、嘘や裏切りによって築かれた家族の信頼関係が壊れてしまう痛みは計り知れません。それでも、決して希望を捨てないでください。ギャンブル依存症は適切な理解とアプローチがあれば、必ず回復しうる病気です。鍵となるのは早期発見・早期対応と、周囲の粘り強いサポートにあります。
ご家族としては、まず問題から目を背けず冷静に向き合う勇気を持ってください。誰より本人が一番苦しんでいることを理解し、責めるのではなく支える姿勢で接しましょう。そして家族だけで抱え込まず、遠慮なく専門家に頼ってください。相談機関や自助グループ、法律・福祉の制度など利用できるものは全て利用し、「チーム」で問題解決にあたることが大切です。本人の再起には家族の支えが必要ですが、同時に家族もまた支えが必要です。あなた自身の心と体のケアも忘れずに、ときには休息を取りながら長い目で寄り添っていきましょう。
シニア世代のギャンブル依存という難しい問題ですが、愛する家族の笑顔を取り戻すためにできることは必ずあります。本記事の情報や対処法がその一助となり、ご家族が共に明るい未来へ踏み出す力となれば幸いです。あなたとご家族が再び安心して穏やかな日常を送れるよう、心から応援しています。
シニア世代のギャンブル依存理解度チェックテスト(全10問)
参考文献一覧(上付き番号の参考文献を以下に示します):
- 厚生労働省研究班「令和2年度 ギャンブル障害およびギャンブル関連問題の実態調査」結果(2021年)【※50代以上のギャンブル依存症が全体の約4割を占めると報告】
- MONEY TIMES「高齢者のギャンブル依存が増加、のめり込んでしまう理由とは」(2023年12月17日)【高齢者の孤独化とギャンブル依存増加の背景を解説】
- 日本テレビNEWS NNNドキュメント’21「高齢者ギャンブル依存 ~さまよいの果て~」(2021年6月25日放送)【年金を使い果たした67歳男性の実例と回復までの経緯を紹介】
- みんなの介護求人 ニッポンの介護学「高齢者のギャンブル依存症に要注意!兆候と対策を知ろう」(2024年9月9日)【最新統計データや認知症との関連、家族の対応策について詳述】
- 老人ホームの選び方ガイド「高齢者のギャンブル依存症!治療は?家族の向き合い方は?」(2024年4月29日)【高齢者のギャンブル依存症増加の原因や家族の接し方を解説】
- 久里浜医療センター 松下幸生「身近な人のギャンブル依存が心配なとき – 病気であることを理解しましょう」(公益社団法人日本医師会『健康ぷらざPlus』Vol.4, 令和6年11月)【ギャンブル依存症の症状や健康影響、相談窓口について医師が解説】
- NCASA全国依存症対策センター「身近な人がギャンブル依存症なのでは?と心配な方へ」(依存症予防教育情報サイト)【家族・友人から見たギャンブル依存症のサインや対応ポイントを紹介】
- 北九州成年後見センター「みると通信:ギャンブル依存症について知ろう(その4)」(2017年10月24日)【ギャンブル依存症者への家族の対応と成年後見制度の関係について解説】