オンラインカジノの普及に伴い、ギャンブル依存症の問題が深刻化しています。自宅やスマホから手軽に賭け事ができるオンラインカジノは、その匿名性やスピード感から強い依存性を持ち、経済的・精神的に破滅的な影響を及ぼすケースも増えています¹⁻²。また、日本ではオンラインカジノでの賭博行為は違法であり、「グレーゾーン」との誤解も広がっています³。本記事では、オンラインカジノの実態や依存リスク、国内外の対策、そして当事者が取るべき対応策について総合的に解説します。ギャンブル問題に悩む方や家族が早期に適切な支援へ繋がるよう、最新の知見と具体的な情報をまとめました。
オンラインカジノとは何か?日本からのアクセス事情
オンラインカジノとは、インターネット上でスロットやポーカーなどのカジノゲームに現金や暗号資産を賭けて遊ぶサービスのことです⁴。スマートフォンやパソコンから専用サイトやアプリに接続し、ユーザー登録・入金を行うことで、24時間いつでも好きなゲームで賭けを楽しめます。ゲームの種類も豊富で、スロット・カードゲームのほか、パズルゲーム風のものやスポーツの勝敗予想まで多彩です⁴。
日本国内の法律ではオンラインカジノでの賭博行為は禁止されていますが、現状では海外のサーバーで合法運営されているサイトに日本からアクセスすること自体は技術的に可能です³。クレジットカード決済や電子マネー、仮想通貨を使って海外サイトに入金し、プレイするユーザーが後を絶ちません。警察庁の2024年実態調査によれば、日本国内でオンラインカジノを「利用したことがある」人は推計約337万人に上り、年間賭け金総額は約1兆2423億円にも達するとされています¹。このうち現在もプレイしている人(常用者)は約196.7万人と推計され、20代・30代の男性を中心に利用が広がっています⁴。
しかし多くのユーザーは違法性を認識していないのが実情で、調査では全体の43.5%が「オンラインカジノが違法だと知らなかった」と回答しています¹。また著名人が「安心」「稼げる」などと宣伝するケースも相まって、オンラインカジノが手軽な副収入やゲーム感覚の娯楽と誤解されがちです¹。実際には、日本国内からオンラインカジノで賭けをする行為は刑法上の賭博罪に該当し、決して合法ではありません³。そのため後述するように近年は一般ユーザーの検挙事例も出ています。安易な気持ちで足を踏み入れないよう注意が必要です。
オンラインカジノが持つ強い依存性とは
オンラインカジノには、従来のギャンブルにはない依存を助長する特徴が数多くあります²。最大の要因は、そのスピード感と常時アクセス性です。従来の公営ギャンブル(競馬・競輪など)は1日にできる回数や時間帯に制限がありますが、オンラインカジノは365日24時間いつでも賭けプレイが可能です²。ゲーム結果も即座に出るため、短時間で何度も勝敗を繰り返せ、際限なくのめり込みやすくなります。
さらに、オンライン上のゲームではチップやコインなど「現実感の薄い」ゲーム内通貨を用いることが多く、実際にお金を賭けている感覚が希薄になりがちです²。その結果、気付かぬうちに大金を投じてしまう危険があります。実際、オンラインカジノ利用者を対象にした調査では、1ヶ月あたりの平均賭け金が約5.2万円にも上り、ごく一部の高額ベッター(全体の1割)が全体賭け金の7割を占めるなど、少数のユーザーが巨額をつぎ込む実態が明らかになっています⁴。このように、短時間で大金を失うリスクがオンラインカジノには潜んでいます。
他にも、オンラインカジノは匿名性が高く、自宅にいながら誰にも知られず遊べるため、歯止めが利きにくいという問題があります。対面のギャンブルでは周囲の目や人付き合いが多少なりとも抑止力になりますが、自室でスマホ相手に深夜まで賭け続けても注意してくれる人はいません。また、サイト側も VIPプログラムやボーナスを提供してプレイヤーの射幸心を煽る仕組みを持ち、より長時間・高額のプレイを促す誘惑が巧妙に仕組まれています。こうした要素が重なることで、オンラインカジノは他のギャンブル以上に依存症に陥るリスクが高いと専門家も警鐘を鳴らしています²。
