ギャンブル依存症の症例とそのパターン分類

※本記事では、実際の事例を参考にギャンブル依存症のケースを分類して紹介します。各ケースの末尾には、同じような状況の読者に向けた対策や支援情報も記載しています。

若年層のケース(10代・20代)

近年、10代~20代の若者がギャンブル依存症に陥るケースが深刻化していますbusinessinsider.jp。スマートフォンで手軽にオンライン賭博(オンラインカジノや競馬等)ができる環境や、大学生でもパチンコ・スロットに触れる機会があることが背景にありますbusinessinsider.jp。親世代からは「まさかうちの子が…」と思われがちですが、若年層でも思いがけずギャンブルにのめり込んでしまう事例が増えています。

ケース1:高校卒業直後にスロットへ
18歳で高校を卒業したAさん(20代男性)は、先輩に誘われて初めてパチスロ(パチンコ店のスロットマシン)に行きました。初心者ながらビギナーズラック(※初回の思いがけない幸運)で「1万円が5万円」に増え、「こんなに簡単に儲かるなんて…自分にはギャンブルの才能があるに違いない」と感じてしまったそうですohishi-clinic.or.jp。それから興奮が忘れられず毎日のようにパチスロ店に通い始め、親には「大学に通う」と嘘をつき、実際はアルバイトとパチスロに明け暮れる生活になりましたohishi-clinic.or.jp。負けが続いてお金が足りなくなると、家族の財布から盗む、友人に借金するといった行為にも手を出しましたohishi-clinic.or.jp。それでもAさん本人は「いつか大勝ちして借金を返せる」「自分は特別だから大丈夫」と根拠なく信じ込み、問題を直視できなくなっていました。しかし結局返済に行き詰まり、両親に泣きついて何度も借金を肩代わりしてもらう事態となりましたohishi-clinic.or.jp。自分でも「もしかして病気では?」と疑い始め、インターネットで調べて依存症専門クリニックを受診し、治療プログラム(週末の自助グループ参加など)に取り組み始めていますohishi-clinic.or.jpohishi-clinic.or.jp。Aさんの場合、最初の成功体験がきっかけで短期間で深みにハマってしまい、「あっという間にギャンブル依存症の状態になった」ことがわかりますncasa-japan.jp

ケース2:家庭環境と早期からのギャンブル
東京都在住の会社員Bさん(34歳男性)のケースでは、父親もギャンブル依存症という家庭環境の下、Bさん自身も10代でパチンコを始めてしまいましたnankainn.com。高校生の頃からパチンコ・スロット、ネット競馬などあらゆるギャンブルにのめり込み、20代のうちに賭け事につぎ込んだ総額は3,000万円以上、借金も600万円以上に達しましたnankainn.com。学生ローン(消費者金融)で借金を重ねて大学を中退し、一人暮らしの家賃も払えなくなるなど、20代ですでに生活が破綻寸前となった例です。家族に嘘を重ねて金銭援助を求め、「今度こそやめる」と誓っては裏切ることを繰り返しました。結婚目前になって借金が露見し、家族に土下座して肩代わりしてもらうも、自力では抜け出せない状態が続きましたnankainn.comnankainn.com。このケースでは、幼少期から身近にギャンブルがあったことでハードルが下がり、低年齢から依存症が進行してしまった点が特徴です。

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対策と支援のポイント(若年層)

  • 早期発見・早期治療: 若いほど「自分は大丈夫」という過信から問題を隠しがちですが、依存症は進行性で放置すると悪化しますncasa-japan.jp。少しでも「おかしい」と感じたら、勇気を出して専門機関に相談しましょう。国立病院機構久里浜医療センターの無料スクリーニングテストkurihama.hosp.go.jpなどで自己チェックも可能です。
  • 親や周囲のサポート: 学業の遅れや金銭トラブルなど兆候が見えたら、親御さんや周囲の大人は早めに声を掛けてください。「怠けている」「意志が弱い」と責めるのではなく、専門治療を受けさせることが重要です。各都道府県の精神保健福祉センターでは、依存症に関する相談を匿名・無料で受け付けています。
  • 自助グループへの参加: 若年層向けの特別プログラムは多くありませんが、ギャンブル依存症者の自助グループ(※同じ悩みを持つ当事者同士で支え合う集まり)である**ギャンブラーズ・アノニマス(GA)**は年齢制限なく参加できます。実際に20代でGAに参加し、先輩メンバーの体験談から立ち直るヒントを得たケースもありますohishi-clinic.or.jp

