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セルフチェック+行動記録ツール提案:オンライン計測で“依存度”可視化

はじめに

ギャンブル依存症は、一見ただの娯楽の延長に思えるかもしれません。しかし実際には、ギャンブル等にのめり込んで自分ではコントロールできなくなる精神疾患であり、その結果、日常生活や社会生活に支障をきたす恐れがあります 。知らず知らずのうちに深みにはまり、気付いた時には借金や人間関係の悪化など深刻な問題を抱えてしまうケースも少なくありません。本記事では、ご自身や家族がギャンブル依存症かもしれないと感じたときに使えるセルフチェック方法と、日々の行動を記録して“依存度”をリアルタイムで可視化するためのツールについて詳しく解説します。セルフチェックによる簡易診断から、スマホやウェブで利用できる依存度の見える化サービス、そして行動記録シートを活用した自己観察・モニタリングの手法まで網羅し、依存傾向の可視化と対策に役立つ情報を提供します。

この記事を読むことで、ギャンブル依存のセルフチェック方法や記録による自己管理術がわかり、具体的なツールやアプリ、本といったリソースも知ることができます。ご自身やご家族の問題解決にぜひお役立てください。

ギャンブル依存症セルフチェックの重要性

「もしかして自分(家族)はギャンブル依存症かも?」と思ったとき、まず取り組みたいのがセルフチェックです。専門機関を受診する前に、自宅で手軽に依存のリスク度合いをチェックできるツールがいくつも用意されています。セルフチェックを行うことで現在の状況を客観的に把握でき、早めの対策や受診の判断につながります。また、チェック結果を数値やスコアで“見える化”することで、危機感を持ったり改善へのモチベーションを高めたりする効果も期待できます。

セルフチェック後は、その結果を踏まえて日々のギャンブル行動を記録していくことが大切です。「記録=現状の見える化」です。ギャンブルに費やしたお金や時間を数字に残すことで、自分がどれだけギャンブルにのめり込んでいるかを冷静に振り返ることができます。あるパチンコ情報サイトでも、「いくら使ったのかという感覚を忘れないためにも記録しておくことは大切」だと指摘されています 。収支表を付けてみて「今月は使いすぎているから控えよう」という判断がしやすくなる、という声もあります 。つまり、依存度を数値化・可視化することで自己認識が深まり、行動修正のきっかけになるのです。

以下では、具体的なセルフチェック方法と記録ツールについて順に紹介していきます。

ギャンブル依存症をセルフチェックする方法

簡易セルフチェックツール(スクリーニングテスト)

専門知識がなくても簡単にできるギャンブル依存症のセルフチェックとして、いくつかのスクリーニングテストが開発されています。その代表例がSOGS (South Oaks Gambling Screen)とPGSI (Problem Gambling Severity Index)です。

  • SOGS(サウスオークス・ギャンブル・スクリーン): 世界で最も広く用いられているギャンブル依存症の簡易テストです。全部で質問項目は12~16問程度あり※、過去のギャンブル行動やその影響について「Yes/No」で答えていきます。回答に点数をつけ、合計5点以上でギャンブル依存症の可能性が高いと判定されます。5点以上だった場合は専門医療機関の受診が勧められています。
    ※注: 出典によって設問数の表記に若干の違いがありますが、基本的な質問内容と判定基準は同じです。
  • PGSI(問題ギャンブル重症度指数): カナダで開発された9問の自己記入式テストで、一般の人々を対象とした調査にもよく使われています。設問は直近12か月のギャンブル行動について、「どの程度あったか」を回答します。例えば「ギャンブルをやめようとしても失敗することがあった」「負けを取り戻そうとして別の日にまた賭けをしたことがある」等の質問です。その9つの質問に「はい」「いいえ」で答えるだけで、ご自身やご家族の現在の状態を簡易評価できます 。スコアに応じて0=健全、1~2=低リスク、3~7=中程度のリスク、8以上=問題ありといった目安で判定されます(PGSIの開発元基準)。
  • その他のセルフチェック: 上記以外にも、ギャンブル依存症当事者の自助グループである「ギャンブラーズアノニマス(GA)」が提示する20の質問や、各自治体・団体が提供するオンラインセルフチェックツールがあります。例えば、全国公営競技施行者連絡協議会が公開しているウェブ上のセルフチェックツール(全10問)では、質問に答えると最後に診断結果が表示されます (※回答内容によっては追加で1問出題される仕組み )。このようなオンライン診断は早期発見・早期予防に役立つ簡易的なものですが、結果はあくまで目安である点に注意しましょう 。スクリーニングの結果「リスクが高い」という場合には、なるべく早めに専門医や相談窓口に相談することをおすすめします。

