はじめに
ギャンブル依存症は本人だけの問題ではなく、家族や親族、職場の同僚や友人といった周囲の人々にも深刻な影響を及ぼします。その影響は多岐にわたり、信頼関係の崩壊や経済的困難、家庭崩壊、離婚・絶縁といった関係性の悪化につながることも少なくありませんkakenai.jp。一方で、大切な人を救おうと懸命に支え続ける家族や友人もいますが、その過程では計り知れない苦悩や葛藤が伴います。また、支える側も共倒れにならないよう、自身のメンタルケアや共依存(家族などが依存症者に過度に依存し、問題行動を許容してしまう状態)への対策が必要だと指摘されていますncasa-japan.jpmnapg.org。本記事では、配偶者・親・子ども・兄弟姉妹・職場の同僚・友人という各立場から、ギャンブル依存症者を抱えた周囲の具体的な体験談を国内外から紹介し、発覚時の衝撃、関係悪化の実態、支援に至るまでの葛藤や工夫、支え続けるための心構え・自己ケア、そして回復後の関係性の変化までを詳しく分析します。
本記事の構成:
- 配偶者(夫・妻)の視点 – ギャンブル依存症の夫や妻を支える体験談
- 親の視点(父母) – ギャンブル依存症の子どもを持つ親の体験談
- 子どもの視点 – ギャンブル依存症の親を持つ子どもの体験談
- 兄弟姉妹の視点 – ギャンブル依存症の兄弟姉妹を持つ家族の体験談
- 職場の同僚の視点 – ギャンブル依存症の社員を目の当たりにした職場の体験談
- 友人の視点 – ギャンブル依存症の友人や恋人を支えた体験談
配偶者(夫・妻)の視点
ギャンブル依存症者の配偶者は、最も近くで問題に直面する立場です。夫や妻がギャンブルにのめり込んでいると知った瞬間の衝撃は計り知れません。たとえば日本のある妻は、結婚後まもなく夫がパチンコに給料の大半を費やし家賃を滞納していることに気づきましたが、「少し使いすぎただけ、話せばわかるはず」と楽観的に考えていましたkakenai.jp。しかし状況は悪化し、夫が勤務先の預り金に手を出してまでギャンブル資金を捻出していたことが発覚した際には、「反射的に貯金で肩代わりしてしまった」が、「もう二度とこんなことはしないで」と懇願するのが精一杯でしたkakenai.jp。こうしたパートナーの裏切り行為の発覚により、大きなショックと絶望感に襲われる配偶者は少なくありません。実際、日本の支援団体代表・田中紀子さんは、かつて夫のカバンから消費者金融のカードが11枚も出てきた経験を語っていますが、それを目の当たりにしたとき「どんなに驚き、戸惑い、絶望的な気持ちになるだろうか」と表現していますgendai.ismedia.jp。まさに予想だにしなかった現実を突きつけられる瞬間です。
信頼関係の崩壊と生活への悪影響も深刻です。ギャンブルにのめり込んだ配偶者は嘘を重ね、家庭のお金を使い込み、場合によっては借金や違法行為にも手を染めてしまいます。前述の妻K.Hさんのケースでは、夫が生活費を盗んだり子どもにまで小遣いを無心するようになり、何度話し合いや説得を試みてもその場しのぎの言い訳ばかりで、数日後には同じことの繰り返しでしたkakenai.jp。かつては優しかった夫が自分本位の姿に変貌し、妻の気持ちに応えなくなってしまった様子が生々しく語られていますkakenai.jp。配偶者にとって、家庭内での孤立感や絶望感は計り知れず、「誰に相談してもこの苦しみを理解してもらえない」という状況に追い詰められることもありますkakenai.jp。経済的にも一家の貯蓄が底をつき、多額の借金だけが残るケースも珍しくありません。実際に海外の事例では、夫のギャンブルが原因で妻が高血圧や脱毛症になるほどのストレスを抱えmnapg.org、夫も仕事を失って収入が途絶えるという家庭崩壊寸前の状態に陥ったケースがありますmnapg.org。
こうした中、配偶者はしばしば**「離婚すべきか、このまま支えるべきか」**という究極の選択を迫られます。多くのギャンブル依存症者の妻たちは一度は離婚を真剣に考えると言われmnapg.org、実際に離婚に踏み切る人もいます。先述のK.Hさんも限界まで夫を支えましたが、最後は「これ以上一緒にいてもお互いのためにならない」と感じ、3人の子どもを抱えて離婚に踏み切りましたkakenai.jpkakenai.jp。離婚を切り出すまでには「死んで楽になりたい」と思いつめるほど追い詰められたといいkakenai.jp、決断に至る道のりは非常に辛いものでした。一方で、「離婚以外にも別居という選択肢や、一時的に距離を置く方法もある」という助言が支援団体からなされることもありますbusinessinsider.jpmnapg.org。実際、アメリカのある女性(セシリアさん)は夫の度重なるギャンブルと借金に耐えかねて別居し、数年の別居期間を経て離婚を決意したと語っていますmnapg.org。
しかし支える道を選ぶ配偶者も多く存在します。愛する人を見放せず、「なんとか更生してほしい」との一心で協力を続けるケースです。このような協力の過程では、配偶者自身も試行錯誤を重ねています。例えば、セシリアさんは夫に治療を勧めて自助グループ(※ギャンブル依存症本人が通う自助グループをGA(ギャンブラーズアノニマス)といいます)への参加を促しましたが、夫は1回行ったきりで拒否してしまいましたmnapg.org。そこで彼女自身がギャマノン(Gam-Anon)と呼ばれる家族向け自助グループに通い始め、同じ境遇の配偶者たちからサポートを得る道を選びましたmnapg.org。また、日本のK.Hさんも限界を感じた末に家族の自助グループ(全国ギャンブル依存症家族の会)に参加し、初めて自分と同じ苦しみを乗り越えた人々と出会ったとき「自分ひとりではない」と救われる思いがしたと綴っていますkakenai.jpkakenai.jp。彼女はそこで「他人(夫)を変えることはできず、変えられるのは自分だけ」という基本原則を教えられ、なぜあれほど訴えてもうまくいかなかったのか腑に落ちたといいますkakenai.jp。この気づきは「イネーブリング」(依存症者の問題行動を許し支えてしまう行為)や共依存の関係を断ち切る第一歩となりましたncasa-japan.jpncasa-japan.jp。
