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日本におけるギャンブル依存症と公的支援策総覧

ギャンブル依存症とは何か(症状とセルフチェック)

ギャンブル等依存症とは、競馬やパチンコなどのギャンブル行為にのめり込み、自分では制御できなくなる精神疾患です 。日常生活や社会生活に重大な支障をきたし、例えば借金の重圧から生活苦に陥ったり、家庭内不和や仕事の喪失を招くこともあります。また、ギャンブル依存は多重債務・貧困・虐待・自殺・犯罪など様々な社会問題の一因ともなりえます 。2019年の全国調査では、成人の約1.7%(男性2.8%、女性0.5%)が何らかのギャンブル依存の疑いがあると報告されました 。ギャンブルによる脳内快感への依存は本人の意思だけでは克服が難しく、「自分は病気ではない」と否認する傾向も指摘されています 。しかし適切な治療や支援を受ければ回復は十分可能な疾患です 。まずは自分の状況を正しく知ることが第一歩です。

セルフチェック(「LOST」の法則)

以下はギャンブル依存の危険度を簡易評価する4項目の自己診断テストです 。過去1年のギャンブル経験について、各質問に「はい」か「いいえ」で答えてみましょう。

セルフチェック(「LOST」の法則)

以下はギャンブル依存の危険度を簡易評価する4項目の自己診断テストです。過去1年のギャンブル経験について、各質問に「はい」か「いいえ」で答えてみましょう。

これらの項目のうち複数に該当する場合、ギャンブル依存症の危険信号です 。本人に自覚がなくても、家族や周囲から見て「お金や時間の使い方がおかしい」「やめると言っても繰り返す」ような場合には、早めに専門の相談機関に相談してみましょう。

ギャンブル等依存症対策基本法と国の基本計画

こうした問題の深刻さを受けて、国は2018年に「ギャンブル等依存症対策基本法」*を制定しました 。この法律は、ギャンブル依存症による日常生活・社会生活への支障や多重債務・貧困など重大な社会問題を踏まえ、依存症対策を総合的かつ計画的に推進し国民の健全な生活と安心できる社会の実現に寄与することを目的としています 。具体的には、国と地方公共団体の責務を明確にし、依存症予防や啓発、治療・回復支援、そして依存症者本人・家族の社会復帰の支援など包括的な施策を講じるよう定めています 。法律上、「ギャンブル等依存症」は「ギャンブル等(競馬など公営競技やパチンコ等の射幸行為)にのめり込むことで日常または社会生活に支障が生じている状態」*と定義されています 。

基本理念として、依存症の発症予防から再発防止の各段階に応じた対策を適切に行い、依存症者とその家族が円滑に日常生活を営めるよう支援することが掲げられました 。また、ギャンブル依存問題が多重債務や貧困、犯罪など他の社会問題と密接に関連する点に鑑み、これら他分野の施策とも有機的に連携するよう求めています 。さらに国民および民間事業者、医療・福祉関係者にも依存症対策への協力努力義務が課され、社会全体で問題に対処する姿勢が明文化されました 。

この法律に基づき、毎年5月14日~20日が「ギャンブル等依存症問題啓発週間」と定められています 。国および地方公共団体はこの期間にあわせて広報や啓発イベントを実施する努力義務があります 。例えば東京都では啓発週間中に特別相談会を開催し、「ギャンブル依存症は早期の支援と適切な治療により回復可能です。この機会にぜひ相談にお越しください」と呼びかけています 。

法律の施行後、政府は具体的施策の指針となる「ギャンブル等依存症対策推進基本計画」を策定しました。初回の基本計画は2019年4月に閣議決定され、以降少なくとも3年ごとに見直すこととされています 。直近では2024年3月(令和6年度末)に基本計画が改定され、オンライン賭博の普及への対応、若年層への対策強化、違法なオンラインカジノへの取組強化など新たな重点施策が盛り込まれました 。計画では依存症問題に関する調査研究の推進や、関連データの3年毎の実態調査も義務付けられています (※2020年と2023年に全国調査を実施し、依存症が疑われる成人の割合は1.7%前後で推移 )。基本計画に沿って各省庁や関係団体が連携し、教育・啓発から治療、生活再建まで幅広い対策が推進されています 。

