ギャンブル依存症のご主人を持ち、離婚すべきか悩んでいる方へ。自分や子どもの将来を考えると、このまま結婚生活を続けて良いのか、不安で胸が締め付けられる思いでしょう。実は「浪費・ギャンブル」が原因で離婚に至る夫婦は全体の約3割にも上るとされ、決して珍しい問題ではありません¹。とはいえ、決断は容易ではなく、愛する配偶者を見放す罪悪感や、片親になることへのためらいもあるでしょう。この記事では法律的な判断ポイントと心理的なケアの両面から、後悔の少ない選択をするためのヒントをお伝えします。専門家の知見とともに、同じ悩みを抱える一人の相談者に語りかけるつもりでまとめました。どうかあなた自身とお子さんの幸せを第一に、最善の道を選ぶ一助になれば幸いです。
ギャンブル依存症は「病気」-まずは正しい理解を
はじめに強調しておきたいのは、ギャンブル依存症は本人の意思の弱さではなく「病気」であるということです。パチンコ・競馬・オンラインカジノ等にのめり込み、自分ではやめたいと思っても制御できなくなる精神疾患の一種だと専門家も定義しています²。ご主人自身、「もうやめる」と誓っても脳が快感を求めて抑えられない状態であり、意志力だけで簡単に治るものではありません。
こうした医学的事実を知ると、「病気の夫を見捨てるなんて…」と離婚への迷いが一層深まるかもしれません。法律上も、夫婦には互いに協力し扶助する義務があるため、軽度のギャンブル依存症であればすぐに離婚を認めない傾向があります(裁判になった場合)。実際、「ギャンブル依存症という病気の配偶者を一方的に見捨てるのは許されない」という判例的な考え方もあるのです。したがって、ご主人の症状がまだ軽く、本人に回復の意志がある場合は、いきなり離婚を決断せず治療を支える選択肢も検討すべきでしょう。専門の依存症治療病院への受診やカウンセリングを勧め、できる限りのサポートを試みる価値はあります。実際、話し合いや専門治療で立ち直る可能性があるケースでは、しばらく様子を見て夫婦関係の修復を目指すことも推奨されています。
しかし、症状が重度で家庭生活に深刻な悪影響が及んでいる場合や、本人に改善の意思が全くない場合には、あなたとお子さんの人生を守るため離婚を選択するのもやむを得ないでしょう。
法律上の判断ポイント①:離婚理由と法的手続き
ギャンブル依存は離婚理由になる? – 合意離婚と裁判離婚
結論から言えば、配偶者のギャンブル依存症は離婚理由になり得ます。まず話し合いによる協議離婚であれば、双方合意さえすれば理由を問わず離婚可能です。あなたが離婚を切り出し、ご主人も納得してくれれば、役所に離婚届を提出するだけで成立します。
問題はご主人が離婚を拒否した場合です。この場合は家庭裁判所での調停や裁判による離婚手続きが必要となり、法律上定められた離婚原因(法定離婚事由)に該当するかが問われます。日本の民法では不貞や悪意の遺棄など明確な5つの離婚事由がありますが、ギャンブル依存はそれ自体が明文化された事由ではありません。ただし「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するとして認められるケースがあります。
具体的には、浪費癖による家計の破綻、生活費を渡さない・家庭を顧みない(悪意の遺棄)、さらには借金や金銭トラブルから暴力沙汰に発展した等、ギャンブル依存に起因する行為が夫婦関係の破綻を客観的に示せれば、裁判でも離婚が認められる可能性が高いです。実際、「ギャンブルで家庭を顧みない」「借金で生活が成り立たない」ことは離婚理由として珍しくなく、裁判所も夫婦関係の破綻と判断しうるでしょう。
一方、ご主人の依存症が比較的軽く回復の見込みがある段階では、裁判所が「まだ改善の可能性があるのでは?」と慎重になる場合もあります。「病気の配偶者を支える努力を尽くしたか」という点も問われるため、調停段階では「治療に協力したが効果がなく、婚姻関係が破綻した」ことを冷静に主張する必要があります。
離婚前に確認すべきお金の問題 – 借金の責任と財産分与