配偶者が支援に乗り出す際には、具体的な協力体制の工夫もみられます。例えば金銭管理の見直しです。K.Hさんは自助グループでの仲間の助言から、「生活費の口座と借金返済の口座を切り離さない限り自分は延々と尻拭いをしてしまう」と気づき、家計の分離を進めましたkakenai.jp。また、夫の治療同行やカウンセリングへの付き添い、借金の法的整理手続きの手配など、できる限りの手を尽くす配偶者もいますmnapg.orgncasa-japan.jp。ある妻は夫を説得して依存症の専門クリニック受診にこぎつけ、「ギャンブル等依存症」と診断されてからようやく夫婦で問題に向き合い始めたと報告していますkakenai.jp。
支える過程での苦悩と葛藤も率直に語られています。K.Hさんは夫を支えながらも何度も心が折れそうになり、「このままでは自分が壊れてしまう」と感じていましたkakenai.jpkakenai.jp。彼女の母親でさえ離婚に反対し頼れる人がいない孤独の中、「泣きながら命綱のように週一回の自助グループに通った」と振り返っていますkakenai.jpkakenai.jp。セシリアさんも「依存症は時間泥棒であり、まさに地獄のローラーコースター」と表現しつつ、「嵐の最中でも自分自身のセルフケアの重要性を見失わないで」と同じ境遇の配偶者たちに助言していますmnapg.org。支える側が自分の人生を見失ってしまう共倒れの危険に陥らないよう、自分の趣味や仕事、人間関係を保ち続けることも大切だといいますmnapg.org。
こうした努力にもかかわらず、回復に長い時間がかかる場合もあります。ある妻は「感情が落ち着くまでに1年半かかった」と述べ、支え続ける中で自身も精神的に成長していったと語っていますncasa-japan.jp。一方で、配偶者が見放さず支えた結果、夫婦関係が再生した例もあります。田中紀子さん夫妻の場合、お互いがギャンブル依存症当事者となってしまった特殊なケースでしたが、夫婦揃って治療と自助グループに取り組み、共に回復した経験がありますgendai.ismedia.jp。田中さんは「依存症から回復するプロセスは、自分の生き方を見つめ直すこと」と述べており、夫婦でそれぞれが自己を見つめ直したことで信頼を取り戻し、現在は「とても幸せに生きています」とまで言える関係を築けたそうですgendai.ismedia.jp。このように、回復後には夫婦関係が改善し、以前にも増して絆が深まるケースも確かに存在しますgamanonmn.com。
最後に、支える配偶者自身のメンタルケアについて強調します。セシリアさんは「自分の目的や喜びを見つけ、人生を取り戻すこと」を最優先にすべきだと述べmnapg.orgmnapg.org、実際に離婚後はキャリアに注力して得た知識をもとに講演活動を行うまでに回復しましたmnapg.org。K.Hさんも離婚後に「夫や妻という役割から解放され、以前より良い関係になれた気がする」と述懐しkakenai.jp、自らも支援者として伝えられることがあるのではと前向きに捉えていますkakenai.jp。自助グループで12ステッププログラムに取り組んだ彼女は、「正直に生きる勇気と、ありのままを受け入れる幸せを知ることができた」と、その精神的成長を語っていますkakenai.jp。このように、配偶者自身が適切なサポートとセルフケアによって自分の人生を立て直し、前向きな未来展望を描けるようになることも大切なポイントです。
親の視点(父母)
ギャンブル依存症に陥るのは若年層から中高年まで様々ですが、その親御さんにとって、子ども(成人した息子・娘を含む)がギャンブルに溺れていく様子を見るのは極めて辛い体験です。親の立場では、自分が育てた子どもが破滅に向かうことへの自責の念や、なんとか助けたいという強い思いから、配偶者以上に積極的に干渉・援助してしまう傾向も指摘されていますgamanonmn.comncasa-japan.jp。ここでは、親の視点から見た発覚の経緯や衝撃、家庭への悪影響、葛藤と支援の試み、そして親自身の学びと回復について見ていきます。
発覚の経緯と最初の衝撃: 多くの親は、最初は子どもの異変に気づいてもギャンブル依存症だとは思わず、別の問題だと考える傾向があります。ある典型的なケースとして、アメリカのご両親が成人した息子の金遣いのおかしさに気づいた例があります。この家では、小切手の紛失や見覚えのない請求書、取り立ての電話などが相次ぎ、両親は「若者特有の金銭管理のだらしなさだろう」と考えていましたgamanonmn.com。しかし息子から「自分はギャンブル問題を抱えている」と告白され、初めて依存症の可能性を意識しますgamanonmn.com。息子は「カジノに自分の写真を登録すれば入店を断られる仕組みがある」と説明し、一時は両親も安堵しましたが、それは甘い見通しでしたgamanonmn.com。ほどなく再発し、結局ギャンブルによる借金問題が再燃しますgamanonmn.com。日本でも、「大学生の息子がおかしい」と感じて通帳を見ると消費者金融からの借入が発覚し、親が初めて事態を知る、といった事例が報告されていますncasa-japan.jp。親にとって、わが子の異常な借金や浪費の発覚は青天の霹靂であり、「まさかうちの子が」という衝撃と戸惑いに襲われます。
家庭・関係性への悪影響: 子どものギャンブル依存が明らかになると、家庭内には深刻な緊張が生じます。親はしばしば夫婦間で責任のなすり合いをしてしまうことがあります。「どこで育て方を間違えたのか」「お前の甘やかしが原因だ」等といった非難の応酬が起こり、家庭不和が広がるケースもありますgamanonmn.com。実際、先のアメリカの事例では、息子の問題に直面した両親が「私たちの育て方が悪かったのか」と互いに責め合い、夫婦仲まで険悪になったといいますgamanonmn.com。また、経済的な打撃も大きく、子どもの借金を肩代わりするために親の退職金や貯金が消えてしまうこともありますkakenai.jp。日本のある母親は、息子が会社の金に手を出したと知りパニックになり、長年積み立ててきた定期預金を解約して即座に穴埋めしましたが、「犯罪行為をしていた事実が恐ろしくて誰にも相談できなかった」と振り返っていますkakenai.jpkakenai.jp。このように、親は犯罪の隠蔽や借金返済の後始末まで背負い込んでしまいがちです。しかしそれは結果的に子どもの問題行動を長引かせてしまう「イネーブリング(甘やかしによる問題継続)」になりかねませんncasa-japan.jpncasa-japan.jp。