地方自治体においても、法律第13条に基づき都道府県ごとの依存症対策推進計画の策定が努力義務とされています 。これを受け、各道府県で地域の実情に応じた計画づくりが進められました。例えば千葉県では2019年度に計画を策定し、2025年には中間見直しを実施しています 。2021年9月末時点で21道府県が計画を策定済みであり、残る自治体も順次策定を表明しています 。このように国から地方まで、法制度に基づく対策の枠組みが整備されつつあります。

公的相談窓口と医療支援体制

ギャンブル依存からの回復には、医療やカウンセリングなど専門的なサポートが不可欠です。国と自治体は法律に基づき、相談支援体制の充実を進めています 。具体的には各都道府県・政令指定都市の精神保健福祉センターや保健所において、ギャンブル依存症に関する専門相談を受け付けています 。精神保健福祉センターは各地域の公的メンタルヘルス拠点で、臨床心理士や精神保健福祉士などが在籍し、依存症が疑われる本人や家族からの相談に対応します(電話・来所いずれも可 )。保健所でも保健師による相談や必要に応じた医療機関紹介を行っています 。「ひとりで悩まず、まず相談」できる窓口が全国各地に用意されているのです 。

依存症の専門医療体制も整備が進められています。厚生労働省はアルコールや薬物も含めた依存症対策の全国拠点機関として、神奈川県の国立病院機構久里浜医療センター(通称:久里浜依存症センター)を指定し、専門医療人材の育成や臨床研究の中心拠点としています 。各都道府県にも、依存症専門外来を持つ病院や専門治療プログラムを提供する医療機関が「依存症専門医療機関」および「依存症治療拠点機関」として指定されています 。例えば東京都では都立松沢病院や成増厚生病院など数箇所が専門医療機関に選定され、入院・外来でギャンブル障害の治療プログラムを実施しています 。専門医や医療スタッフ向けの研修も国と都道府県で実施され、医療提供体制の質向上が図られています 。治療法としては、精神科医による診断や薬物療法に加え、認知行動療法や動機づけ面接といったカウンセリング、さらには自助グループ参加の促進など包括的アプローチが取られます 。

経済的な理由で治療費が心配な場合でも、公的医療保険の適用や各自治体の補助制度、自立支援医療制度(精神通院医療)による自己負担軽減策があります。費用面を理由に治療をためらう必要はありません。まずはお住まいの地域の精神保健福祉センターや保健所に問い合わせれば、適切な医療機関や支援策を案内してもらえます。厚労省によれば、ギャンブル依存症は早期介入と適切な治療により十分回復しうる疾患です 。実際、専門治療やリハビリプログラムを経てギャンブルをやめ社会復帰を果たした人も数多く報告されています。「もう遅い」「自分は駄目だ」と諦めず、ぜひ専門機関の扉を叩いてください。

電話・ネットで相談できる窓口

「いきなり医療機関に行くのは不安…」という方のために、電話やインターネットで気軽に相談できる窓口も用意されています。代表的なものを以下に紹介します(匿名・無料で利用可能です)。