実際、精神科医によると「オンラインカジノは他のギャンブルと比べて依存症になるリスクが高く、一度ハマると人生を狂わせてしまう恐れがある」ほど危険だといいます²。オンライン環境さえあれば場所や時間を問わず賭けられる手軽さゆえに、ギャンブルに没頭し生活が崩壊するスピードも非常に速いのです。ある依存症治療の専門家は、公営ギャンブルなら破産まで「年単位」かかるケースでも、オンラインカジノではわずか4か月で生活が破綻する例があると指摘しています²。こうした現実を踏まえ、オンラインカジノの持つ「危険なまでの手軽さ」を十分理解することが必要です。
ギャンブル依存症とは?脳科学的・心理的メカニズム
おさらいとして。ギャンブル依存症(ギャンブル障害)は、賭博行為のコントロールが自分ではできなくなり、日常生活に支障をきたす精神疾患です。DSM-5(精神障害の診断基準)やICD-11でも物質依存と同様に「依存症」の一種として正式に位置付けられています。しばしば「意志が弱いだけ」「本人の怠慢」などと誤解されがちですが、それは誤りです。ギャンブル依存症は脳の機能変化によって起こる「病気」であり、意思の強さ・弱さとは無関係だと専門家は強調しています²。
脳内には「報酬系」と呼ばれる神経回路があり、食事や睡眠など生存に必要な行為をすると刺激されて幸福ホルモンのドーパミンが分泌される仕組みがあります²。この報酬系は、人間が快感を学習して繰り返し行動するよう促す重要な機能ですが、ギャンブルはこの回路を異常に強く刺激します。大勝ちした時の強烈な快感やスリルを脳が素早く学習してしまい、本人の意思とは無関係に「また味わいたい」という衝動が刷り込まれるのです²。その結果、繰り返し賭けずにいられなくなり、負けが込んでも「次こそは」とのめり込む負のループに陥ります。
依存症が進行すると、脳はギャンブル以外ではドーパミンを十分に放出できなくなり、ギャンブルでしか快感を得られない状態になります²。日常の娯楽や仕事では満足できず、頭の中はギャンブルのことだけになってしまうのです。そのため、重度のギャンブル依存症の人には「歯を磨かなくなる」「入浴や睡眠もおろそかになる」など、身だしなみや健康管理すら放棄してギャンブルに没頭するケースが多く見られます²。これはアルコール依存症や薬物依存症と同じく、脳が報酬系の異常な学習に支配されてしまった状態であり、医学的な治療が必要な深刻な病態です。
また、ギャンブル依存症には心理的要因も影響します。例えば「日常の苦しみ・辛さから逃れるため」にギャンブルにのめり込む人は、楽しみとして嗜む人に比べて依存症になるリスクが高いとされています²。現実のストレスや孤独感の解消手段としてギャンブルに走ると、問題が深刻化しやすいのです。さらに、依存症の人はうつ病を併発することも多く報告されています²。ギャンブル以外で快感を得られない脳内メカニズムは抑うつ状態を招き、ギャンブルで負けた罪悪感や自己嫌悪も相まってメンタルが悪化しやすくなります。その結果、自殺念慮が高まる危険性も指摘されており²、ギャンブル依存症は命に関わる病であることを認識しなければなりません。
オンラインカジノと依存症リスク:研究・報道が示す関係
オンラインカジノの利用拡大に伴い、その依存症リスクの高さを裏付けるデータや事例も明らかになってきました。警察庁の調査では、オンラインカジノ経験者のうち約59.6%が自分は「ギャンブル依存症だ」と自覚しているという衝撃的な結果が出ています¹。過半数の利用者が自ら依存の兆候を感じている状況は、オンラインカジノがいかに強い嗜癖性を持つかを物語っています。
国内の専門医療機関からも、「オンラインカジノが原因で治療を受けに来る患者が近年増加している」との報告があります²。特にコロナ禍で人々が自宅にこもりがちだった2020年前後から、オンライン賭博にのめり込む若者が急増し、大きな社会問題になりつつあります⁵。実際、ある調査では日本国内のオンラインカジノ利用者が2023~24年の1年間で推計346万人に達したとのデータもあり²、この数年で利用者数が爆発的に増えたことがうかがえます。利用者の多くは20~30代の男性ですが、中には定年退職後で時間に余裕のある高齢者も含まれるなど²、幅広い層がリスクに晒されています。