親の葛藤と支援への試み: 親は「我が子を見捨てるわけにはいかない」という思いから、何とか更生させようと様々な手を尽くします。その中で生まれる葛藤は深刻です。先のアメリカ人両親は、息子に対して**「借金を肩代わりしてリセットさせる」という母親の案と、「厳しく叱って今すぐやめさせる」という父親の案を試しましたが、いずれもうまく行かず、激しい言い争いと徒労感だけが残りましたgamanonmn.com。追い詰められた末に、息子が給料全額をカジノで失くしたと電話してきた夜、母親は「45分泣き続けたあと、突然覚悟が決まった」といいますgamanonmn.com。息子が助けを求めてきたとき、彼女は初めて「私は援助しない。あなた自身の責任よ」と突き放しましたgamanonmn.com。これは親にとって非常につらいタフラブ(愛ある厳しい対応)ですが、この決定的瞬間が状況を大きく転換させたのですgamanonmn.com。息子は観念して翌週から自助グループ(GA)のミーティングに通い始め、母親自身も家族の自助グループ(ギャマノン)への参加を開始しましたgamanonmn.com。母親は当初「すぐに息子は治るはず」と期待していましたが、ミーティングで「これは治癒ではなく寛解を目指す病気であり、『治らない病気だが止め続けることはできる』**」と学び、短期的な解決法はないことを悟りましたgamanonmn.com。
協力体制と家族の気づき: 自助グループに通い始めてからというもの、この母親は毎週のように新たな発見があったといいます。息子は息子でGAでのプログラムに取り組み、母親は母親でギャマノンで12ステッププログラム(※依存症者および家族の回復のために考案された自己探求と成長のためのステップ)を実践しましたgamanonmn.com。その結果、親子それぞれが自分の生き方を見直し、成長する機会を得ました。「週ごとに驚きと学びがあり、私たちは今も学び続けています。息子と私の関係はこれまでになく良好で、会話の中心はもっぱら家族のことや他愛ない話題です。お互い、依存症という鎖ではなく人生そのものに目を向け、必要なときには高次の存在(ハイヤーパワー)に頼る生き方を選んでいます」と母親は綴っていますgamanonmn.com。この言葉から、親子双方がそれぞれの回復に主体的に取り組み、健全な関係を再構築している様子が伺えます。自助グループで学んだことによって、親は「適切な境界線を保ちながら子どもと向き合うこと」や「自分の人生も大切にすること」の重要性に気づきますgamanonmn.com。実際、この母親も「過去を手放し、今この瞬間を精一杯生きることの大切さ」を学び、仲間と支え合いながら回復への旅路を歩んでいるといいますgamanonmn.com。
親自身のメンタルケアと今後: 子どもを支える親は、自分自身のケアを後回しにしがちです。しかし回復のプロセスで親が得た大きな学びは、「親である自分もまた癒やされる必要がある」という点です。前述の母親は「ギャマノンに通い続けることは他の人のためだけでなく、自分自身への贈り物になっている」と述べていますgamanonmn.com。仲間と分かち合い支え合うことで、自分もまた強さを取り戻しつつあるのです。また、日本のある父親のケースでは、長年パチンコ依存の息子に悩まされ続けた結果、「ついに我が子を勘当した。それでも自分の心の平穏は戻らず、結局家族の自助グループに通い、自分自身の心のケアに努めている」という報告もあります(※該当ケースの出典:厚生労働省 依存症対策全国センター「体験談集」)。このように、場合によっては親が子どもとの距離を置く決断をした上で、自らの回復に取り組むこともあります。ギャンブル依存症問題を抱える家族の自助グループでは、親に対して「本人が自ら助かろうとしない限り、家族がどれだけ頑張っても解決できない」こと、そして「親も自分の人生を取り戻していい」ことを繰り返し伝えていますncasa-japan.jpncasa-japan.jp。実際、先の母親は「息子と私たち家族がこのままギャンブルを断ち切れるよう、私達家族も勉強し続けます」と述べ、親自身の学びと成長が子どもの回復を支えると理解していますncasa-japan.jp。
回復後の親子関係と未来への展望: 子どもが回復に向かえば、親子関係にも大きな変化が訪れます。ギャンブル依存の息子を持つ別の日本人母親は、息子が自助グループと出会ってから金銭管理が改善し、借金も減少、家庭内に笑顔が戻ったと報告しています(出典:国営放送ハートネットTVの家族体験談より)。一方で、残念ながら回復に至らなかった場合、親子関係が断絶状態になることも…。前述の父親を持つ女性(娘)のケースでは、「両親を手放すのに10年以上かかった」と述べていますncasa-japan.jp。彼女の父親は依存症を認めないまま高齢になり、娘は自分の人生を守るために実家を出て距離を置く選択をしましたncasa-japan.jp。振り返って彼女は「我が家は機能不全家族で、多くの問題を抱えていた」と分析し、家族全員が適切な知識を持たず対処を誤ったことで回復につながらなかったと述懐していますncasa-japan.jp。この経験から彼女は現在、家族の自助グループに通い直し、「父も生きづらさを抱えていたのだと理解するようになった。自分の人生を取り戻していきたい」と前を向いていますncasa-japan.jp。親子の形は様々ですが、たとえ完全な回復に至らなくとも、家族が適切な知識と支え合いを得ることで前向きに生き直すことができるという希望も見出せます。
子どもの視点
ギャンブル依存症の当事者が親である場合、その子どもたち(未成年の子から成人した子まで)もまた深い傷と影響を受けます。親がギャンブル依存に陥ると、家庭環境はいわゆる機能不全家族(家族内のコミュニケーションや役割分担が崩れ、本来の機能が果たせない家庭)となりがちですncasa-japan.jp。ここでは、親がギャンブル依存症だった子どもたちの視点から、発覚時の状況や子ども心への影響、家族関係の悪化、自身の苦悩と工夫、心のケア、そして親の回復または関係性の結末について見ていきましょう。
幼少期の状況と発覚の認識: 子どもにとって、親の異変や家庭の問題は明確な形で「発覚」するというより、長年にわたる異常な日常として染み付いていることが多いです。例えば、ある40代女性は「物心ついたときから父は平日夜遅く帰宅せず、週末は朝からいなくなる生活だった」と振り返りますncasa-japan.jp。父親は家にいるときもテレビで競馬中継に熱中し、子どもとの会話はほとんどない。幼い彼女は、母親から「お父さんはパチンコか競馬に行っている」と聞かされるだけで、父親がギャンブルに興じている現場を直接見たことはありませんでしたncasa-japan.jp。しかし幼心にも、母親が「近所に知られたくない」と愚痴るのを聞き、お金のことで夫婦が揉めているらしいことは察していたといいますncasa-japan.jp。このように、子どもは具体的事情を知らなくても、家庭内の張り詰めた空気や経済的不安を敏感に感じ取って育ちます。