ギャンブル依存症の配偶者との離婚で最も気がかりな点の一つが借金の問題でしょう。ご主人が作ったギャンブルによる借金がある場合、それを自分も返済しなければならないのか、不安で夜も眠れないかもしれません。しかしご安心ください。基本的に、ギャンブルが原因でご主人個人が抱えた借金をあなたが支払う義務はありません³。たとえ夫婦でも、浪費やギャンブルのために作った借金は「日常家事の範囲」を超えるものであり、法律上配偶者が連帯して返済する責任は負わないとされています。
ただし例外もあります。以下のようなケースでは、あなたにも返済義務が生じ得るので注意しましょう³。
- 生活費補填のための借金: 家計の不足を補うためにやむを得ず借金をしていた場合(例えば生活必需品の購入や子どもの学費捻出など)、それは夫婦の共同生活の費用とみなされ、日常家事債務として配偶者にも支払い責任が及ぶ可能性があります。
- 連帯保証人・連帯債務者になっている: ご主人の借金の保証人になっていないか確認してください。あなたが連帯保証人の場合、離婚後であっても借金返済義務から逃れることはできません。ご主人が返済を滞れば、保証人であるあなたに請求が来てしまいます。同様に夫婦で共同名義の借入(連帯債務)をしている場合も、離婚後も支払い義務が残ります。
以上の点を踏まえ、離婚を切り出す前にご主人の借金の状況を正確に調べておくことが重要です。消費者金融やカードローンの利用明細、督促状が来ていないか、信用情報に傷が付いていないか等、可能な範囲で把握しましょう。特に知らぬ間に保証人にさせられていないか要チェックです。もし既に保証人になってしまっている場合は、その事実を受け入れつつ、専門家に相談して今後の対応策(債務整理など)を検討する必要があります。
なお、夫婦共有の財産分与については、基本的に借金はマイナスの財産として考慮されないのが通常です。ご主人名義の借金は先述の通り原則本人のみの責任ですから、離婚に際してあなたが財産分与で不利益を被ることは避けられます。ただし、財産分与協議の場でご主人側が借金を理由に「財産を減額してほしい」と主張してくる可能性はありますので、公平な分配となるよう弁護士等を交えて話し合うと安心です。
慰謝料は請求できる? – 認められる場合と相場
ギャンブル依存症そのものは法律上の不法行為ではありませんが、それによって生じた様々な悪質な行為が離婚原因となっている場合、慰謝料を請求できる可能性があります。たとえば以下のようなケースです。
- ご主人がギャンブルに熱中するあまり生活費を渡さず家庭をないがしろにした(民法上の「悪意の遺棄」に該当)
- ギャンブルによる浪費と借金で家庭の経済を破綻させ精神的苦痛を与えた(「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当)
これらが立証できれば、ご主人の行為は離婚原因となるだけでなく夫婦関係破綻についての不法行為とみなされ、あなたは損害賠償(離婚慰謝料)を請求し得ます。実際、過去の裁判例でもギャンブルによる多額の浪費や長期の家庭放棄が不法行為と認定され、慰謝料が命じられたケースがあります。
慰謝料の相場ですが、一般に認められる場合で約50万~300万円とされます⁵。ギャンブル依存が原因の離婚でも、この範囲で判決や示談がまとまることが多いようです。金額はケースバイケースで、家庭への被害の大きさ(借金額や家庭崩壊の程度)、結婚期間、ご主人の収入や資力などによって上下します。例えば生活費を渡さず子どもが十分な教育を受けられなかったような悪質度の高い場合は高額になり得ますし、逆に依存症とはいえ治療に努めていた等の事情があれば減額されることもあります。
注意点: 慰謝料を請求できると決めても、ご主人に支払い能力が無ければ絵に描いた餅になりかねません。ギャンブルで財産を失っていたり多額の借金を抱えていたりすると、裁判で慰謝料支払いを勝ち取っても実際には「払えない」という事態は十分考えられます。また、ご主人が後に自己破産してしまうと、慰謝料債権は基本的に免責されてしまう可能性もあります(※養育費と異なり、慰謝料は免責対象となり得ます)。
法律上の判断ポイント②:子どもへの影響と親権・養育費
子どもの心と暮らしへの影響は深刻