海外の研究も、オンラインギャンブルの依存リスクを示唆しています。例えばイギリスでは、2005年にオンライン賭博を合法化した後、問題ギャンブルの深刻化が大きな社会課題となりました⁶。そのため2023年には「現行規制は時代遅れで、適切な規制強化が必要」と政府報告書で指摘され、自己排除制度の拡充や広告規制など対策強化に乗り出しています⁶。同様にギャンブル大国のオーストラリアでも「オンライン賭博は危険」としてクレジットカードでの入金禁止などの新たな規制を導入しました⁶。これらはオンラインカジノの依存リスクに各国が直面し、対策を講じ始めた例と言えます。
専門家による解説記事では、オンラインカジノの危険性を「早い・多い・ヤバい」の三拍子と表現しています⁵。すなわち「依存に陥るスピードが早い」「賭け金が多額になりやすい」「害が深刻(ヤバい)」という意味であり、実際に依存症患者の臨床現場で起きている変化でもあります⁵。久里浜医療センター(国内屈指の依存症治療機関)の報告によれば、コロナ禍以降、治療に来る患者のギャンブル種類が様変わりし、オンラインカジノやオンライン賭博で借金地獄に陥った若者が目立って増えているとのことです⁵。こうした現状は、オンラインカジノと依存症リスクの密接な関係を如実に示しています。
日本におけるオンラインカジノの合法性と摘発事例
結論から言えば、日本国内からオンラインカジノで賭博をすることは明確に違法です³。日本の刑法185条は「賭博をした者」を処罰する賭博罪を規定しており、その罰則は「50万円以下の罰金または科料」です³。また常習的に賭博をした場合は刑法186条により3年以下の懲役が科され得ます³。オンラインカジノの場合、プレイヤーがこの賭博罪に該当し、サイト運営者は「賭博場開帳等図利罪」(刑法186条2項、3月以上5年以下の懲役)に問われる構造です³。よく「サーバーが海外にあるから日本の法律は及ばないのでは?」という声を耳にします。しかし、日本国内にいながら賭博行為をした時点で日本の刑法は適用されるため、「海外業者相手ならOK」というのは完全な誤解です³。
実際、警察や行政当局も「オンラインカジノの違法性にグレーゾーンは存在しない」と明言しています⁷。政府広報などでも「海外で合法でも日本から賭博すれば犯罪。『捕まらない』は通用しない」と注意喚起がなされています⁷。一時期、「オンラインカジノはグレーだから逮捕されない」という噂がネット上で広まりましたが、それは過去に摘発例が少なかっただけであり、近年はその状況も変わりつつあります³。
近年の摘発事例:2023年以降、オンラインカジノ利用者や関係者への取り締まりが相次ぎました。例えば2023年9月、千葉県警はオンラインカジノで遊ぶ様子を配信していた男性YouTuberを常習賭博容疑で逮捕し、約5年間で配信報酬等として3000万円超を得ていた実態を明らかにしました³。この男性は略式起訴により罰金50万円の有罪が確定しています³。また同月には、警視庁が海外オンラインカジノを利用した20代~50代の日本人21名を一斉に書類送検し、併せて賭博サイトへの決済を仲介していた決済代行業者を賭博ほう助容疑で摘発しました³。さらに警察庁のまとめでは、2023年中にオンラインカジノ関連の賭博容疑で検挙された人数は107人に上ったと報告されています⁴。以前は利用者個人まで立件されるケースは少なかったものの、違法賭博がこれだけ蔓延しては看過できないとして、摘発が強化されている状況です。
これらの動きから、日本において「オンラインカジノはグレーではなく完全に黒(違法)」であり、利用者も摘発のリスクが十分あることが明確になりました³。実際に大手芸能事務所に所属するお笑い芸人やプロスポーツ選手がオンラインカジノ利用を理由に活動自粛・処分を受ける事件も相次ぎ、社会的にも大きく報道されています²⁷。法律的にも社会的にも、オンラインカジノは決して「気軽な遊び」ですまされない高い代償を伴う行為なのです³。安易な誘い文句に乗せられて違法賭博に手を染めれば、最悪の場合は前科が付き、社会的信用も失いかねません。「知らなかった」では済まされない厳しい現実を十分に認識しましょう。