DSM-5による専門的な診断基準

セルフチェックで依存の疑いが強まったら、次は専門的な診断基準にも目を向けてみましょう。米国精神医学会の診断マニュアルDSM-5では、ギャンブル依存症(病的賭博)は以下の9項目の症状で定義されています 。過去12か月間にこれらのうち4項目以上が当てはまる場合、ギャンブル障害(Gambling Disorder)と診断されます。該当数が4~5個なら軽度、6~7個で中等度、8~9個で重度と重症度も判定されます。以下がその主なチェック項目です。

  1. 耐性の形成: 興奮を得るために、賭け金の額を徐々に増やす必要がある 。少額では物足りず、もっと大きく賭けないと満足できなくなっている。
  2. 禁断症状: 賭けを中断・中止しようとすると落ち着かなくなったりイライラする 。ギャンブルをやめようとするとソワソワしてしまい、結局また手を出してしまう。
  3. 制御の喪失: ギャンブルをやめる・減らす試みを繰り返しても何度も失敗した経験がある 。意思の力でコントロールできなくなっている。
  4. ギャンブルへの没頭: 常に頭の中がギャンブルのことでいっぱい 。過去の賭け事の思い出に浸ったり、次の賭けの計画を練ったり、資金繰りのことばかり考えている。
  5. 逃避のためのギャンブル: 現実の苦痛や不安、抑うつ感から逃れるために賭博をすることが多い 。「嫌なことを忘れたい」「ストレス発散したい」一心でギャンブルに向かってしまう。
  6. 敗けの追求( chasing ): 大負けした後、失ったお金を取り戻そうと後日また賭けをすることがよくある 。いわゆる「取り返そう」とする行為で、ズルズルと泥沼化しがち。
  7. 隠蔽のための嘘: ギャンブルにはまっていることを隠すために嘘をつく 。家族や友人にどれだけ賭けているか正直に言えず、ごまかすために嘘の説明をしている。
  8. 問題の深刻化: ギャンブルのために、大事な人間関係や仕事、学業などを危険にさらしたり失ったことがある 。ギャンブル優先で約束を破ったり職を失ったりしている。
  9. 経済的破綻と他人への依存: ギャンブルが原因のどうしようもない経済的危機を救うために、他人に金を無心したことがある 。借金の穴埋めを家族や知人に頼ったり、金融機関に泣きついた経験がある。

以上が専門的な診断項目ですが、ご自身で読んでみて4つ以上心当たりがある場合は要注意です。「軽度であれば大丈夫」というものでもなく、例え軽度であっても放置すれば中等度・重度へと進行しかねません。早期に自覚し対策を始めることが肝心です。なお正式な診断は医師のみが行えますので、セルフチェックや診断基準で当てはまる項目があった人は、なるべく専門医療機関で評価を受けることをお勧めします。

依存度をリアルタイムで可視化できるサービス・アプリ

セルフチェックで現在の依存度の目安を知ったら、次は日々の「ギャンブル依存度」を見える化して管理できるツールを活用してみましょう。近年ではスマートフォンやPCで使える便利なサービスが登場しており、リアルタイムに自分の状況を数値やグラフで確認することができます。ここでは、日本語・英語問わず依存度の可視化に役立つウェブサービスやアプリをご紹介します。