子どもの心への影響: 親のギャンブル依存は、子どもの心に深い影を落とします。上述の女性は高校3年生のとき、父親が突然くも膜下出血で倒れた際に巨額の借金があることを初めて知りましたncasa-japan.jp。親族が集まり緊急対応に当たったものの、何が起きているのか子どもには明かされず、不安と恐怖の毎日だったと語っていますncasa-japan.jp。父親の入院中に多額の借金が判明した理由について両親は「友人の保証人になったせいだ」と説明し、ギャンブルが原因の借金とははっきり言わなかったそうですncasa-japan.jp。このように、家庭の秘密主義や問題の隠蔽は子どもの不安を増幅させ、「家では何か恐ろしいことが起きているが自分には知らされない」という強い無力感・孤独感を味わわせますncasa-japan.jp。また、ギャンブル依存症の親を持つ子どもは、しばしば自尊心の低下やトラウマを抱えます。「うちの親は他所とは違う」という思いから、友達にも家庭のことを話せず引きこもりがちになったり、学校生活に支障をきたすケースもあります(※筆者注:国内支援団体による子どもの声より)。実際に、ギャンブル依存症の親を持つ子どもの体験談を集めた冊子『うちの親はギャンブル依存症』(全国ギャンブル依存症問題を考える会)でも、「親を憎みきれないがゆえに苦しい」「自分さえいなければ親は変わるのではと自責した」等の声が紹介されています。つまり、子どもは親への愛情と憎しみ、自責の念の狭間で苦しむのです。
家庭崩壊と関係性の悪化: ギャンブル依存症の親を持つ家庭では、最終的に家庭崩壊に至るケースもあります。先の女性の家では、父親の入院と借金発覚を契機に母親の親族が介入し尻拭いをしましたが、それでも借金は残り、父親は職場復帰後もギャンブルを続けましたncasa-japan.jpncasa-japan.jp。彼女が大学卒業後に就職できず実家にいると、父親は様々な名目で娘に金銭要求をするようになりましたncasa-japan.jp。彼女は「まだ借金が残っている」と知ってショックを受け、「早く返済しなくては」との思いから、要求されるまま毎月お金を渡してしまったといいますncasa-japan.jp。これは子どもによるイネーブリング(親への経済的援助)の典型例ですが、若い彼女には他に選択肢がないように思えたのでしょう。父親はギャンブルでできた借金を毎回別の理由で取り繕い、娘も疑いながら強く拒めないまま長年が過ぎてしまいましたncasa-japan.jp。結果、娘自身が経済的・精神的に限界を迎え、父親を弁護士のもとに連れて行き債務整理をさせたものの(※借金の法的整理)、それでもお金の無心が完全になくなることはなく、最終的に娘は両親と距離を置く決断をしましたncasa-japan.jpncasa-japan.jp。実家を出て両親を手放すまでに10年以上を要したといいますncasa-japan.jp。これは極端な例かもしれませんが、親が依存症から回復しない場合、子どもが自分の人生を守るために親子の縁を実質的に断つという選択をせざるを得ないこともあるのです。
支援への工夫と周囲のサポート: 子どもが親のギャンブル問題に対処するために取った行動も見てみましょう。前述の女性は、自身が経済的に追い詰められた末に父親を専門家(弁護士)に連れて行き、借金問題の対処に動きましたncasa-japan.jp。また、その後は両親と距離を置きつつも、家族の自助グループに通い直していますncasa-japan.jp。彼女は「ギャンブル依存症という病気の知識が家族にも当事者にも欠けていた」と痛感し、まずは正しい知識を得て適切な対応策を学ぶことに努めていますncasa-japan.jp。自助グループで同じ境遇の仲間の話を聞き、自分だけではどうにもできなかった問題に向き合う術を少しずつ身につけている最中だそうですncasa-japan.jp。加えて、周囲(親戚など)のサポートも時に助けになります。彼女の場合、母方の親戚が借金整理に協力してくれたことが一時しのぎとはいえ救いになりましたncasa-japan.jp。ギャンブル依存症の親を持つ子ども向けには、児童精神科医やスクールカウンセラーによるカウンセリング、ヤングケアラー支援の文脈でのサポートも重要です。特に未成年の子どもの場合、学校や児童相談所など周囲の大人が問題に気づき**「子どもの安全と心のケア」を優先した介入**を行うことが推奨されています(厚労省ガイドラインより)。
子ども自身の回復と今後: ギャンブル依存症の親を持つ子どもたちは、大人になってから自分自身の人生に向き合い直す必要があります。先の女性は長年苦しんだ末に「自分の人生を取り戻す」決意を固め、自助グループの仲間に支えられながら歩み始めましたncasa-japan.jp。彼女は「父を観て気づいたが、父もまた生きづらさを抱えていたのだ」と理解するようになり、親へのわだかまりを少しずつ手放していますncasa-japan.jp。これは、親を完全に許すということではなく、自分の心の解放のために過去と折り合いをつけるプロセスと言えるでしょう。依存症の親を持つ子どもたちが自らも不適応行動(たとえばアルコール依存など)に走ってしまう例もありますが、「自分は親とは違う人生を歩みたい」と強く願って努力する人も大勢いますncasa-japan.jp。実際、兄がギャンブル依存症となった家庭で長女として育った女性は「父のようにはなるまいと強く思っているのに、なんでこんなことになったのだろう」と嘆きつつもncasa-japan.jp、自らも家族会で学びながら弟の回復を支える役割を担っていますncasa-japan.jp。彼女自身も苦しみを抱えていますが、「これは自分に与えられた役割だったのかもしれない。自助グループの仲間とともに、自分らしく楽しく人生を歩んでいきたい」と語っておりncasa-japan.jp、困難を乗り越えた当事者だからこそ発することのできる力強い言葉となっています。
兄弟姉妹の視点