ギャンブル依存症の親を持つ子どもは、想像以上に深い心の傷や生活への悪影響を受けることがあります。例えば、ご主人が給料をギャンブルに使い込んでしまえば生活が不安定になり、子どもは満足な生活用品や教育を与えてもらえないかもしれません。それどころか、「どうしてウチは他の家と違うのだろう」と幼心に自分を責めたり、友達にも家庭の事情を隠して孤独を抱えたりする例も報告されています。実際に、父親がギャンブル依存症だった家庭で育ったある20代女性は「生活が苦しいのが当たり前で、欲しいものも欲しいと言えなかった」と振り返っており、そのストレスから心に深い傷を負ってしまったとのことです。
さらに怖いのは、子どもへの「連鎖」です。同じ女性は成人後、自身も辛い現実から逃れるためにパチンコにのめり込み、「気づけば父と同じようにギャンブルに依存してしまった」と告白しています。専門家によれば、親が依存症だと子どもも将来なんらかの依存に陥るケースは少なくないと言います。親のギャンブルを身近に見て育つことで金銭感覚やストレス対処法が歪み、依存症の世代間連鎖が起こり得るのです。
このように、お子さんがいる場合はギャンブル依存症が家庭に及ぼす影響を特に慎重に考える必要があります。子どもにとっては大好きなお父さんでしょうが、だからこそ現状のままでは子どもの心身が傷つき続け、健やかな成長が妨げられてしまう恐れがあります。もしご主人が子どもに対して暴言を吐いたり、場合によっては虐待的な行為に及んでいるならば、迷わず子どもの安全を優先してください。借金取りから督促が来たり、家庭内が常に不安定な雰囲気で満ちている環境も、子どもの心に深刻なストレスを与えます。
離婚は子どものためにもなるのか?と悩むお気持ちはもっともです。確かに離婚は子にとって大きな変化であり、一時的に寂しさや不安を与えるかもしれません。しかし、だからといってこのまま不安定で辛い家庭環境に子どもを置き続けることが本当に良いのか、冷静に考えてみてください。「ギャンブル依存症の親を持つ子どもの心の負担は非常に大きい」と指摘する専門家もおり、本来子どもらしく安心して過ごせる環境を整えることが何より重要だと訴えています。離婚によって経済状況は変わるとしても、少なくとも借金や家庭内トラブルのない安定した暮らしを提供できるなら、長期的にはお子さんのためになる場合も多いのです。
親権と養育費はどうなる?
離婚となれば、未成年のお子さんがいる場合は親権者をどちらにするか決める必要があります。一般的に、ギャンブル依存症の問題を抱えている親は子育てに支障があると見なされやすく、親権はあなた(依存症でない側の親)に認められる可能性が高いです。家庭裁判所も子の利益最優先で判断するため、浪費や借金で子の生活を脅かす恐れのある親より、経済的・精神的に安定して養育できる親が選ばれる傾向があります。ただしご主人が強く親権を望み争ってくるケースも考えられます。その場合には、ご主人の依存症の程度やそれによる養育環境への悪影響を示す客観的な資料(借金の有無、これまでの養育実績など)を揃えて主張することが必要です。
養育費については、離婚後も親である以上ご主人に支払い義務があります。たとえ借金まみれでも、養育費だけは法律上優先して支払われるべきものとされています。実際「養育費は自己破産しても免責されない非免責債権」であり、ご主人が仮に自己破産手続きをとっても養育費の支払い義務は免除されません。したがって「借金で苦しいから養育費は払えない」といった主張は通らず、支払いは継続される建前です。ただし現実問題として、依存症の夫がきちんと養育費を払い続けてくれるか不安は残りますよね。
面会交流(離婚後に子どもがお父さんと会うこと)については、原則として子どもの福祉のため奨励されるものです。ただしギャンブル依存症の度合いによっては、子どもに会うたびに金銭を無心してきたり、子どもを連れてギャンブル施設に出入りするなど悪影響が懸念される場合も考えられます。そのようなときは面会方法や頻度を制限したり、場合によっては面会自体を一時止めるよう家庭裁判所に申し立てることも可能です。子どもの安全と健全な成長が最優先ですので、面会交流のあり方も含め、専門家と相談しつつ適切に対応しましょう。
離婚を決断するまでに取るべきステップ