ギャンブル依存度チェックができるオンラインサービス

まずはウェブ上で依存度を測定できるサービスです。前述のセルフチェックツールもオンライン化が進んでおり、質問に答えると即座に結果が表示されるサイトがあります。例えば:

  • 日本貸金業協会「ギャンブル依存度チェック」 – 5問の質問にタップで答えるだけで「あなたの依存度は?」という結果が表示される簡易診断。質問内容はDSM-5の症状を簡潔にしたもので、「ギャンブルをやめようとするとイライラする」「負けを取り返そうとまた賭けることがある」等が含まれています。5問全てに回答すると、最後に総合結果が表示され、自分の依存リスクを知ることができます(※具体的な点数や判定コメントが提示される)。
  • 全国公営競技連絡協議会セルフチェック – 前述の公営競技協議会が提供するツールで、10問(場合により11問)の質問に回答すると結果が出ます 。競馬・競輪・競艇・オートレースなど公営ギャンブル主催者が協力して作成したものだけあり、内容は日本人になじみ深いギャンブル行動が念頭に置かれています。結果画面では依存の傾向や相談窓口案内が表示されるようになっており、早期発見から相談支援につなげる工夫がなされています 。
  • 久里浜医療センター「インターネット依存症スクリーニングテスト」 – 久里浜医療センターのサイト上で利用できるテストで、アルコールや薬物、ギャンブル、インターネットそれぞれについて簡易チェックが可能です。ギャンブルについてはSOGSに基づいた設問が12問出題され、判定ボタンを押すと結果が表示されます。信頼できる医療機関の提供ということもあり、結果とともに「専門医療機関の受診を検討しましょう」といった適切なアドバイスも得られます。

これらのオンラインサービスを活用すれば、自宅にいながら数分で自分のギャンブル依存度の目安を知ることができます。結果はあくまで参考ではあるものの、数値やコメントとしてフィードバックされるため、客観視する材料として有用です。定期的に利用して経時的な変化を追うことで、「以前より依存傾向が弱まっている/強まっている」といった自己モニタリングも可能になります。

依存度・回復度を“見える化”するスマホアプリ

スマートフォン向けのアプリにも、ギャンブル依存症の克服をサポートするものが増えています。その中には日々の禁ギャンブル状況を数値化して表示してくれるものや、セルフチェック機能を搭載したものもあります。代表的なアプリをいくつか見てみましょう。

大阪府が提供する「Day See」アプリのメイン画面。依存度チェック(PGSIアンケート)や日誌機能などが揃っている。

  • Day See(デイジー) – 大阪府が開発した無料のギャンブル等依存症相談支援アプリです。特徴は二つあり、ひとつは依存度チェック機能。全9問からなるアンケート(PGSIに基づく)に答えることで、現在のギャンブル依存度をチェックできます。もう一つはギャンブル日誌機能で、禁ギャンブルの目標を設定しながら毎日のギャンブル行動を記録していくことができます 。入力した日誌データは蓄積され、後から振り返ってグラフ化することも可能です。また、日々の記録は専門機関で相談する際に役立つため、医療・相談機関とつながるツールの一つとして活用してくださいと案内されています (※このアプリ自体は治療を目的としたものではありません)。公的機関提供という安心感もあり、依存度チェックと日誌が一体化した優良アプリと言えるでしょう。
  • ギャンブル禁止カウンター「賭け断ちぬ」 – 民間で開発された人気の禁ギャンブル支援アプリです。特徴はゲーム感覚で禁欲を続けられる工夫が凝らされていること。アプリを起動すると現在ギャンブルをやめてから経過した時間や節約できた金額が一目で表示され、さらに「その金額で買えるもの」がリストアップされます 。例えば「禁ギャンブル◯日で〇円節約できました。それだけあれば◯◯が買えます!」といった具合に、節約の成果を可視化してモチベーションアップにつなげてくれるのです 。また、禁ギャンブル継続日数に応じてドット絵の侍キャラが進化するなど遊び心のある演出もあり 、全国のユーザーと実績を競い合う仕組みもあって「楽しく続けられる」と評判です。累計経過時間や節約金額の自己ベスト記録も確認でき、自分の新記録更新が励みになるでしょう 。
  • Quitzilla(クイットジラ) – 英語圏で人気の習慣改善サポートアプリですが、日本語にも対応しておりギャンブルを含む様々な悪習慣のカウンター&分析ツールとして使えます。禁ギャンブルを開始してからの経過日数・経過時間、節約できた金額などをリアルタイムでカウントして表示。さらに日ごとの誘惑度合いや気分をメモし、グラフで振り返る機能もあります。ギャンブル以外の依存(アルコールや喫煙など)にもまとめて対応できる「万能アプリ」として紹介されることもあります。シンプルなインターフェースで使いやすく、自分の依存度(回復度)の推移をデータで実感するのに適しています。
  • QuitMate(クイットメイト) – こちらは2023年にリリースされた新しい依存症克服SNSアプリです。匿名で利用でき、アルコール・ギャンブル・過食・買い物など様々な「やめたい習慣」のコミュニティに参加できます。機能面では、習慣の離脱時間をカウントするタイマーや、認知行動療法に基づいた日々の記録・振り返りプログラムが特徴です。同じ悩みを持つ仲間と経過を報告し合い励まし合えるため、孤独感を和らげつつ依存克服に取り組めるでしょう。ギャンブル専用のコミュニティもあり、体験談の共有やアドバイスのやり取りが活発に行われています。