スマホ時代におけるギャンブル行動の変化
スマートフォンの普及とテクノロジーの進化は、ギャンブルの形態も大きく変えました。いつでも持ち歩くスマホで賭け事ができるようになった結果、ギャンブルとの距離が飛躍的に近くなったのです。特にオンラインカジノはスマホ時代の申し子とも言える存在で、アプリやモバイル対応サイトによって電車移動中でも寝る前のベッドでも、思い立ったその瞬間にプレイが可能になりました。これは「ギャンブルに手を出すハードル」が著しく下がったことを意味します。
一昔前であれば、賭博をしようと思えばパチンコ店に行ったり競馬場や場外馬券売り場に出向いたりする必要がありました。しかし現代では、スマホの画面を数回タップするだけで世界中のカジノやブックメーカーに接続できてしまいます。しかも決済手段としてクレジットカードや電子決済が使えるため、財布の現金が尽きる心配もなく、際限なく課金できてしまう怖さがあります。最近ではビットコインなどの仮想通貨で入出金できるオンラインカジノも登場し、匿名性・利便性がさらに高まっています。仮想通貨であれば銀行口座を経由せず資金移動できてしまうため、家族に隠れて借金することも容易です。こうしたスマホ+デジタル通貨の組み合わせは、ギャンブル依存症対策の新たな難題となっています。
また、ライブ配信型のオンラインカジノの登場も見逃せません。スタジオから生中継されるディーラーの映像を見ながらリアルタイムでベットできる「ライブカジノ」は、まるで本物のカジノにいるかのような臨場感を味わえます。チャット機能でディーラーや他のプレイヤーと交流できるものもあり、ソーシャル性も備わっています。このようにオンラインでも「人の熱気」や「その場の雰囲気」を演出できるようになったことで、ますますユーザーを引きつける仕掛けが整いました。さらに近年はYouTubeやSNSで賭けの様子を配信する人も登場し、「自分もやってみようかな」とライト層を誘い込む動線にもなっています。スマホ時代のギャンブルは、ネット動画やコミュニティを通じてウイルス的に拡散・感染していく面があるのです。
コロナ禍もこの流れに拍車をかけました。外出自粛が続いた2020年前後、人々は自宅で過ごす時間が増え、ネット上の娯楽に目を向けました。その中で「オンライン賭博なら家で退屈しのぎになる」という安易な発想で手を出す人が増えたとされています²⁵。実際、コロナ以降にオンラインカジノユーザーが爆増したデータもあり⁵、パンデミックがギャンブル行動をオンラインへシフトさせたことは否めません。スマホ時代におけるこうしたギャンブル行動の変化は、一方で既存の依存症対策の枠組みでは捉えきれない新たな問題を生み出しています。
海外と日本のギャンブル依存症対策の違い
世界各国はギャンブル産業と依存症問題に向き合い、それぞれ対策を講じています。海外の先進的な対策として注目すべきは、「自己排除制度(Self-Exclusion)」の充実です⁸。例えばイギリスには“Gamstop”という全国規模のオンライン自己排除システムがあり、依存症リスクを感じたプレイヤーはワンストップで全オンライン賭博サイトから一定期間締め出してもらうことができます⁶。またシンガポールでは、本人申請の自己排除だけでなく、家族の申請によってカジノへの入場を禁止できる「ファミリー排除プログラム」も導入されています⁸。さらに第三者機関による強制排除まで制度化し、ギャンブル提供事業者に対しては自己排除の受け入れを法的に義務付けている国もあります⁸。これらの仕組みは、当事者が自分だけではブレーキをかけられない場合でも外部の力でアクセスを遮断することを可能にし、依存悪化の防止に一定の効果を上げています。