働き盛り世代のケース(30代・40代)

**働き盛りの世代(30〜40代)**は、一見「仕事も家庭も順調」なようで隠れたギャンブル問題を抱えるケースが少なくありません。責任あるポジションに就いていたり家族を養っていたりするため、問題が表面化しにくいのですが、発覚したときには社内横領や多額の借金など深刻な事態に至っていることもありますbusinessinsider.jpbusinessinsider.jp

ケース1:20代サラリーマンの隠れ依存
Cさん(28歳男性)はごく普通のサラリーマンで、結婚当初は穏やかな人格者でした。しかし「他に面白いこともなくて、気が付いたらパチンコ台の前に座っている」という夫の一言から、妻は異変に気付きますbusinessinsider.jp。実際、結婚後しばらくして夫の金遣いが荒くなり、「会社の経費精算が遅れて現金が足りない」「仕事の材料費が必要だが会社からまだ支給されない」などと様々な理由で妻に少額ずつ無心するようになりましたbusinessinsider.jp。家や車からは競艇の投票券やパチンコ景品の残骸が見つかり、問い詰めると上記のように吐露したのですbusinessinsider.jp。その後も夫は「自力でやめられる」と治療を拒否し、休日も出勤と偽って朝からパチンコ通い。さらに取引先社員や同僚から総額240万円もの借金をしていたことが発覚し、ついに勤務先にも迷惑をかける事態となりましたbusinessinsider.jp。会社は被害回避のためにいったん同僚らへの返済を肩代わりし、その債務を夫の家族(妻や実家)に請求する事態にまで発展しましたbusinessinsider.jp。このケースでは、会社のお金や同僚との信頼関係まで巻き込んで問題が拡大しています。妻の説得でCさんはようやく依存症の回復施設に入所し、治療を開始しましたbusinessinsider.jp

ケース2:エリート社員の多額横領事件
Dさん(34歳男性)は社内でも信頼の厚い社員でしたが、実は10代からの筋金入りのギャンブル依存症でした(前述のBさんと同一人物です)。結婚を機に「いつかはやめねば」と思いながらもやめられず、借金が雪だるま式に増えて会社の金を横領したり、自社の備品を無断で売却したりするまでになりましたbusinessinsider.jp。サポート団体代表の田中紀子さんによれば、彼の横領総額は9,000万円にも上ったと言いますbusinessinsider.jp。Dさんの妻は夫から婚約時に借金を打ち明けられ、「私が何とか正さねば」と奮起します。夫を厳しく叱責し、小遣いを厳格に管理し、スマホの位置情報で行動を監視するなど手を尽くしましたnankainn.com。しかしそれでも裏切りは続き、妻は徐々に追い詰められていきましたnankainn.com。最終的にDさんは職場にも居られなくなり、家族も崩壊寸前となってから専門治療につながったそうです。「仕事もできて人当たりも良い」人が裏で多額の借金を抱えているのがギャンブル依存症の怖いところで、同僚や家族も長い間気付かなかったといいますbusinessinsider.jpbusinessinsider.jp

ケース3:公務員による捜査費の使い込み
最近の報道では、公務員による賭博絡みの不祥事も明らかになっています。奈良県では警察署の40代刑事課長が一時失踪し、後にパチンコ店で保護されましたが、捜査費を私的流用した横領容疑も浮上しましたbusinessinsider.jp。このように社会的地位のある人でも、ギャンブル依存症が原因で公金を費消し懲戒処分・刑事事件に発展する例があります。「真面目に働いているように見える」会社員や公務員による横領事件が相次いでいることからも、企業・組織側での対策の必要性が叫ばれていますbusinessinsider.jpbusinessinsider.jp