上記のほかにも、ギャンブル欲求を抑えるための対処法を教えてくれるアプリや、スマホでアクセスできる自助グループ情報提供アプリなど、さまざまな角度からギャンブル問題と向き合うためのツールが登場しています。大切なのは、こうしたテクノロジーを上手に利用して自分の依存度を“見える化”し、日々の動機づけに役立てることです。数字やグラフで進捗がわかれば、「今日は賭けずに済んだ!」「先月より使ったお金が減った!」といった小さな成功体験の積み重ねを実感できます。それがさらなる意欲につながり、結果として依存行動の改善に寄与するのです。

行動記録による自己観察・モニタリングの手法

ギャンブル依存からの回復には、自身の行動パターンや心理状態を客観的に見つめ直すことが欠かせません。そこで役立つのが「行動記録」です。ギャンブルに関する行動や気持ちを日々記録することで、依存傾向を自分で観察・モニタリングでき、問題点や改善策が浮き彫りになります。この章では、行動記録の具体的な付け方と、その効果について解説します。

行動記録シートの活用方法

行動記録シートとは、日々のギャンブルに関する出来事を記録するためのシートやノートのことです。特別なフォーマットでなくても構いませんが、一般的には以下のような項目を設けておくと良いでしょう。

  • 日時: ギャンブルをした日付と時間帯。
  • 内容: 行ったギャンブルの種類(パチンコ、競馬、オンラインカジノなど)や場所。
  • 所要時間: どれくらいの時間ギャンブルに費やしたか。
  • 費用(金額): その日に使った金額(または得た金額)。勝った場合も含め、純粋に出入りしたお金を記録する。
  • きっかけ・気分: ギャンブルをしたきっかけ(給料日だったので、嫌なことがあったので、誘われて etc)や、その時の感情(ストレスが溜まっていた、寂しかった、衝動的になっていた etc)。
  • 結果: 勝敗の結果や、それに対する感想(大勝ちして興奮した/大負けして落ち込んだ など)。

例えば、ExcelやGoogleスプレッドシートで上記項目を列に設定し、毎日入力していけば自作の「ギャンブル日誌」が完成します。手書きが好きな人は市販のノートや手帳を利用しても良いでしょう。自治体によっては行動記録用のシート(PDF形式)を配布しているところもあります。大阪府医師会の資料では「カレンダー形式でギャンブル等行動を毎日記録してみましょう」という付録が提示されており、1日ごとにギャンブルに使った金額や有無をチェックできるようになっています。こうした様式を印刷して使うのも便利です。