  • 依存症相談電話(24時間対応):国の委託事業として設置された依存症専門相談ダイヤルがあります 。電話番号は 0120-683-705(年中無休・24時間対応)で、臨床心理士など専門の相談員がギャンブル依存に関する悩みを受け止めてくれます 。一人で抱え込まず、まずは話をしてみることで解決の糸口が見えることもあります。
  • 地域の保健・福祉相談:お住まいの自治体の精神保健福祉センターや保健所にも電話相談窓口があります 。平日の日中が中心ですが、各所の連絡先は自治体サイトや広報に掲載されています。不明な場合は自治体代表電話に問い合わせれば担当部署につないでもらえます。
  • 消費者ホットライン「188」:借金や生活再建の相談は、局番なしの 188(イヤヤ) に電話すると最寄りの消費生活相談窓口につながります 。多重債務に陥っている場合、各地の消費生活センターで債務整理やカウンセリングの案内を受けられます。必要に応じて法律専門家や更生支援策も紹介してもらえます 。
  • 法テラス(日本司法支援センター):法律の専門相談は、法テラスのサポートダイヤル(0570-078374)へ。借金問題や自己破産手続きについて無料相談が可能で、必要に応じて弁護士・司法書士を紹介してもらえます 。所得要件を満たせば弁護士費用の立替制度(民事法律扶助)も利用できます。
  • 日本クレジットカウンセリング協会(JCCO):クレジットカードや消費者金融の借金でお困りの方向けに、公益財団法人JCCOが多重債務ほっとラインを開設しています。専門のカウンセラーが家計の立て直しや債務整理の方法について助言し、必要なら無料の債務整理手続き(任意整理)もサポートしてくれます 。
  • 貸付自粛制度の相談:自らの意思で「もうお金を借りたくない」と思ったら、金融業界の貸付自粛制度を利用する手があります 。全国銀行協会や日本貸金業協会に申し出ると、本人の申請情報が信用情報機関に登録され、新たな借入を一定期間できなくする制度です 。ギャンブルで借金を重ねてしまう方にとって、借入そのものを断つ環境を作る有効な手段となります。申込み方法は各協会のWebサイトで公開されています。

これらの窓口では、相談者の状況に応じて適切な支援先へつなぐコーディネート機能も果たしています 。実際に「治療が必要」と判断されれば医療機関へ、「債務整理が必要」となれば法律専門家へ、といったようにワンストップ相談が可能です 。困ったときは一人で悩まず、まずは電話やメールで声をあげてみてください。

自己排除制度(セルフエクスクルージョン)の仕組み

「自分をギャンブルから遠ざける」ための仕組みとして、近年は自己排除(セルフ・エクスクルージョン)制度が整備されています。これは、本人または家族の申告によって特定のギャンブル施設やサービスの利用を制限する制度です。ギャンブル依存症は強い誘惑に晒されると再発リスクが高まるため、自主的に環境から遮断することは有効な対策の一つです。

パチンコ・パチスロの本人・家族申告プログラム

全国のパチンコホールでは、業界団体主導で「自己申告・家族申告プログラム」が導入されています 。これは遊技客本人またはその家族がホールに申請することで、一定のルールでその人の遊技を制限する仕組みです。具体的には、本人申告では1日の使用金額や来店頻度の上限設定、営業時間中の入店禁止などを本人の希望に応じてホール側がサポートします 。家族申告では、ご家族が対象者の入店禁止をホールに依頼し、ホールは対象者が来店した際に声かけして退店を促す対応を取ります 。家族申請には本来、対象本人の同意書提出が必要ですが 、同意が得られない場合でも、依存の深刻さを示す客観的資料(医師の診断書等)の提出により申請可能な仕組みも設けられています 。このプログラムはあくまで入店制限という環境調整の措置であり、「本人の意思による回復」が重要であることから、可能であれば本人自ら自己申告することが望ましいとされています 。それでも、家族だけでも申請できる意義は大きく、実際に全国で約5,272店舗(2022年3月末時点)がこのプログラムを導入済みです 。ご家族だけでは抱えきれない場合、この制度を利用してホールと連携し、まず物理的にギャンブルから遠ざけることが可能です。

パチンコ業界の相談窓口としては、「リカバリーサポート・ネットワーク(RSN)」という認定NPOもあります 。RSNでは専用ダイヤル(050-3541-6420、平日10~22時)でパチンコ依存に関する相談を受け付けており、本人・家族からの問い合わせに対応しています 。ホールへの入店お断り依頼の手続き方法などもRSNが助言してくれます。業界と独立した第三者機関への相談先があることも覚えておきましょう。