上述したように、ギャンブル依存症の配偶者との離婚は法律上可能であり、必要に応じて慰謝料や養育費も請求できます。ただ、実際に離婚を進めるには入念な準備と戦略が欠かせません。衝動的に「もう離婚よ!」と告げて家を飛び出してしまうのは得策ではありません。ここでは離婚を決断する前に取っておくべき具体的なステップを整理します。ひとつ一つ実行することで、離婚後の生活への不安を減らし、有利な条件で新たなスタートを切る助けになります。
1. 専門家に相談する
まず何より、専門家の力を借りることを検討してください。依存症問題に詳しい弁護士や、自治体の無料法律相談などを利用し、現状を話してアドバイスをもらいましょう。弁護士であれば離婚手続き全般の見通しから、慰謝料・財産分与の請求方法、ご主人の借金への対処まで幅広く相談に乗ってくれます。また、依存症患者の家族支援を行っている精神保健福祉センターや自助グループへの相談もおすすめです。各都道府県の精神保健福祉センターでは依存症に関する家族からの相談を受け付けており、どう対応すべきか助言をもらえます。誰かに話を聞いてもらうだけでも心の負担が軽くなるでしょうし、プロの視点から有益な情報を得られるでしょう。
相談の際は、「離婚すべきか迷っている」段階でも全く構いません。「まだ決めていないけど、できる準備はしておきたい」というスタンスでOKです。弁護士にも「すぐ依頼するか分からないけれど話だけ聞きたい」と伝えれば、多くの場合初回相談に応じてもらえます。公的相談機関やNPOなら尚更ハードルは低いです。
2. 証拠を確保する
前述の通り、裁判まで想定するなら離婚原因を立証する証拠集めは極めて重要です。ご主人が離婚に合意し円満に別れてくれるなら証拠は不要ですが、話し合いがこじれて調停・審判・裁判へ進むと、最終的にはこちらが主張する「離婚原因の事実」を裏付ける客観的証拠が求められます。
今のうちに以下のような証拠を確保しておきましょう。
- 金銭の記録: 給与明細や銀行預金通帳の写し(入出金履歴)、クレジットカードの利用明細など。ご主人がどれだけの収入を賭博に費やし、家計に入れていなかったか示す物証になります。借金がある場合は借用書や金融業者からの督促状も有力です。
- 日記・メモ: ご主人のギャンブル発覚の日や、何度約束を破ったか、金銭トラブルや暴言・暴力があった日時と状況などを詳細にメモしておきましょう。後から時系列で主張する際に役立ちます。できれば当時のLINEやメール、録音なども残しておくと強力です。
- 映像・画像: パチンコ店に入り浸っている場面の写真や、競馬新聞・オンライン賭博のスクリーンショットなど、「依存の実態」が分かるもの。借金関連では督促ハガキ類の写真も撮って保存を。
- 診断書: もしご主人が病院で「ギャンブル障害」と診断されている場合、その診断書があれば依存症の深刻さを示す直接的証拠になります。通院歴や処方内容も含めコピーを入手できると良いでしょう。
これらの証拠は、ご主人に気付かれないよう慎重に集めてください。離婚の意思を伝えた後では証拠を隠されたり廃棄されたりする恐れがありますので、切り出す前の準備段階が勝負です。証拠が揃ったら、安全な場所(ご実家やデジタルデータならクラウド等)に保管しましょう。
3. 家計を分けて経済的自立を図る
離婚を見据えて、お金の面での自立準備も進めましょう。専業主婦(夫)で収入がない場合は、まずパートや在宅ワークでも構いませんので収入源を作る努力を始めてください。「離婚後に生活していけるか」が不安で一歩踏み出せない方は多いですが、公的支援や養育費も含めてシミュレーションすれば道は開けます。自治体のシングルマザー(ファーザー)向け支援制度(児童扶養手当、医療費助成、就労支援策など)も確認し、離婚後に利用できるものは事前に調べておきましょう。
また、ギャンブル依存の配偶者と暮らしていると家計管理が混乱しがちですが、可能な限り生活費の口座や財布を分けることも大切です。例えばあなた名義の新たな銀行口座を開設し、パート収入やへそくりをそこに貯めておく、ご主人に知られている預金は安全な場所へ移す、といった工夫です。離婚準備中にまとまったお金を引き出すのはリスクがありますから、少しずつ内緒で蓄えておくと安心です。