重要なのは、継続して記録を付けることです。最初は面倒に思えるかもしれませんが、毎日欠かさず書くことで習慣化します。記録を付ける行為自体が「今日はギャンブルを我慢しよう」という抑止力にもなりますし、たとえギャンブルしてしまった日でも「なぜやってしまったのか」を書き残すことで次への反省材料になります。アプリ派の方は前述のDay Seeの「ギャンブル日誌」機能や、禁パチ・禁スロ専用の日記アプリを活用すると入力・集計が簡単です 。

「時間」と「金額」を数字で把握する重要性

行動記録では特にギャンブルに費やした「時間」と「お金」に注目しましょう。この2つは依存の深刻さを如実に表す客観指標だからです。人は往々にして自分に都合の悪い現実を直視したがらないものですが、記録をつけて数字として積み上げることで、否応なく現実と向き合うことになります。

例えば、毎日の記録を1か月分集計してみると、「ギャンブルに使った総時間○時間」「費やした総額○万円」といった数字が出てきます。これを見て多くの人がハッとするでしょう。「自分はこんなにも時間とお金を失っていたのか?」という気づきは、依存から抜け出す強い動機付けになります。実際、とある回復者の声として「あんな風に無駄な時間を過ごす自分が信じられなかった」と記録を振り返って後悔したとのエピソードもあります 。また、収支をつけて損益をはっきりさせることで、ギャンブルの無意味さ(長期的に見れば必ずマイナスになること)が論理的に理解できます。勝った負けたの感情に左右されず、トータルで見ればどれだけ損をしているかが明白になるため、ギャンブルに対する考え方が徐々に変化していくでしょう。

さらに、先述のアプリ「賭け断ちぬ」のようにギャンブルをやめて節約できたお金を記録するのも効果的です 。例えば「禁ギャンブル○日で☆円節約できた。それだけあれば△△が買える」という具合に、自分が取り戻したお金の価値を実感できます 。これは失ったものに目を向ける記録とは逆に、得られたものに目を向ける記録と言えます。こうしたポジティブな数値も合わせて把握することで、「これだけ節約できているんだ、もっと続けよう!」という前向きな気持ちが湧いてきます。

記録から得られる自己認識と行動修正のヒント

行動記録を続けていくと、蓄積されたデータから自分の行動パターンやトリガー(誘因)が見えてきます。例えば1週間や1か月分の記録を振り返ってみてください。「ギャンブルに走ってしまう日はどんな共通点があるか?」を分析するのです。ある人の記録では、「衝動のきっかけはいつも疲れている日だった」とか「土日は暇すぎてスマホでギャンブルサイトを開いていた」といった傾向に気付いたと言います。このように、記録を習慣づけ「振り返る」ことで初めて見えてくる事実があります。自分では無意識だった癖や心理状態が客観視できるようになるのです。

記録から得られた気づきを活かして、具体的な対策を講じることも可能になります。例えば上記のケースでは、「疲れている日は要注意だから早めに休むようにしよう」「週末暇なときは予定を入れてギャンブル以外の娯楽で過ごそう」といった環境調整や代替行動の計画を立てることができます。衝動に駆られやすい時間・場所が把握できれば、事前にそのリスクを避けることもできます。まさに、記録は「抑える」のではなく「見守る」道具なのです。自分の心の動きを見守って、小さな勝利(今日は衝動をやり過ごせた等)を積み重ねていく——その手助けとなるのが記録と言えます。

実際、専門家もセルフモニタリング(自己監視)技法の有効性を指摘しています。海外の依存症治療機関の解説によれば、多くのセルフヘルププログラムで日記や支出記録といった自己監視が推奨されており、これにより自己認識が深まり、依存行動のパターンや回復の進捗を把握できるとされています 。記録を続けるほどデータが蓄積し、「以前は毎日のように賭けていたのが、このところ週1回以下に減っている」など回復の手応えも数字で感じられるでしょう 。逆に、ストレスが増えた月は浪費額が跳ね上がって「また危ない兆候だ」と早期に自覚することもできます。こうしたフィードバックループが、さらなる自己改善行動(ミーティングに参加する、カウンセリングを受ける等)につながるのです。