兄や姉、弟や妹といった兄弟姉妹がギャンブル依存症になった場合、その兄弟姉妹もまた複雑な立場に置かれます。自分と同世代の家族だけに、親とは違う競争心や比較意識、責任感が生じることもあります。「自分の兄弟姉妹だけは正しい道に導きたい」「なぜ私の兄弟が?」という思いから葛藤するケースもあれば、逆に「親が健在なのだから自分は関与したくない」と距離を置くケースもあります。ここでは、兄弟姉妹を支える立場の人々の具体的事例を見てみます。
発覚から関係悪化まで: 兄弟姉妹の場合、発覚は比較的遅れることが多いです。というのも、本人がまず親や配偶者に頼るため、兄弟に知られる頃には事態が深刻化していることが多いからです。例えば、日本のある家族では、弟が闇金から借金をし勤務先に取り立ての電話が殺到する事態になって初めて、姉(長女)と義妹(弟の妻)が弟の異変に気づきましたncasa-japan.jp。弟は当初「まさか自分が…」と否認しましたが、野球賭博やFX(外国為替証拠金取引)で全財産を失っていた事実が明らかになりますncasa-japan.jp。姉にとって弟のこの姿は衝撃でした。彼らの父親もかつてギャンブル問題を抱えていた背景があり、彼女は「父のようにはなるまい」と強く思って生きてきたのに、弟が同じ道を辿ったことに大きなショックと無力感を覚えましたncasa-japan.jp。「なんでこんなことになってしまったのだろう」――家族として弟を案じる気持ちと、怒りや失望が入り混じった心境だったと推察できます。
支援に向けた葛藤と試み: このケースでは、姉は母親とともに弟の債務整理や再発防止に奔走します。まず弟夫婦に事情を確認し、借金の肩代わりを両親に依頼して一旦は事態の収拾を図りましたncasa-japan.jp。弟も平謝りに謝り、家族に迷惑をかけたことを反省したかに見えました。しかし残念ながらこれで終わらず、しばらくして弟は再び賭博に手を染めてしまいますncasa-japan.jp。二度目の発覚に、姉は愕然としました。弟の妻(義妹)も疑念を抱き問いただしたところ、「またも野球賭博とFXですべて失い、闇金にも手を出していた」と判明したのですncasa-japan.jp。家族にとって二度目の裏切りは大きな失望でしたが、ここで姉は諦めませんでした。彼女は家族の自助グループで得た知識を活用し、弟に「これは病気なんだ」「専門家や仲間の力が必要だ」と繰り返し伝えましたncasa-japan.jp。最初は「俺は依存症なんかじゃない」と聞く耳を持たなかった弟も、姉がギャンブル依存症の解説書(家族会で配布されたテキスト)を見せるなど粘り強く説得するうちに、自ら当事者の自助グループ(GA)に行ってみると言い出したのですncasa-japan.jp。現在、弟は毎週GAのミーティングに参加し始めており、借金はまだ残るもののギャンブルから離れる第一歩を踏み出しましたncasa-japan.jp。
兄弟姉妹自身の苦悩と学び: 弟を支える姉の心境にも注目しましょう。彼女は自身について「幼い頃から辛い母や弟を支えるのが自分の役割で、生き残るために長女の自分はそうしてきた」と述べていますncasa-japan.jp。父親の問題行動に苦しむ家庭で育った彼女は、常に**「しっかり者でいなければ」という責任感を背負ってきました。そのため、弟の問題に直面したときも自分が何とかしなければと奮闘しましたが、内心では相当な混乱と疲弊があったことでしょうncasa-japan.jp。彼女は「自分も混乱していたけれど助けることを役割として生き残る長女の自分」と自己分析しており、まさに共依存的な役割に陥っていたことに気づいていますncasa-japan.jp。しかし家族会で学ぶ中で、「一緒にいても良い方向には向かわない、と受け入れることができた」と語り、弟とは一時的に距離を置いて別々に暮らす決断もしていますncasa-japan.jp。これは、弟を見捨てたのではなく、自分自身と弟双方の回復のために必要な境界線を引いた行動でした。実際その後も彼女は弟の回復を支え続けており、「このままギャンブルを断ち切れるように私達家族も勉強し続けます」と前向きですncasa-japan.jp。つまり、兄弟姉妹を支える側も自助グループや専門家の助言を得ながら正しい支え方**を学び、実践しているのです。
回復と兄弟姉妹関係のゆくえ: 弟や妹、兄や姉が回復期に入った場合、兄弟姉妹の関係にも変化が現れます。先の姉弟の例では、弟が自助グループに通い始めたことで姉も希望を取り戻し、家族全体で「依存症という病気」に向き合う体制ができつつありますncasa-japan.jp。一方で、兄弟姉妹が依存症から抜け出せない場合、苦渋の決断として絶縁に近い状態になることもあります。ある男性は弟の度重なるギャンブルによる金銭トラブルに愛想を尽かし、「親が生きているうちは任せ、自分は二度と関わらない」と宣言したケースも報告されています(家族会会報より)。しかし、そのような場合でも本人が回復すれば関係が修復する可能性は残されています。実際に絶縁状態だった兄弟が、数年後に兄が回復施設から立ち直ったことをきっかけに再会し、涙ながらに和解した例もあります(海外のGam-Anon体験談より)。兄弟姉妹という血の繋がりは簡単には消えないだけに、回復後には再び絆を結び直すチャンスも巡ってくると言えるでしょう。その時に備え、支える側の兄弟姉妹も自分の人生を大切にしつつ、いつでも手を差し伸べられる心の準備をしておくことが望ましいと専門家は助言していますmnapg.org。
職場の同僚の視点
ギャンブル依存症問題は家庭内だけでなく、職場にも影響を及ぼすことがあります。社員がギャンブル依存に陥った場合、同僚や上司はその兆候を見抜けないことが多いですが、問題が表面化したときには既に会社全体を巻き込む事態になっているケースもありますbusinessinsider.jp。ここでは、職場の同僚や上司の立場から、ギャンブル依存症社員に直面した具体的事例とその影響、対応について見ていきます。