対策と支援のポイント(働き盛り世代)

  • ストレスの健全な解消: 仕事上のストレスやプレッシャーを抱える30〜40代は、そのはけ口にギャンブルを選びがちです。「少しだけ」のつもりがいつしか深みにハマることも。minnanokaigo.com趣味や運動など健全なストレス発散法を持ち、生活のバランスを保つことが予防になります。
  • 会社のリソースを利用: 近年は企業側も従業員のギャンブル問題に対応を迫られていますbusinessinsider.jp。所属企業の産業医社員相談窓口、メンタルヘルスのEAP(従業員支援プログラム)などが利用できる場合は積極的に相談しましょう。日本郵政では職員向け啓発ポスターを掲示するなど取り組みも始まっていますbusinessinsider.jp
  • 借金の透明化と法的整理: 隠れ借金がある場合、専門家の助言のもと債務整理(さいむせいり:法律に基づき借金を減額・免除する手続き)を検討してください。自助グループや回復者からアドバイスを受け、自ら過払い金請求や自己破産手続きをして立ち直った例もありますohishi-clinic.or.jp。借金問題をうやむやにせず明確にすることが再出発の第一歩です。
  • 家族・同僚は抱え込まない: 同僚に借金を申し込まれたり、家族が尻ぬぐいをするケースが多々ありますbusinessinsider.jp。しかし肩代わりは根本的解決になりません。むしろ借金の申し入れを断り、早期に専門治療につなげることが本人のためです。家族向けには各地の家族会(ギャンブル依存症問題を考える会や全国ギャンブル依存症家族の会など)が相談先として頼りになります。

女性・主婦のケース

ギャンブル依存症というと男性の問題と思われがちですが、女性のケースも少なくありません。特に主婦の場合、表面化しづらく周囲が気づきにくい傾向があります。「妻や母親がギャンブルにハマるはずがない」という先入観もあり、発見が遅れる要因にもなっています。実際には、家事や育児、夫との関係のストレスから逃れるためにパチンコ等にのめり込む主婦の体験談も多く報告されていますkokoro.mhlw.go.jp

ケース1:真面目な主婦が借金地獄に
Eさん(30歳女性)は「学生時代は真面目な優等生」で、ギャンブルとは無縁の人生を歩んでいましたkokoro.mhlw.go.jp。初めてパチンコ店に入ったのは20代前半、会社の同僚に誘われた時です。「親に知られたら怒られる」とビクビクしながら座ったパチンコ台で、ビギナーズラックの大当たりを経験しましたkokoro.mhlw.go.jp。Eさんはその時「自分の力でスゴイことをやり遂げたような気がした。こんな楽しい世界があったのか」と感じたといいますkokoro.mhlw.go.jp。しかしその直後は一人でパチンコに行く勇気はなく、しばらく足を洗っていましたkokoro.mhlw.go.jp

1年後、Eさんは年下の男性と結婚しますが、新婚生活は理想と程遠く失望の日々でした。夫は仕事で多忙でほとんど一緒に過ごせず、収入も低いため生活は常にギリギリ。Eさん自身もパートに出て家計を支えましたが余裕はありませんでしたkokoro.mhlw.go.jp。そんな中、Eさんは**「少ない生活費を増やしたい」**一心で一人でパチンコに通うようになりますkokoro.mhlw.go.jp。パチンコで大当たりを出せば家計が楽になるかも…という期待と、退屈な毎日に刺激を求める気持ちがあったと言います。「パチンコをしている時だけは将来への希望が湧き、元気になれた。あの頃の私にとって唯一のエネルギー源がパチンコだった」と振り返っていますkokoro.mhlw.go.jp。しかし当然ながらギャンブルでお金は増え続けるわけもなく、次第に借金が膨らんでいきました。給料日には現金を全てパチンコにつぎ込み、**夫に隠れて消費者金融でキャッシング(高金利の借入)**を繰り返すようになりますkokoro.mhlw.go.jp。ついには自分名義のカードだけでなく夫名義のカードにも手を出し、借入額が雪だるま式に増加しましたkokoro.mhlw.go.jp