公営競技(競馬・競輪・競艇・オートレース)の利用制限

競馬や競輪など公営競技でも、自己排除の仕組みが整っています。競馬では日本中央競馬会(JRA)がインターネット投票サービスの利用停止制度を導入しており、会員本人から申し出ればオンライン投票を一定期間利用できなくすることが可能です 。家族からの申請による利用停止も認められており、その場合は医師の診断書など所定の書類提出が必要ですが、所定の手続きを経て強制的にオンライン賭けを止めさせることができます 。競艇や競輪、オートレースでも同様に、各オンライン投票サイトにおいて自己規制措置(利用一時停止や購入限度額設定)が講じられています 。例えば競輪では、電話・ネット投票の利用停止申請を本人または家族が行える窓口があり 、家族申請が受理された場合、対象者の投票アカウントを強制ロックする措置が取られます(解除には一定期間経過後に本人の申請が必要) 。

さらに競輪や競馬の実際の競技場・場外発売所への入場規制も実施されています。競輪では本人申請により特定の競輪場等への入場を禁止する制度があり 、申請当日から施行者(主催自治体)が顔写真付きで出入り禁止措置を講じます 。家族申請による入場禁止も競輪・競馬ともに可能であり、家族が申し出れば運営者が対象者の来場を監視し、発見次第声掛け退場を求める対応を取ります 。入場規制は一度かかると一定期間は解除できない厳格なものです 。このように公営競技各団体も、「のめり込み防止」の観点から本人・家族からの自己排除要請に応える体制を整備しています。

特定複合観光施設(カジノ)における依存防止策

日本では統合型リゾート(IR)内のカジノ施設について、2018年のIR整備法(カジノ解禁法)で厳格な依存症対策が規定されました 。まず、日本人および国内在住者を対象に入場回数制限が課されており、「1週間に3回まで・28日間(4週間)で10回まで」と法律で上限が定められています 。これを実現するため、カジノ入場時にはマイナンバーカード等で本人確認を行い、入場履歴を管理します 。また、カジノへの入場には1回あたり6,000円の入場料が必要で、頻繁な出入りを抑制する仕組みとしています 。

さらに本人・家族からの申告による入場制限も導入されます 。具体的には、ギャンブル依存症の懸念がある本人が自己排除を申請すれば一定期間カジノへの入場が禁止され、家族からの申請でも対象者の入場を事前にブロックできる制度です 。家族申請があった場合、カジノ管理委員会(内閣府の外局)が当該本人に通知し、カジノ事業者に対して入場禁止措置を命令します。これらの措置に違反して事業者が依存症対策を怠れば、厳しい行政処分や罰則の対象となります(法律で世界最高水準の規制と謳われています )。こうしたカジノ事業者側の責務として、依存症対策への万全な取組(広告規制やATM未設置、営業時間短縮など)も義務付けられています 。

日本ではまだIR・カジノ施設は開業していませんが、今後施設が誕生した際には以上の対策が確実に実施されます。政府は「家族連れでも安心して楽しめる施設」とするため依存症対策には特に力を入れており 、カジノ管理委員会が警察庁や厚労省等と連携して施策を総合調整します 。カジノに限らず、ギャンブル提供事業者全体の責務として、利用者への啓発やのめり込み防止策を講じることが基本法で定められており 、公営競技主催者やパチンコ業界も含め今後も対策の強化が求められています。

経済的支援策と再出発のための法的手段

ギャンブル依存により多額の借金を抱えたり生活が立ち行かなくなってしまった場合でも、救済策や再出発の手段が用意されています。経済的困窮に陥った人を支える公的扶助制度や、債務を整理するための法的手続きについて知っておきましょう。