記録を習慣化するコツ

行動記録の効果を最大化するには、無理なく続けられる工夫も大切です。以下に記録を習慣化するためのコツをまとめます。

  • 記録のハードルを下げる: 凝ったフォーマットにすると疲れてしまうので、最初は箇条書きメモ程度でもOK。「○月○日:仕事で嫌なこと→パチンコ2時間△万円負け。後悔。」といった簡素な書き方でも、書かないより遥かに有益です。
  • 思いついたらすぐ書く: 衝動に駆られたら「まず書く」ことをルールにしましょう。ノートでもスマホのメモでも良いので、感じた欲求を言語化して書き留めます。「今〇〇したくなっている」と素直に書くだけで心が少し落ち着き、衝動の勢いが和らぐといいます。
  • 書式にとらわれすぎない: 数字だけでなく気持ちも書きたいときは書いてOKですし、逆に感情を書くのが苦手なら金額と時間だけでも構いません。自分に合ったスタイルで続けることを優先しましょう。
  • 週1回は振り返る: 記録しっぱなしではなく、週末など時間があるときに1週間分を読み返してみます。「よく頑張った」「ここは課題だな」と第三者になったつもりで眺めてみると、新たな発見や反省点が見つかります。気付きを次週の行動目標に活かしましょう。
  • 成果も記録する: 「今日は行かなかった」「仲間の誘いを断れた」といったポジティブな出来事もぜひ書き留めてください。「3回衝動が起きたけどそのうち2回は記録してやり過ごせた」など、小さな成功体験を自分で認めることが大事です。

記録は三日坊主になりやすいものでもありますが、上記のようにハードルを下げ、定期的な振り返りで効果を実感することで継続しやすくなります。ぜひ今日からでも手帳やスマホを取り出して、最初の一行を記してみてください。それが「回復への一歩目」になるかもしれません。

依存度可視化に役立つツール・サービスの紹介

最後に、ここまで登場したギャンブル依存対策に役立つツールやサービスをまとめてご紹介します。いずれも当事者や家族の方が実際に活用して効果が期待できるものです。興味があるものから取り入れてみましょう。

● セルフチェック用ツール

  1. 全国公営競技連絡協議会 セルフチェックツール (Web) – 10問のオンライン診断で依存度をチェック 。結果は目安として活用しよう。
  2. 横浜市依存症ポータルサイト (Web) – SOGS日本語版によるセルフチェックが可能。他の依存(アルコール・薬物・ネット)もまとめてチェックできる。
  3. ギャンブラーズアノニマス「20の質問」 – 自助グループGAが公開する自己診断質問。YESが7つ以上で要注意、15以上でほぼ問題ありとされる。日本語訳は各地のGA紹介資料等で参照可能。

● 依存度の見える化アプリ

  1. Day See(大阪府) – 依存度チェック(PGSI質問)+ギャンブル日誌の無料アプリ。データは端末保存型でプライバシー安心。お守り機能や相談先情報も充実。
  2. 賭け断ちぬ – 禁ギャンブル継続日数・節約金額をリアルタイム表示するカウンターアプリ 。ゲーム風演出で楽しみながら続けられると好評。App Store/Google Playで無料提供。
  3. Quitzilla – 悪習慣追跡アプリ。ギャンブルを含む複数依存に対応し、経過時間・節約額のカウントやグラフ分析が可能。英語表記だが直感的に操作できる。
  4. QuitMate – 匿名SNS型の依存症克服アプリ。仲間と励まし合いながら禁ギャンブル継続日数を競える。認知行動療法に基づく日記機能もあり。