夫は当初、妻の借金について「自分の給料が安いからだろう」と思い込み、会社から低金利でお金を借りて返済に充てるなど尻拭いをしてくれていましたkokoro.mhlw.go.jp。しかし何度返しても減らない不審な借金に上司が気付き、夫は「すべて話してくれ」とEさんに促しましたkokoro.mhlw.go.jp。追及されたEさんは観念し、パチンコに依存していたことや結婚生活への不満を全て打ち明けますkokoro.mhlw.go.jp。その結果、夫から「離婚したい」と告げられてしまいましたkokoro.mhlw.go.jp。当時のEさんは借金とギャンブルで心身が麻痺し、「ぼーっとしてすべてを人任せ」にしていた状態で、夫には反省の色がないように見えたのかもしれませんkokoro.mhlw.go.jp。こうしてEさんは離婚し実家に戻ることになりましたkokoro.mhlw.go.jp。その後、自己破産手続きによって借金はゼロになったものの、喪失感からくるイライラで再びギャンブル衝動が起きかけますkokoro.mhlw.go.jp。幸い友人の勧めで心療内科を受診し、精神科医によるカウンセリングと薬物治療を受ける中で少しずつ自分を見つめ直すことができましたkokoro.mhlw.go.jp。「それまでは自分のことを考えるのを後回しにしていたが、今は『自分自身が大事』と思えるようになった。パチンコをやらなくても楽しいことはいっぱいあると分かった」と語り、現在はアルバイトをしながら子どもと2人で新しい生活を再建していますkokoro.mhlw.go.jp。このケースは、平凡で真面目だった女性が環境の変化やストレスからギャンブルにのめり込み、家庭崩壊や自己破産にまで至った例です。しかし専門家の助けで**「底つき」**(※底を打つこと。どん底の経験)を契機に立ち直り始めた成功例とも言えます。

ケース2:海外における女性の重度依存
女性のギャンブル依存症は海外でも問題となっています。例えばアメリカの事例ですが、Mさん(30代女性)は幼少期に家族にギャンブル好きの祖母がいて「あなたはおばあちゃんに似ている」と言われて育ちましたmnapg.orgmnapg.org。家庭は薬物や虐待が蔓延する機能不全家族で、幼い頃から心の傷を負っていたといいますmnapg.org。Mさん自身は結婚後しばらくは年に一度カジノに行く程度でしたが、離婚をきっかけに頻繁に通うようになり、ある日スロットマシンで高額賞金を得たことで人生が一変しましたmnapg.org。彼女は「これを仕事にすべきだ。この速さでお金を稼げる方法は他にない」と考えるようになり、興奮を求めて賭け金もどんどん高額になっていきましたmnapg.org。気づけば6桁(数十万ドル)規模の裁判和解金をわずか3ヶ月で使い果たし、一年に満たない間に7回も住居を転々とする生活破綻に陥りましたmnapg.org。さらにギャンブル資金を工面するために男性と付き合い売春同然の行為でお金を得ることにも抵抗がなくなってしまったそうですmnapg.org。それほどまでに自己を見失い、「もし今日カジノで勝てたら生きよう。負けたら自殺しよう」と考えながら車を走らせる日々で、実際に3度の自殺未遂を経験していますmnapg.org。彼女は「死にたいという思いに支配されていた」と振り返りますmnapg.org。最終的に「このままではいけない」と思い直し、自力で州の依存症相談窓口に電話して入院治療プログラムを紹介してもらい、ようやく回復への一歩を踏み出しましたmnapg.org。この事例は極端に思えるかもしれませんが、「大勝ちの経験」「離婚のストレス」「幼少期のトラウマ」といった要因が重なり、女性でも男性同様かそれ以上に深刻な依存状態に陥りうることを物語っています。