生活の立て直しを支える公的支援

まず、生計が維持できないほど困窮している場合は生活保護制度(生活保護法に基づく)を利用できる可能性があります。ギャンブル依存症だからといって生活保護が直ちに拒否されることはなく、収入・資産要件を満たせば最低生活費の給付を受けられます。役所の福祉事務所に申請し、認定されれば生活費や住宅費、医療費など必要な扶助を受給できます。ただし給付金はあくまで生活維持のためのものなので、これ以上ギャンブルに費やさないようケースワーカーの指導のもと家計管理を行うことになります。「お金がなくなったら生活保護でいい」と安易に考えるのではなく、最終的なセーフティネットとして覚えておいてください。

公的扶助に至らない場合でも、各自治体には生活困窮者自立支援制度(生活困窮者自立支援法)があります。これは失業や多重債務など生活上の困りごと全般について相談・支援する制度で、自治体ごとに自立相談支援窓口(地域の福祉事務所や社会福祉協議会内など)が設置されています。ギャンブル依存で仕事を失ったり、収入が減って家賃が払えないなどのケースでは、この窓口で就労支援(ハローワーク等との連携による求人紹介や職業訓練)や住宅確保給付金などの支援策を案内してもらえます 。また、生活困窮者自立支援制度では家計改善支援も提供されており、専門員が家計管理の立て直しや債権者との交渉についてアドバイスしてくれます 。ギャンブル依存で職と貯金を失ったとしても、社会復帰を助ける公的な枠組みがありますので、一人で抱えず行政の支援を積極的に活用しましょう。

債務整理(借金問題を解決する法的手段)

ギャンブルによる借金が膨らみ、自力では返済が難しい場合、法的な債務整理手続きを検討する必要があります。債務整理には主に任意整理・特定調停・個人再生・自己破産の4つの方法があります。それぞれ特徴が異なるので、状況に応じて適切な手段を選ぶことになります (多くの場合、専門家に相談すれば最適な方法を提案してくれます)。

  • 任意整理:裁判所を介さずに、債権者(お金を貸している金融業者)と直接交渉して返済条件を緩和してもらう手続きです 。通常は弁護士や司法書士が代理人となり、将来利息のカットや分割払いの長期化などを貸金業者と合意します 。裁判沙汰にならず柔軟な調整が可能な反面、整理後も元本の返済は続けていく必要があるため、安定した収入と家計管理が前提となります 。ギャンブルで作った借金でも任意整理は可能で、日本クレジットカウンセリング協会などを通じて無料で手続きを行うこともできます 。
  • 特定調停:簡易裁判所で調停委員を交えて話し合い、返済計画を取り決める手続きです。任意整理がまとまらない場合に利用されますが、近年は利用件数が減少傾向にあります。
  • 個人再生(個人民事再生):裁判所を通じて借金を大幅に圧縮し、残額を原則3~5年で分割返済する計画を立てる手続きです。住宅ローン以外の無担保債務を最大5分の1程度まで減額できるため、元本が大きい場合に有効です。ただし安定した収入があることが条件で、計画どおり返済を完了すれば残債務は免除されます。ギャンブルによる債務でも再生手続きは利用可能ですが、浪費の程度によっては計画認可が厳しくなる場合もあります。
  • 自己破産:裁判所に申立てを行い、借金の支払い義務そのものを法的に免除してもらう手続きです 。債務超過が明らかな場合の最終手段で、裁判所が借金返済不能(支払不能)と認めれば、保有している一定の財産を債権者に公平に分配した上で残りの借金を全て帳消し(免責)にします 。免責が確定すれば貸金業者からの取立てや支払い義務から解放され、生活再建のスタートラインに立てます。ただし、自宅や車などの資産は原則手放す必要があり、信用情報(いわゆるブラックリスト)にも載るため、今後5~10年程度は新たな借入やクレジット利用が制限されます。また破産手続中は一部職業(士業や保険外交員など)に就けない制約もあります。それでも「借金地獄」から抜け出す最も確実な法的救済策であり、近年は年間7~8万人が自己破産を申立てています。ギャンブルによる浪費が原因でも原則として免責は認められますが、裁判官から浪費再発防止のための指導がなされることがあります。自己破産を検討する際は、必ず弁護士等の専門家に相談しましょう。