ご主人がこれ以上借金を増やさないよう、クレジットカードやローン契約も夫婦で分離しましょう。もし家族カードを持たせているなら利用停止にし、ご主人が勝手にローンを組めないよう金融機関にも相談しておくとベターです。「それは難しい…」という場合も、自分名義では絶対に借金しない・保証人にならない覚悟を決め、固く守ってください。依存症者のためにと情けをかけて借金肩代わりすると、かえって相手の自覚や更生の機会を奪うだけでなく、あなたと子の生活まで破綻しかねません。
4. 別居して冷静に状況を見る
離婚するか迷いがある段階でも、一度別居してみるのは有効な手です。常にご主人の一挙手一投足に振り回されている日常から離れ、物理的に距離を置くことで冷静な判断力が戻ってきます。実家や友人宅に一時的に身を寄せるのも良いでしょう。別居中にご主人が改心して治療に本腰を入れる可能性もゼロではありませんし、何よりあなた自身と子どもが一旦安心して暮らせる環境を確保する意義は大きいです。
別居の際は、生活費(婚姻費用)の分担について一筆書いてもらうか、可能なら家庭裁判所に「婚姻費用分担請求」を申し立てましょう。離婚前でも夫婦は互いに扶養義務がありますから、あなたが子どもを連れて別居した場合でも、ご主人には相応の生活費を渡す義務があります。口頭の約束だけだと支払われないリスクがあるため、公的な調停手続きを利用すると確実です。婚姻費用を受け取りつつ別居期間を設け、離婚するか否か見極めるのも一つの戦略です。
5. 家族や仲間のサポートを得る
精神的に追い詰められているときこそ、周囲のサポートが必要です。信頼できる親族や友人に悩みを打ち明け、協力をお願いできないでしょうか。「恥ずかしくて誰にも言えない」と思われるかもしれませんが、あなたが思っている以上に周囲は力になってくれます。
特に同じ悩みを経験した人たちとの繋がりは大きな支えになります。ギャンブル依存症者の家族が集まる自助グループ「ギャマノン(Gam-Anon)」をご存知でしょうか。全国各地で定期的にミーティングが開催されており、匿名で自由に参加できます。そこで吐き出された体験談やアドバイスは、きっとあなたの心に響くはずです。「自分だけじゃない」と感じられるだけでも随分救われるものですよ。
また、公的機関主催の家族教室やNPOの相談会も活用しましょう。専門カウンセラーが共依存の問題や対応の仕方を教えてくれたり、参加者同士で情報交換できる場もあります。同じ境遇の仲間と出会うことで客観的な視点が持て、「やはりこのままではいけない」という決心がつくケースも多いようです。
離婚後の心のケアと新たなスタート
十分考え抜いた末に離婚を決断し、実行に移したとしても、その後に様々な感情の波が押し寄せる可能性があります。配偶者と決別した安堵感と同時に、「本当にこれで良かったのか」「見捨ててしまったのでは」という後悔や罪悪感、あるいは長年連れ添った相手を失った喪失感に襲われることもあるでしょう。これは自然な心の反応であり、良い悪いではありません。
自分を責めないで:後悔や罪悪感との向き合い方
離婚に踏み切った後、ふと孤独を感じたり「私がもっと支えていれば…」と自責の念が出てくるかもしれません。ですが忘れないでください、あなたはできる限りの努力をされました。そして決して一方的に見放したのではなく、ご主人自身が背負うべき責任に気付いてもらうための決断でもあるのです。「依存症の家族を持つ人は自分だけで問題を抱え込まず、相手に振り回されないことが何より重要」と専門機関も助言しています。あなたがご主人の借金や問題行動を肩代わりし続けていたら、むしろご主人が自ら回復する機会を奪っていたかもしれません。そう考えて、自分を責める気持ちを少しずつ手放していきましょう。
どうしても辛いときは、カウンセリングを受けることも有益です。離婚後のシングルマザー・ファザーのメンタルサポートを行う団体もあります。一人で悩まず、プロの力も借りて心の整理をつけていってください。
子どもの心のケア