対策と支援のポイント(女性)

  • 孤立しない: 主婦やシングルマザーの場合、家庭内で孤立し誰にも相談できず抱え込んでしまうケースが多いですkokoro.mhlw.go.jp。恥ずかしいと感じるかもしれませんが、信頼できる友人や実家の家族などに勇気をもって打ち明けてください。外部に話すことで状況が客観視でき、解決の糸口が見えることがあります。
  • 専門機関や自助グループの活用: 女性専用の相談窓口は少ないものの、一般の依存症相談窓口は性別に関係なく利用できます。厚生労働省の依存症ホットラインや各地の精神保健福祉センターに連絡してみましょう。また、ギャンブラーズ・アノニマス(GA)は男性中心と思われがちですが、参加者の約3割は女性という報告もありますmhlw.go.jp。女性の参加も歓迎されていますし、オンラインミーティング等で匿名で話を聞くことも可能です。
  • 経済的自立と生活の立て直し: 主婦の場合、経済的に配偶者に依存していると問題の露見時に離婚や破産で生活が立ち行かなくなるリスクがあります。ケース1のEさんは離婚後に就労して生活を再建しましたkokoro.mhlw.go.jp。依存から抜け出すには経済的自立も大切です。自治体の生活福祉資金の貸付制度や就労支援制度など、利用できる公的支援は積極的に活用しましょう。
  • 家族への説明: 母親がギャンブル依存になった場合、子どもへの影響も心配です。当事者団体がまとめた子ども向けの説明ガイドなどもありますscga.jp。年齢に応じて正直に状況を伝え、二次被害を防ぐ対応も必要です。

高齢者のケース

定年退職後の高齢者が老後の寂しさを紛らわすためにギャンブルにハマってしまうケースも見過ごせません。日本では定年制が一般的で、多くの人が65歳で職を失い大きな喪失感を味わいますminnanokaigo.com。特に仕事一筋だった人ほど、退職後に「仕事がない・家庭で居場所がない・趣味がない」という「3無い状態」に陥り、その寂しさをお酒やギャンブルで埋めようとすることが多々見られますminnanokaigo.com。時間と退職金に余裕がある分、のめり込みやすい土壌があるとも言えます。

ケース:定年後に再燃した競馬依存
Fさん(60代男性)は40代頃から会社でのストレス発散に休日の競馬通いを始め、家族には「仕事だ」と嘘をついて毎週競馬場に出かけていましたohishi-clinic.or.jp。自費接待や出張と称してお金を要求されることもありましたが、妻は不審に思いつつも言われるがままお金を渡していたそうですohishi-clinic.or.jp。やがて60歳で定年退職を迎えた際、夫Fさんから数百万円規模のギャンブル負債があると突然告白されますohishi-clinic.or.jp。退職金をつぎ込んでも足りず、さらに貯蓄を取り崩して返済に充てる羽目になりましたohishi-clinic.or.jp。妻はショックを受けつつも、夫の「もう二度と競馬はしない」という約束を信じ、本人も「さすがに懲りただろう」と思っていたと言いますohishi-clinic.or.jp。ところがわずか数ヶ月後、夫はまた競馬を再開してしまいましたohishi-clinic.or.jp。結果、半年足らずで再び借金を作り、妻は愛想を尽かして夫と口を利かなくなってしまいますohishi-clinic.or.jp

このまま家庭崩壊かと思われた矢先、親族の勧めもありFさんは専門クリニックに通院して治療を受け始めました。週1回の外来ミーティングに夫婦で通い続け、1年が経過する頃には夫婦間の会話も戻り、「一緒に過ごす時間が楽しい」と感じられるまでに関係が修復してきましたohishi-clinic.or.jp。妻は「また競馬をしているのでは?」と不安になる日もあるそうですが、「夫を信じて自分の生活を大事にしていきたい」と前向きに語っていますohishi-clinic.or.jpohishi-clinic.or.jp。このケースでは、退職を機に再燃したギャンブル依存が家計を直撃しましたが、専門治療と家族教室(家族向けプログラム)への参加によって、夫婦関係を修復しながら回復に取り組んでいる点が注目されます。