これら債務整理の手続きは専門知識が必要なため、弁護士・司法書士など法律の専門家に依頼するのが一般的です。費用が不安な場合は法テラスの民事法律扶助を利用すれば、収入要件を満たす限り弁護士費用の立替払いが受けられ、分割後払いも可能です 。各地の弁護士会・司法書士会でも多重債務無料相談会を開催しています 。ギャンブルで作った借金だからといって萎縮する必要はありません。法律上はどのケースでも「生活を再建する権利」が認められており、恥じることなく公的制度を利用してやり直すことが大切です。

家族と当事者を支える民間団体・自助グループ

公的支援と並んで、民間の支援団体や自助グループの存在も見逃せません 。こうした団体は同じ問題に直面する仲間同士で支え合ったり、当事者・家族の視点で独自の支援活動を行っています。ギャンブル依存症は「孤独の病」とも言われ、本人も家族も周囲に理解者がいない状況で追い詰められがちです 。民間のピアサポートに加わることで孤立感が和らぎ、回復への大きな力となります。

自助グループ(当事者・家族のピアサポート)

最もよく知られるのはギャンブラーズ・アノニマス(GA)という自助グループです。GAはギャンブル依存症の本人たちが集まり、互いの経験を語り合いながら断ギャンブル(賭けない生活)を続けるための集会を各地で開いています。1957年に米国で始まった活動で、日本各地にも現在100以上のグループがあります 。参加費は無料(任意のカンパのみ)で、名前を明かさず匿名で参加できます。仲間の体験談を聞いたり、自分の苦しみを打ち明ける中で、「自分一人ではない」と実感し回復への希望を取り戻す人が多くいます。

家族向けにはギャマノン(ギャンブラーズ・アノニマス・ファミリーグループ)があります。「ギャマノンはギャンブル依存症の家族・友人のための自助グループ」です 。ギャンブル問題を抱えた家族は、ときに本人以上に精神的・経済的な苦痛を負います。ギャマノンでは同じ悩みを持つ家族同士が集まり、対応方法を学んだり感情を分かち合ったりしています 。「もう耐えられない」「どう支援したらいいか分からない」といった家族の方は、ぜひ最寄りのギャマノンに参加してみてください。一人で抱え込まず、仲間とともに問題に向き合うことで状況が好転した例が数多く報告されています 。

支援団体・公益法人の取り組み

日本では他にも様々な民間団体がギャンブル依存症問題に取り組んでいます。例を挙げると、当事者と家族の視点で啓発や政策提言を行う「公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会」(通称「考える会」) があります。考える会は各地で講演会や家族教室を開催したり、メディアを通じて正しい知識の普及に努めています。また、「全国ギャンブル依存症家族の会」は家族同士の交流支援とともに、国や自治体への要望活動も行っています(例えば大阪では家族の会の働きかけで、依存症専門の相談窓口開設が前倒しされたケースがあります)。他にも、アルコールや薬物も含め依存症全般の予防教育を推進するNPO法人ASKや、若者向けリスク教育に取り組む団体などが存在します。近年では有志の専門家による「ギャンブル等依存症対策研究会」が発足し、依存症対策士資格の認定講習を実施するなど人材育成にも力が入れられています 。

民間団体の活動は、基本法第19条で国や自治体が支援することが努力義務として定められており 、実際に補助金交付などの形でバックアップされています 。公的支援と民間の知見を組み合わせることで、よりきめ細やかなサポート網が築かれているのです。

おわりに:回復への第一歩は相談から

ギャンブル依存症は、適切な支援を受ければ必ず回復が可能な問題です 。法律の整備により、公的な相談窓口や治療体制、経済的なセーフティネットが日本全国に用意されています。孤独に悩む必要はありません。ご本人はもちろん、家族だけでも支援を求めることができます。「一人で悩まず、一緒に対応の仕方を学びませんか」という全国家族の会の呼びかけにもあるように 、まずは誰かに現状を打ち明けることが解決への第一歩です。