● 行動記録用リソース

  1. 大阪府「ギャンブル行動記録カレンダー」 – 1日単位でギャンブルの有無や金額を書き込めるカレンダー形式のシート。PDFを印刷して利用。目標欄もあり計画的に禁ギャンブルに取り組める。
  2. 久里浜医療センター資料「STEP-G」 – 国立病院機構の標準治療プログラム。付録にメリット・デメリットのバランスシート(ギャンブルの利点と欠点を書き出すワークシート)などが含まれる。自己分析に役立つ。
  3. ノート・日記帳 – 市販の手帳やノートを活用してオリジナルの日誌を作成。記録例やテンプレートはネット上のブログ等でも多数紹介されている。まずは書きやすい方法で始めよう。

● 関連書籍(理解を深めモチベーションを上げるのに有用)

  1. 『自力で克服!ギャンブル依存症 徹底対策ガイド』真道綾人 著 (2022) – 元当事者による克服ノウハウ本。依存症の仕組み解説から具体的な対策をステップ形式で紹介。自己管理法やサポートネットワークの重要性、生活習慣の見直しまで丁寧に説明されています。実践的なワークシートやチェックリストも収録されており、読者が自身の状況を客観的に把握しやすい内容です。
  2. 『〈改訂版〉家族のためのギャンブル問題完全対応マニュアル』田中紀子 著 (2024) – 当事者の家族向けに書かれた対応策ガイド。借金問題への対処や感情的な支え方、相談窓口の活用方法などを具体例とともに解説。家族が直面する様々な困難(突然の借金発覚、嘘や隠し事、暴言・暴力など)への対処法が網羅されています 。家族が読むことで正しい知識と対応策を身につけられる一冊です。
  3. 『ギャンブル依存症から抜け出す本 (健康ライブラリー イラスト版)』樋口進 監修 (2017) – 日本における依存症治療の第一人者である樋口進医師が監修した入門書。漫画やイラストで平易に描かれており、依存症の心理から治療法、再発予防まで理解しやすくまとめられています。家族と一緒に読むことで、病気への正しい認識と回復への道筋を共有できるでしょう。

● 相談先・支援サービス

  • ギャンブル依存症相談窓口 – 厚生労働省委託の依存症相談拠点「地域依存症センター」や、自治体の保健所などで専門相談を受け付けています。電話やメールでの相談も可能な場合があり、早めに相談することで適切な治療や支援プログラムにつなげてもらえます。まずはお住まいの自治体ホームページや厚労省の情報ページを確認してみましょう。
  • 自助グループ(GAと家族会) – ギャンブラーズアノニマス (GA) は当事者の自助グループ、またその家族版として家族会(ギャマノン等)も各地で定期的にミーティングを開催しています。仲間と経験を分かち合う中で励まし合い、依存症と闘う力を得られます。参加費は基本無料で、匿名で参加できますので、一人で抱え込まず扉を叩いてみてください。

以上、セルフチェックから行動記録ツールまで幅広く紹介しました。ギャンブル依存症は「見える化」と「気づき」から回復が始まると言っても過言ではありません。セルフチェックで問題を自覚し、日々の記録で現状を直視し、数値や事実から自分を客観視する——このプロセスが、依存の連鎖を断ち切る第一歩となります。ぜひ本記事の情報を活用し、今日からできる一歩を踏み出してみてください。小さな変化の積み重ねが、やがて大きな回復への道筋となるはずです。応援しています。

参考文献リスト

  1. 消費者庁: ギャンブル等依存症とは?
  2. 広島県: ギャンブル等依存症のセルフチェック(PGSI)
  3. 横浜市: 依存症セルフチェック(ギャンブル等依存症 SOGS)
  4. 大石クリニック: ギャンブル依存症 診断チェック(SOGS)
  5. 全国公営競技施行者連絡協議会: ギャンブル依存症セルフチェックツール
  6. ソーバーねっと: ギャンブル障害 DSM-5チェックリスト
  7. Mayo Clinic: Compulsive gambling – Symptoms & causes
  8. スロパチステーション: パチンコの収支を付ける重要性
  9. J. Flowers Health Institute: Best Treatment for Gambling Addiction
  10. note: 「ギャンブル衝動の記録」がくれた心の整理
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