一般的に高齢者は記憶力や判断力の低下もあり、金銭管理がずさんになりがちです。年金を受け取ったその足でパチンコ店に向かって使い果たしてしまうお年寄りや、ギャンブル資金欲しさに高齢者でもできる軽犯罪(万引きや年金詐取など)に走るケースも指摘されていますminnanokaigo.com。また、高齢になると認知症との鑑別も問題になります。認知機能の低下によりギャンブルへの抑制が効かなくなっている場合、専門治療と並行して認知症ケアも検討する必要があります。

対策と支援のポイント(高齢者)

  • 退職前後のプランニング: 定年を迎える前に、生きがい作り社会参加の計画を立てておくことが重要ですminnanokaigo.com。趣味やボランティア、地域のシニアサークルに参加するなど、仕事以外の居場所を確保しておくとギャンブルに依存しにくくなります。自治体主催のシニア向け講座やスポーツ教室なども積極的に利用しましょう。
  • 金銭管理の見直し: 老後にまとまった退職金や年金が入ると、一度に大金を賭けてしまう誘惑が強まります。信頼できる家族に金銭管理を部分的に委ねたり、銀行預金を定期預金や信託にしてすぐ引き出せないようにするなどの工夫も有効です。また、高齢の親がいる場合、定期的に通帳や家計の様子を確認し、異変がないかチェックしてください。
  • 周囲の目配り: 高齢者本人が「暇つぶしだから大丈夫」と考えていても、周囲から見て異常な賭け方をしていれば介入が必要です。本人が嫌がっても根気強く説得し、専門医療につなげましょう。各地の依存症治療拠点病院(久里浜医療センターなど)では、高齢患者への対応経験も蓄積されています。「年だから治らない」は誤りで、何歳からでも回復は可能です。実際に70代で治療を開始し、パチンコから足を洗ったケースもあります。家族だけで抱え込まず、専門家に相談してください。

併存疾患があるケース(メンタルヘルスの問題)

ギャンブル依存症の当事者には、他の精神疾患を併せ持つ(併存する)ケースも多く報告されていますkurihama.hosp.go.jp。併存疾患とは、ある病気が他の病気と一緒にみられる場合のことでkurihama.hosp.go.jp、ギャンブル依存ではニコチン依存(喫煙)、アルコール依存、うつ病などの気分障害、不安障害(パニック障害など)を持っている人が多いことが知られていますkurihama.hosp.go.jp。国内の研究では、調査対象者の**約38.6%**に何らかの精神科疾患の併存が見られ、その中で最も多いのはうつ病だったとの報告がありますmhlw-grants.niph.go.jp。このようにメンタルヘルスの問題とギャンブル依存は密接に関連しており、相互に悪影響を及ぼすことが少なくありません。