オンラインギャンブルに関しても、欧米やオセアニア諸国はプレイヤー保護策を強化しています。例えばオーストラリアでは前述のとおりオンライン賭博へのクレジットカード使用禁止に踏み切り、負債拡大を防ごうとしています⁶。またオンラインカジノ運営側の責任も重視されており、英国ではライセンス条件として事業者に「プレイヤーの賭け履歴モニタリング」や「入金額・賭け額の上限設定機能の提供」などが義務付けられています⁹。依存症の兆候が見られる顧客には連絡を取ってプレイを一時停止したり、相談機関の案内をしたりするなど、事業者による介入も求められるのが海外の潮流です。さらにテレビCMやネット広告に関しても、未成年や依存症者を保護する観点から表現や時間帯を規制する国が増えています。
一方、日本の対策はどうでしょうか。日本では2022年に「ギャンブル等依存症対策基本法」が施行され、公営競技やパチンコ・今後開業予定のIRカジノに関する依存症対策が整備されつつあります。しかしオンラインカジノに関しては、根本的に違法であるため公式の枠組みが存在しません。政府は現在、プロバイダーや決済業者がオンラインカジノサイトへの誘導を禁止する法整備を検討するなど⁴、アクセス遮断に向けた規制を模索していますが、利用者個々人の保護策までは講じられていないのが現状です。違法サイト相手では日本の行政指導も及ばず、自己排除制度やプレイ制限機能など「安全弁」不在の無法地帯となっているのです。
日本で依存症対策が進んでいる分野といえば、公営ギャンブルやパチンコに関するものが中心です。例えばパチンコ業界では「依存症お断り」のポスター掲示やATMの設置自粛、家族が申し出れば遊技をやめさせる「家族通知制度」などがあります。しかしこれらは任意の取り組みに留まり、効果は限定的と言われます。IR(統合型リゾート)についてはマイナンバーカードでの入場回数管理や入場料徴収といった規制が予定されていますが、その実効性は未知数です。また日本ではギャンブル収益の一部を依存症対策に充てる仕組み(Levy制度)がなく、支援資金が潤沢とは言えません。総じて、日本のギャンブル依存症対策は欧米に比べ制度設計や予算配分の面で遅れが指摘されており⁹、特にオンライン分野への対応はこれからの課題と言えます。
当事者が取るべき初期対応と行動
もし「自分はギャンブル依存かもしれない」と感じたら、早い段階で適切な手を打つことが肝心です。オンラインカジノにのめり込み、やめたくてもやめられない状態に陥った当事者が最初に取るべき対応を、いくつか具体的に示します。
- 環境的な遮断策を講じる: まず、オンラインカジノへのアクセスを物理的に遮断しましょう。具体的にはスマホやPCにギャンブルサイトブロック用のアプリ・ソフトを導入する方法があります。例えば「BetBlocker」は9万を超えるギャンブルサイトへのアクセスを自動遮断でき、しかも日本語対応の無料ツールです¹⁰。
同様に「Gamban」など有料ですが強力なブロックソフトもあります。
これらをインストールし、自分の意思ではサイトに行けない環境を作ることが重要です。またブラウザのブックマークやSNSでフォローしているオンラインカジノ関連のアカウントなど、誘惑となるものは全て削除してください。クレジットカードも限度額を下げるか解約し、勝手に課金できない状態にしておきましょう。 - 信頼できる家族・友人に打ち明ける: 一人で抱え込まず、身近な人に今の状況を正直に話してください。勇気が要りますが、家族やパートナーの協力は回復への大きな力になります。例えば金銭管理をしばらく代わりにお願いし、自分が自由に使えるお金を制限してもらうのも有効です。借金がある場合は家族と一緒に専門家へ相談し、適切な債務整理を検討しましょう。また家族にもギャンブル依存症について理解してもらい、「叱責や非難ではなく支援」に回ってもらうことが大切です²。家族が感情的にならず冷静にサポートするためのガイドブックも市販されています¹¹ので、互いに知識を深めながら問題に取り組んでください。