お子さんも、両親の離婚に際して様々な感情を抱えるでしょう。年齢によって表現は違えど、悲しみや混乱、不安を感じるのは当然です。大事なのは、子どもに「お父さん(お母さん)のせいでこうなった」などと言ってプレッシャーを与えないことです。間違っても「あなたのために離婚したのよ」と子どもに責任転嫁しないよう注意してください。代わりに、「これからもお父さんとお母さん、両方から愛されていることは変わらないよ」と繰り返し伝え、安心させてあげましょう。
子どもは敏感ですので、「お父さんがギャンブルをやめられないのは自分のせいでは?」などと思い悩むケースもあります。どうかお子さんには「お父さんがギャンブルを止められないのは、あなたのせいじゃない。お父さんが病気になってしまっただけなんだよ」と分かりやすく伝えてあげてください。これは依存症支援団体から子どもへの大切なメッセージでもあります。
また、必要に応じて子どもにも専門カウンセリングを検討しましょう。学校のスクールカウンセラーや地域の児童相談所など、相談先はあります。子どもが自分の気持ちを安全に話せる場を作ってあげてください。「悲しい」「寂しい」といった感情を吐き出すことができれば、少しずつ心の傷も癒えていきます。場合によっては、同じ経験を持つ子どもたちのグループ活動(ピアサポート)に参加する機会があればベストです。専門家も、「同じ立場の子ども同士が自由に遊び本来の子どもらしさを出せる場」が必要だと提言しています。そうした場では子どもは安心して本音を言えるようになり、苦しさを吐き出していけるとのことです。
新しい人生への一歩
最後に、離婚後のあなた自身の人生について触れさせてください。長い苦労の日々を経て離婚が成立したなら、どうかご自身を誇りに思ってください。簡単には決断できないことを、あなたは勇気を持って成し遂げたのです。これからは、借金の心配や家庭内不和に怯えることなく、あなたとお子さんのペースで生活を立て直していけます。
経済的には大変なこともあるでしょう。しかし、公的支援や周囲の助けを借りながら一歩ずつ乗り越えていけるはずです。離婚後しばらくは生活費のやりくりに苦労するかもしれませんが、金銭よりも大切な心の安定が手に入ったと前向きに捉えてください。実際、ギャンブル依存症の夫と離婚したある女性は「貧しくても子どもと穏やかに過ごせる今の暮らしの方が幸せ」と語っています。あなたにもきっと、平穏で笑顔の絶えない日常が訪れることでしょう。
忘れてはならないのは、あなた自身も回復途上にあるということです。長年のストレスで心身ともに疲弊しているはずですから、どうか無理せず自分を労わってください。趣味や友人との時間を楽しんだり、新しい目標を見つけたりと、「依存症問題中心」だった人生の軸足を徐々に移していきましょう。焦らずとも、時間の経過とともに心の傷は癒え、あなたらしさを取り戻せるはずです。
おわりに:後悔の少ない選択のために
ギャンブル依存症の配偶者との離婚について、法律面・心理面からポイントを述べてきました。最後にお伝えしたいのは、どんな決断であれそれはあなたが深く悩み抜いて出した答えなのだから、自信を持ってほしいということです。配偶者と歩み続ける選択も、離婚を選ぶ選択も、どちらにも勇気と覚悟が要ります。そしてそのどちらにも、少なからず後悔や迷いはつきまとうかもしれません。それでも、あなたとお子さんの未来を思って出した答えである以上、胸を張って進んでください。
離婚はゴールではなく、新たな人生へのスタートラインです。これから先、辛かった経験を糧にして、きっと今まで以上に強く優しいあなたになれると信じています。同じ悩みを抱えていた多くの先輩たちも、そこから立ち直り幸せを掴んでいる事実が勇気を与えてくれるでしょう。どうか孤独を感じないでください。必要とあれば専門家や支援団体、仲間の力を借りながら、一歩ずつ前に進んでいきましょう。
あなたとお子さんのこれからの人生に、穏やかな笑顔と安心が戻ることを心から願っています。まずは今日、ここまでこの記事を読んでくださった自分自身を褒めてあげてくださいね。「大丈夫、必ず道は開ける」と信じて…。応援しています。
理解度チェックテスト
参考文献
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