ギャンブル等依存症問題啓発週間のスローガンも「ひとりで悩まず、家族で悩まず、まず!相談機関へ」です 。勇気を出して相談した瞬間から、きっと状況は変わり始めます。公的機関・専門治療・自助グループなど、多角的な支援を活用しながら、経済的・精神的な再出発を切り拓いていきましょう。あなたやあなたのご家族が健全な生活を取り戻し、安心して暮らせる社会を実現するためのサポートは、社会全体で応援しています。

参考文献:

  1. 消費者庁「ギャンブル等依存症でお困りの皆様へ」 – ギャンブル依存症の定義と悪影響の説明
  2. 千葉県健康福祉部「ギャンブル等依存症とは」 – 基本法第2条の定義と家族への影響の解説
  3. 法令リード(総務省)「ギャンブル等依存症対策基本法」 – 第1条と第3条の目的と基本理念
  4. コトバンク「ギャンブル等依存症対策基本法」知恵蔵 解説 – 基本法の成立経緯と対策内容の解説
  5. 内閣官房・警察庁「ギャンブル等依存症問題啓発週間リーフレット」 – 啓発週間に関する特別相談会の案内
  6. 内閣府・依存症対策推進本部事務局「ギャンブル等依存症対策 基本計画(令和7年3月変更)概要」 – 最新の基本計画のポイント
  7. 国立病院機構久里浜医療センター「依存症対策全国センター NCASA」Webサイト – 基本法に基づく設立趣旨と都道府県計画の策定状況
  8. NCASAサイト「基本法の10の基本的施策」 – 基本法第17条と第19条の施策の具体的説明
  9. 厚生労働省「依存症対策:ギャンブル依存症は回復可能な疾患」 – 依存症に対する偏見と誤解への指摘
  10. 消費者庁「相談窓口一覧:借金問題を相談する窓口」 – 債務問題の相談先案内
  11. 同上「保健・医療関係の機関」 – 行政機関の相談先
  12. 同上「支援団体・自助グループ」 – 民間支援団体と自助グループの案内
  13. 全国競輪施行者協議会「のめり込みに不安・お悩みの方のご相談はこちら」 – 公営競技の自己排除制度
  14. 同上「家族申請による競輪場等入場規制」 – 家族による入場規制制度
  15. ハードロックジャパン「ギャンブル依存症対策」 – IR法に基づくカジノ規制
  16. ロイター通信「IR認定上限は3、カジノ入場料6千円 月内にも整備法案提出」 – カジノ入場規制の報道
  17. 法テラス「任意整理とは何ですか。」 – 任意整理の概要
  18. 法テラス「自己破産とは何ですか。」 – 自己破産の手続き
  19. 日本クレジットカウンセリング協会「多重債務ほっとライン」 – 債務相談窓口
  20. Gam-Anon日本「ようこそギャマノンへ」 – 家族向け自助グループの紹介
  21. 全国ギャンブル依存症家族の会 – 家族同士の支援活動
  22. 内閣府・警察庁「ギャンブル等依存症対策の実施状況(令和元年度)」 – 相談対応マニュアルの改定内容
  23. 厚生労働省「令和5年度 ギャンブル障害及びギャンブル関連問題実態調査」(速報) – 依存症調査速報値
  24. PGRS研究会「ギャンブル等依存症対策士 認定資格サイト」 – 対策士資格と人材育成
  25. ギャンブル依存症予防回復支援センター(GAPRSC)「支援情報」 – 24時間対応の相談窓口
  26. 公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会 – 啓発・相談支援活動
  27. 日本中央競馬会(JRA)「電話・インターネット投票 利用停止(本人・家族申請)」 – ネット投票の利用停止制度
  28. しんぶん赤旗「ギャンブル依存症対策法が成立」 – 基本法成立時の審議内容
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