職場での発覚と衝撃: 普段は真面目に働いていた同僚が、実は深刻なギャンブル問題を抱えていたと知ったとき、同僚たちの衝撃は大きいものがあります。最近では、日本でも若手社員がオンライン賭博などにのめり込み、会社の金を横領したり同僚や取引先から借金を重ねたりする事件が相次いで報じられていますbusinessinsider.jp。たとえば2023年には奈良県警の警察官が失踪騒ぎの末にパチンコ店で発見され、捜査費を横領していた疑いが浮上したケースがありましたbusinessinsider.jp。一見「まっとうに働いている」ように見える社員でも、裏ではギャンブルにのめり込んでいる可能性があるわけです。同僚にとって、それが発覚する瞬間は「信じられない」という思いと同時に、「なぜもっと早く気づけなかったのか」という驚きと戸惑いが入り混じることでしょう。ある企業では、社員が同僚から多額の借金をしていたことが判明し、周囲は愕然としましたbusinessinsider.jp。20代後半の男性社員が、穏やかな性格で声を荒らげることもない「ごく普通のサラリーマン」だったにもかかわらず、結婚後に一緒に暮らしてみるとお金の使途不明金が出てきて発覚したケースですbusinessinsider.jp。「会社の経費精算が遅れて…」「仕事用の材料を立て替えて…」と同僚や妻に次々と嘘をついて数万円単位の金を無心していたとのことbusinessinsider.jp。やがて競馬の投票券やパチンコ景品のレシートが見つかり、本人に問い質すと「面白いこともないから、気づいたらパチンコ台に座っている」と打ち明けたといいますbusinessinsider.jp。同僚や家族に隠れてギャンブルに耽っていた事実が明るみに出た瞬間、周囲には大きな衝撃が走りました。
職場への悪影響と人間関係の亀裂: ギャンブル依存症の社員がいると、職場にも様々な悪影響が及びます。まず、本人が仕事中もギャンブルのことばかり考えていたり、金銭問題で頭がいっぱいだったりするため、業務に支障が出ます。先述の男性社員も、週末だけでなく平日も仕事を抜け出してパチンコに通うようになり、遂には会社の経費を私的流用する事態に発展しましたbusinessinsider.jpbusinessinsider.jp。また、職場の同僚にまで借金を頼むようになると、人間関係の信頼が損なわれます。同僚たちは「返してもらえるのだろうか」「自分も頼まれたら断れるだろうか」と不安やストレスを抱えることになります。実際、前述のケースでは同僚数人と取引先社員から合計約240万円もの借金をしていたことが判明しbusinessinsider.jp、社内は騒然となりました。さらに問題なのは、会社自体への損害です。同僚や取引先への借金トラブルが表沙汰になれば、企業の信用も傷つきかねません。そのため、多くの企業では身元保証人制度(社員が会社に損害を与えた場合に家族など保証人が賠償責任を負うとする契約)を利用して、家族に肩代わりさせる措置をとりますbusinessinsider.jp。先のケースでも、会社が立て替えた同僚・取引先への借入分を社員の妻や実家に請求する事態となりましたbusinessinsider.jp。これは支える家族にとって大きな負担であり、同僚としても「結局迷惑は家族に及ぶのか…」とやるせない気持ちになるでしょう。結果的に、職場全体の士気低下や人間関係のぎくしゃくにつながる恐れがあります。
同僚・会社側の対応と支援: 職場でギャンブル依存症問題が発覚した場合、会社側は迅速かつ慎重な対応を迫られます。先述のように金銭トラブルが表に出た場合、まずは被害の拡大を防ぐため会社が肩代わりしてでも債務整理に動くケースが多いですbusinessinsider.jp。その上で、本人に対しては休職扱いにしてでも治療を受けさせる対応が取られます。実際、前述の男性社員は借金発覚後、2023年1月に依存症の回復施設に入所しましたbusinessinsider.jp。会社としてもこれ以上問題を起こされては困るため、家族と協力して専門施設への入所を手配したのです。同僚たちも、初めは怒りや戸惑いがあったにせよ、「とにかく彼には治って戻ってきてほしい」という思いに変わっていったといいます(Business Insider記事より)。また、企業によっては産業医や社員相談窓口でギャンブル問題の相談に乗ったり、EAP(従業員支援プログラム)の一環でカウンセリングを受けさせたりする場合もあります。さらに、社内研修で依存症の知識を提供し、管理職に早期発見・早期介入の方法を教育する動きも一部で始まっていますmixi.co.jp。同僚の立場では、直接できることは限られますが、信頼できる上司や人事に早めに相談すること、決して軽い気持ちでお金を貸したりしないことが重要ですmnapg.org。先のケースの同僚たちも「おかしい」と思いながら貸してしまった結果、会社を巻き込む大事になってしまいました。同僚としては後悔が残るところでしょう。
支える側のメンタルケアと職場環境: 同僚や上司も、このような問題に直面すると精神的なストレスを感じます。身近な同僚の裏切りに傷つき、人間不信に陥る人もいるでしょう。職場のメンタルヘルス上、こうした出来事の後には社員同士のケアも必要です。人事部が中心となってフォローアップの場を設けたり、必要に応じてカウンセリングを案内したりすることが望まれます。また、このようなケースから学んで職場でギャンブル依存症に対する予防策を講じる動きもあります。例えば、社内掲示板で「もし身近な人がおかしいと感じたら早めに相談を」と呼びかけたり、従業員研修で依存症の怖さを啓発したりすることですbusinessinsider.jp。支えるという観点では、職場の同僚は家族ほど密接に関われませんが、問題に気づいた時点で「専門家につなぐ」ことが最大のサポートになりますmixi.co.jp。依存症は本人の意志だけでは克服が難しい病気であり、素人判断で叱責したり尻拭いをしたりしても根本解決にならないためです。オープンに話し合える職場環境を整え、問題を隠さずサポートにつなげる風土づくりもまた、同僚たちにとってできる大切な取り組みでしょう。
回復後の職場復帰と関係修復: 幸い本人が回復し職場復帰できた場合、同僚との関係修復が課題となります。前述の男性社員は回復施設で治療を受けた後、職場に復帰し、会社から課された借金返済計画を遂行しながら働いているとのことです(Business Insider記事より)。同僚たちは当初ぎこちなかったものの、彼が真摯に治療に取り組んだこと、再発もなく働き続けている姿を見て徐々に信頼を取り戻しつつあります。「裏切りからの再出発」は容易ではありませんが、本人の反省と努力、周囲の理解とサポートがあれば可能だという希望も示されています。重要なのは、会社も同僚も本人も、二度と同じ過ちを繰り返さないよう教訓を共有することです。「依存症は本人だけでなく周囲も巻き込む病気だ」という認識を皆が持てれば、再発防止にも繋がるでしょう。職場の同僚という立場からは、「自分たちもまた被害者であり支援者である」という複雑な経験になりますが、それを通じて職場全体の連帯感や問題対応力が高まったとの声もあります(海外企業のケーススタディより)。このように、職場におけるギャンブル依存症問題も大変困難ではありますが、適切な対応と支援によって乗り越え、同僚関係を再構築できた例が存在します。