- 専門機関や自助グループと繋がる: 依存症は自力で抜け出すのが難しい病気です。早めに専門の相談機関や治療施設、自助グループを頼りましょう。当記事末で紹介するホットラインや医療機関に連絡し、プロのカウンセラーや医師の助言を仰いでください。相談する際は正直に現状を伝え、今後の対応策を一緒に考えてもらいます。必要なら精神科を受診し、認知行動療法などの治療プログラムを開始することも検討しましょう¹³。また、同じ悩みを持つ人たちの自助グループ(例えばギャンブラーズ・アノニマス(GA))に参加するのも効果的です¹²。仲間と体験を共有し支え合う中で、「自分だけじゃない」という安心感と回復のモチベーションを得ることができます。
以上のような初期対応を取ることで、ギャンブル漬けの悪循環を断ち切る第一歩が踏み出せます。特にオンラインカジノの場合、デジタル環境さえ整えれば簡単に再開できてしまうため、環境のコントロールと周囲の支援が不可欠です。「もう遅い」と諦める必要は決してありません。依存症は適切な対処で必ず回復に向かいます。焦らず着実に、しかし迅速に行動を起こしましょう。
利用可能な支援機関・相談窓口
日本国内には、ギャンブル依存症に関する相談や治療を行う機関が各種存在します。オンラインカジノ問題に限らず、ギャンブル依存全般について相談できる代表的な窓口・支援先を以下に紹介します。
- ギャンブル依存症予防回復支援センター(地域支援拠点): 厚生労働省の委託事業として設置された全国拠点で、24時間365日対応の無料相談電話「サポートコール」を受け付けています¹³(電話:0120-683-705)。臨床心理士等の専門相談員が常駐し、本人や家族からの悩みに応じてアドバイスや医療機関紹介を行っています¹³。秘密厳守で匿名OKなので、まずは気軽に電話で話をしてみると良いでしょう。
- 精神保健福祉センター・保健所: 各都道府県の精神保健福祉センターや一部保健所では、アルコール・薬物と併せてギャンブル依存の相談も扱っています。専門職による面接相談や家族教室を開催している地域もあります。お住まいの自治体の相談窓口を調べて、まず電話予約してみてください(厚労省HPで都道府県別の連絡先一覧が公開されています)。
- 医療機関(専門外来): ギャンブル依存症の専門外来や回復プログラムを持つ医療機関も増えてきました。神奈川県の国立病院機構久里浜医療センターは国内初のギャンブル依存治療プログラム「STEPG」を開発した先駆的存在ですし、東京の松沢病院や大阪の依存症治療拠点病院など、各地に専門治療を行う精神科があります¹³。予約待ちの場合もありますが、治療の必要性を感じたら紹介状をもらって受診しましょう。
- 自助グループ: 先述のGA(ギャンブラーズ・アノニマス)は世界的な自助グループで、日本各地でも定期的にミーティングが開かれています¹²。「多重債務者の会」や、依存者の家族向け自助グループ(ギャマノン等)もあります。それぞれ公式サイトで開催場所や日時を確認し、直接会場に出向くかオンラインミーティングに参加してみてください。同じ問題に取り組む仲間との出会いは、孤独感を和らげ回復への大きな支えとなります。
- NPO法人・民間支援団体: 「ギャンブル依存症問題を考える会」(SCGA)¹²や「全国ギャンブル依存症家族の会」など、民間の支援団体も精力的に活動しています。SCGAでは当事者・家族からの電話相談(相談専用TEL:070-4501-9625)や、各地での家族相談会・啓発イベントの開催、書籍出版など幅広く取り組んでいます¹²。民間団体は行政の手が届きにくい細やかな支援を提供しているので、必要に応じて活用すると良いでしょう。
以上のように、日本でも相談先は複数用意されています。それぞれ特徴がありますが、「どこに相談すれば…」と迷ったらまずは24時間ホットラインに電話してみるのがおすすめです。経験豊富なスタッフが今の状況を聞き取り、適切な支援先や解決策を一緒に考えてくれます。一人で抱え込まず、専門家の力を借りることは決して恥ではありません。むしろ回復への第一歩です。
関連商品・ツール紹介
最後に、ギャンブル問題の克服に役立つ書籍やツールなど、関連する商品・サービスをいくつかご紹介します。いずれも依存症からの回復や再発防止に有用なものですので、興味があれば活用してみてください。