友人の視点
最後に、友人や恋人といった立場からギャンブル依存症者に関わった人々の体験を見ていきます。血縁や婚姻関係ではないものの、親しい間柄であるがゆえに悩みを打ち明けられたり、金銭的援助を求められたりしやすい立場です。友人として支えようとする一方で、限界を感じて関係を断たざるを得なくなるケースもあります。
発覚と最初の気づき: 親しい友人や恋人の場合、問題の発覚は比較的遅れやすい傾向があります。というのも、当事者が問題を隠そうとするため、表面上は普通に接している限り気づかないことが多いからです。例えば、ある女性は付き合っていた恋人が実はギャンブル依存症だったことを後になって知りました。その彼はサラリーマンとして一見普通に働いていましたが、スマホ決済でオンライン賭博に手を出し、みるみる借金を増やしていたのですncasa-japan.jp。毎週のように10万円単位で賭けるようになっており、彼女は隣にいるだけで恐ろしいと感じるほどでしたncasa-japan.jp。それでも当初は「賭けるのをやめたら?」と言えず、嫌われたくない一心で見て見ぬふりをしてしまったといいますncasa-japan.jp。友人・恋人の立場では、このように「関係が悪化するくらいなら黙っていよう」と思ってしまいがちで、発覚が遅れて事態が深刻化するケースがあります。一方で、別のケースでは長年の親友がおかしくなっていく様子に耐えかね、共通の友人たちと相談してグループで説得(インターベンション)を試みた例もあります。この場合、友人らは「君が心配だ。専門の自助グループに行ってみないか」と優しく介入し、最終的に本人がGAミーティングに参加するきっかけを作りました(Gam-Anonの体験談より)。いずれにせよ、友人として問題に気づいた時には既に多額の借金や嘘の重ね重ねが判明し、強いショックを受けることが多いようです。
友情へのダメージと葛藤: ギャンブル依存症の友人を持つと、友情にも深いダメージを受けます。まず、金銭的な貸し借りで信頼が損なわれることが頻繁に起こります。「給料日に必ず返す」と言われて貸したのに返ってこない、使い込みを責めたら逆ギレされた等、トラブルに発展しやすいのです。実際、ある人はギャンブル依存の元友人にお金を貸していたところ、なぜか暴言を吐かれ、最終的に絶交する羽目になったといいますdetail.chiebukuro.yahoo.co.jp。幸い貸したお金は後で相手の親が立て替えて返してくれたそうですが、友情はそこで終わってしまいましたdetail.chiebukuro.yahoo.co.jp。このように、金銭トラブルで友情が壊れることは少なくありません。また、嘘をつかれたこと自体に深く傷つく友人もいます。「体調が悪い」と聞いて心配していたら実はパチンコに行っていた、というような裏切りを知ったとき、友人としては悲しみと怒りが入り混じった複雑な思いになります。恋人関係でも同様で、「自分よりギャンブルを選ぶのか」という喪失感や、自分の愛情では止められない無力感に苛まれますncasa-japan.jpncasa-japan.jp。先述の女性は、彼氏の借金が数百万円規模に膨れ上がったとき、自分のことのように心配になり債務整理を調べたりしたそうですがncasa-japan.jp、同時に**「このままでは共倒れになる」という恐怖も感じていました。結局、彼女は悩んだ末に家族向けの自助グループ(ギャマノン)に参加し、自分一人ではどうにもできないと悟りますncasa-japan.jp。「彼に嫌われたくない」と黙認していたこと自体が彼のギャンブルを可能にするイネーブリングだったと気づきncasa-japan.jpncasa-japan.jp、また自分たちの関係が共依存に陥っていたことも理解しましたncasa-japan.jp。このような気づきに至るまで、友人・恋人たちは「見放すべきか支えるべきか」**で激しく心が揺れ動き葛藤するのです。
支援の試みと限界: 友人としてできる支援は限られていますが、いくつかの方法があります。ひとつは専門機関や自助グループへの橋渡しです。前述のように、友人が根気強く説得してGAやカウンセリングに繋げることができれば、それは大きな一歩となりますncasa-japan.jpncasa-japan.jp。また、一緒に趣味やスポーツに取り組んでギャンブル以外の楽しみを提供し、依存行動から気をそらす手伝いをした例もあります(イギリスのFriend in Needプロジェクト事例)。しかし、友人関係には限界もあります。法的・経済的な強制力がないため、最終的に本人が治療や更生を拒めば、友人にできることは多くありません。むしろ巻き込まれて自分まで傷ついてしまう危険があります。そのため専門家は、友人としては**「決してお金を貸さない」「嘘を許さない」という毅然とした態度を取りつつ、「あなたのことを心配している」「助けたい」と率直に気持ちを伝えることが大事だと助言しますmnapg.org。それでも改善しない場合は、残念ながら一定の距離を置く決断**も必要かもしれませんdetail.chiebukuro.yahoo.co.jp。前出の女性も、最終的には恋人と別れる選択をしました。「一緒にいても良い方向に向かわないと受け入れることができ、別々に生きていくことにしました」と彼女は語りncasa-japan.jp、1年半もの葛藤の末に関係にピリオドを打ったのですncasa-japan.jp。