- 書籍『ギャンブル依存症から抜け出す本』(樋口進 著)¹¹: 我が国の依存症治療の第一人者・樋口進医師による解説書です。依存症の基礎知識から治療の進め方、家族の対応策まで網羅した内容で、イラストも交え平易に書かれています。専門医療機関の探し方や相談窓口の活用法など実践的アドバイスも充実しており、当事者・家族の入門書として最適です。
リンク
- 書籍『家族のための「ギャンブル問題」完全対応マニュアル』(田中紀子 著)¹²: NPO法人代表の田中紀子氏が自身の経験と支援活動を踏まえ執筆した、家族向けの実用書です。ギャンブル依存症者を抱えた家族が取るべき具体的な対応(借金整理、声かけの工夫、境界線の引き方など)を詳しく指南しています。「怒らない関わり方」をはじめ家族が陥りがちなミスを避け、共倒れにならず支える方法が学べます。
リンク
- 自己規制アプリ「BetBlocker」¹⁰: 前述した無料のギャンブルブロックアプリです。スマホやPCにインストールすると、国内外のオンラインカジノやブックメーカーサイト約9万件へのアクセスが自動的に制限されます。一度設定すると解除できない仕組みで、賭けたい衝動が起きても物理的にアクセス不能にする強力な味方です。2025年には日本語版もリリースされ、使いやすさが向上しました。
- オンラインカウンセリングサービス: 最近では、インターネット経由で依存症相談ができるオンラインカウンセリングも増えています。ビデオ通話やチャットで匿名相談できるサービスもあり、通院に抵抗がある方でも利用しやすいでしょう。公認心理師や精神保健福祉士といった有資格者が対応するサービスを選び、プロのカウンセリングを自宅から受けられる環境を整えるのも有効です。費用は1回あたり数千円程度のものが多く、継続利用で割引になるプランもあります。
以上のような商品やサービスは、適切に活用すればギャンブル問題からの回復をサポートしてくれます。ただしこれらはあくまで補助的な手段です。依存症克服の主役は本人の「治りたい」という意志と周囲の支えであることを忘れず、できることから一歩ずつ取り組んでいきましょう。
依存症との闘いは決して楽な道のりではありませんが、適切な対策と支援によって必ず光明が見えてきます。オンラインカジノという新たな脅威に対し、正しい知識と冷静な対応で立ち向かいましょう。このガイドが、その一助となれば幸いです。
参考文献
- 朝日新聞「337万人経験、賭け額は年1兆円 警察庁がオンラインカジノ初調査」(2025年3月13日)
- MBSニュース特集「圧倒的に“生活の破綻”が早い『オンラインカジノ』依存症克服には何が必要か(専門家解説)」(2025年2月25日放送)
- プレジデントオンライン「オンラインカジノは『グレー』ではなく『完全に違法』…気軽なギャンブル遊びに潜む『高すぎる代償』」(木曽崇氏寄稿, 2023年10月16日)
- ASCII.jp「違法のオンラインカジノ、利用者数は約196.7万人、経験者は約336.9万人に」(2025年3月25日)
- 東洋経済オンライン「知らないとヤバい『オンラインカジノ』真の問題点 精神科医が警鐘する『早い、多い、ヤバい』の危険」(西村光太郎著, 2025年2月26日)
- 週刊女性PRIME「オンラインカジノの疑問点を専門家に聞いた『やったら犯罪?』『どうしてハマる?』『どこに相談を?』」(2023年)
- 政府広報オンライン「オンラインカジノによる賭博は犯罪です!」(2022年)
- デロイト トーマツ グループ調査レポート「各国のギャンブル依存症対策への取組み」(2021年)
- Japan Forward(産経新聞社英語版)「Block Access to Online Casinos to Address Gambling Epidemic」(Editorial, 2025年4月11日)
- Gambling Insider「BetBlocker launches Japanese language support tool」(2025年4月)
- 講談社『ギャンブル依存症から抜け出す本 ―賭け事との正しいつきあい方、教えます―』(樋口進 著, 2017年)