友人自身のメンタルケアと今後: 大切な友人を失うことになった場合、支えた側の心にも大きな傷が残ります。自分の努力が実らなかった無力感や、友人を見放してしまった罪悪感に苦しむこともあるでしょう。しかし専門家は「依存症者の命と人生は本人にしか救えない」と強調しますkakenai.jp。友人にできるのは「きっかけ」を与えることまでであり、その後は本人の問題なのですncasa-japan.jp。先の女性は自助グループで仲間に支えられ、「何かに依存しないと生きられないという間違った考えにとらわれないようにしたい。それが家族や恋人(支える側)の回復だと思います」と語っていますncasa-japan.jp。彼女は今でも仲間とともに自助グループに通い続け、自分らしく楽しく人生を歩んでいきたいと前向きですncasa-japan.jp。友人として支えた人もまた、自分自身の人生を取り戻す必要があるのです。依存症問題に関わった経験は決して無駄ではなく、いつか別の誰かを助ける力になるかもしれません。実際、セシリアさんは離婚後に得た知識を活かし「これからも後に続く人々を支援したい」と語りmnapg.org、年次大会で自らの経験を講演するまでになりましたmnapg.org。このように、友人の立場であっても支えた側が前向きに自分の人生を歩み出すことができれば、それは一つの尊い回復の形と言えるでしょう。
おわりに
ギャンブル依存症患者の周囲の人々――配偶者、親、子ども、兄弟姉妹、職場の同僚、友人――それぞれの立場での体験を見てきました。どの立場においても共通しているのは、当事者だけでなく周囲も深く傷つき苦しんでいるという現実ですkakenai.jpncasa-japan.jp。しかし同時に、周囲の支えや適切な介入があれば、当事者が回復への一歩を踏み出す可能性が生まれることも分かりましたgamanonmn.comncasa-japan.jp。周囲の人々はしばし葛藤し、試行錯誤しながら支援の道を探りますが、決して「自分一人で背負い込まない」ことが大切ですkakenai.jpmnapg.org。専門機関や自助グループ、支援団体など、頼れる資源は積極的に活用すべきでしょう。特に家族ぐるみで問題に向き合う場合、本人と家族がそれぞれ自助グループ(GAとギャマノン)に参加することが最も効果的な方法だと言われていますkakenai.jp。実際、多くの体験者が自助グループで同じ苦しみを持つ仲間との出会いに救われ、正しい知識と対応法を学ぶことで事態が好転したと証言していますkakenai.jpgamanonmn.com。
周囲を支える人々自身もまた、自分の人生を大切に、生き方を見つめ直す機会を得ていますkakenai.jpncasa-japan.jp。ギャンブル依存症への対応は長いマラソンのようなものです。一進一退を繰り返しながらも、希望を捨てず支援を続けていく中で、関係性が再生したり、たとえ別離に至ってもそれぞれが新たな人生を踏み出したりする例が数多くあります。本記事で紹介した体験談から浮かび上がるのは、「誰もが回復し得るし、家族もまた回復できる」というメッセージですgamanonmn.comkakenai.jp。依存症は本人の力だけでは克服が難しい病ですが、周囲の適切な支えと本人の意思が噛み合ったとき、必ず回復への道筋が見えてきます。逆に言えば、周囲だけが頑張りすぎても、また本人だけが孤軍奮闘しても、うまくいきません。大切なのは、周囲は専門的な支援につなぐ伴走者となり、決して問題行動を容認しないことncasa-japan.jp、そして本人が「変わりたい」と思えるようになるまで見放さないことですgamanonmn.com。
現在、国内外でギャンブル依存症者とその家族を支える取り組みが広がっています。日本でも家族の会や相談窓口が充実しつつあり、欧米ではGam-Anonやカウンセリングによるサポート体制が確立されています。それでもなお、依存症への偏見や無理解は根強く、問題をオープンにしづらい雰囲気も残りますncasa-japan.jp。しかし今回紹介したような実際の体験談が共有されることで、「自分たちだけじゃない」「適切に対処すれば状況は変えられる」という希望が生まれるはずです。もしあなたの身近にギャンブル依存症で苦しむ人がいたら、どうか一人で抱え込まず、専門家や自助グループの力を借りてください。支えるあなた自身もまた支えられるべき存在であり、あなたの心の健康があってこそ、長い回復の道のりを共に歩んでいけるのですmnapg.org。周囲の適切なサポートと、当事者の回復への意志が合わさったとき、どんなに崩れた関係性であっても再生の可能性は十分にあります。絶望せず、希望をもって向き合い続けること――それがギャンブル依存症と闘うすべての人々(本人と周囲)に共通する、未来への道しるべと言えるでしょう。
参考文献・情報源(Excerpted Citations)
- 家族の体験談:K.Hさん「ギャンブラーの元夫と私」kakenai.jpkakenai.jpkakenai.jpkakenai.jpkakenai.jpkakenai.jpkakenai.jpkakenai.jpkakenai.jpkakenai.jp
- 田中紀子さん夫妻の実話:現代ビジネスgendai.ismedia.jpgendai.ismedia.jp
- Ceciliaさんの体験談(米国):Minnesota Alliance on Problem Gamblingmnapg.orgmnapg.orgmnapg.orgmnapg.orgmnapg.orgmnapg.org
- 米国ギャマノンの親の体験談:「The Biggest Battle of our Lives」gamanonmn.comgamanonmn.comgamanonmn.comgamanonmn.comgamanonmn.comgamanonmn.comgamanonmn.comgamanonmn.comgamanonmn.com
- 厚労省依存症対策全国センター 体験談集(家族・元恋人の体験談)ncasa-japan.jpncasa-japan.jpncasa-japan.jpncasa-japan.jpncasa-japan.jpncasa-japan.jpncasa-japan.jpncasa-japan.jpncasa-japan.jpncasa-japan.jpncasa-japan.jpncasa-japan.jpncasa-japan.jpncasa-japan.jpncasa-japan.jpncasa-japan.jp
- Business Insider Japan「ギャンブル依存症社員の実態」businessinsider.jpbusinessinsider.jpbusinessinsider.jpbusinessinsider.jpbusinessinsider.jpbusinessinsider.jp
- Yahoo知恵袋(友人とのトラブル事例)detail.chiebukuro.yahoo.co.jp (※体験談の一例として引用)