ケース:社交不安と双極性障害を抱えた男性
Gさん(30代男性)は大学1年生の時に初めてパチンコを経験しましたが、当時から社交不安障害(人付き合いに強い不安を感じる症状)と双極性障害(躁うつ病)を抱えており、常に孤独感と抑うつ気分に苦しんでいましたncasa-japan.jp。ある朝、弟が「気晴らしに」とパチンコ店に誘ってくれたことで生まれて初めてパチンコを打ち、千円が20万円に化ける大勝を経験しますncasa-japan.jp。Gさんは「手が震えるほどの大金が一日で入ってきたことに驚愕し、それまでの寂しく辛かった気持ちが一瞬で吹き飛んだ。言い表せない高揚感と満足感でいっぱいになった。まるで自分が自分でないような感覚だった」と語っていますncasa-japan.jp。それは彼にとって、長年の孤独やうつ状態から解放され“多幸感”を得られた瞬間でした。以降、彼は授業にも行かず友人とも会わずギャンブルにのめり込む生活となり、気付けば依存症状態に陥っていましたncasa-japan.jp。勝てばもっと興奮を求め、負ければ取り戻そうと強迫的になり、持ち金が尽きるまで打ち続けますncasa-japan.jp。資金欲しさに友人から金を借り、消費者金融からも借金し、結果的に留年6回・大学在学10年以上という異常事態になりましたncasa-japan.jp。周囲の人も離れていき、嘘と隠し事だらけの生活で孤立が深まる中、「死にたい」という気持ちがふつふつと湧き上がり、何度も自殺未遂を繰り返すまで追い詰められましたncasa-japan.jp。そんな彼が転機を迎えたのは、家族に連れられて精神科医の診察を受けたときでしたncasa-japan.jp。医師にこれまでの苦しみをすべて打ち明けると、「自分の話を真摯に聞いてもらえただけで心がすっきりした」のだそうですncasa-japan.jp。Gさんが「どうしたらギャンブルをやめられますか」と尋ねると、医師からは**「ギャンブル依存症は完治はしないけど回復はある」と説明されましたncasa-japan.jp。この「完治はしないが回復はある(寛解はできる)」という言葉は、依存症治療においてよく使われる専門用語で、「病気が完全になくなるわけではないが、適切な対処を続ければ問題なく生活できる状態には持っていける」という意味です。医師や自助グループの仲間の支えも得て、Gさんは少しずつ回復プログラムに取り組み、現在は希死念慮**(きしねんりょ:死にたい気持ち)も消え、就労しながら断ギャンブルを継続しています。

このように、うつ病や不安障害など精神的な不調を紛らわせる手段としてギャンブルに走り、結果として依存症を併発してしまう例が見られます。また、発達障害の一種である**ADHD(注意欠如・多動症)**の特性を持つ人は衝動性の高さからギャンブル依存になりやすいという指摘もあります(注意力が散漫で理性より目先の刺激を優先しがちなため)。他にも、不眠症から来る抑うつや、慢性的な痛みを抱えて鎮痛剤依存とギャンブル依存を併せ持つケースなど、様々な組み合わせが報告されています。

逆に、ギャンブル依存が長引くことでうつ状態や不眠、人格変化を引き起こすこともあります。借金や人間関係の破綻による自己嫌悪や絶望感から二次的にうつ病を発症したり、慢性的な睡眠不足や栄養失調で体調を崩す人もいます。ギャンブル依存症者はアルコールや薬物と異なり身体への直接的な影響は少ないとされますが、その分仕事や家庭で「元気に振る舞ってしまい」、周囲に気付かれないまま心の病が進行している場合があるので注意が必要ですbusinessinsider.jp

対策と支援のポイント(併存症)

  • トータルな治療: ギャンブル依存症と併存する精神疾患はお互いに悪影響を及ぼします。専門医療では両方の治療を並行して行うことが重要ですkurihama.hosp.go.jp。例えば、うつ病があれば抗うつ薬の投与やカウンセリングを行いながら、ギャンブル依存に対する認知行動療法や自助グループ参加を進めます。どちらか一方だけでは再発(スリップ:一時的な再発)しやすいため、包括的なアプローチが必要です。
  • 自己診断に頼らない: 「自分は鬱っぽいからギャンブルくらい許される」「ADHDだから衝動を抑えられない」などと自己判断で決めつけないようにしましょう。それらは専門家の診断・治療で対処可能なものですncasa-japan.jp。心療内科や精神科の受診をためらわず、正しい診断を受けることが回復への近道です。ギャンブル依存かどうか迷う場合も、まずは専門医に相談してみてください。
  • 家族も症状に注目: 家族や周囲の方は、依存症当事者の気分の浮き沈みや「死にたい」といった発言を見逃さないようにしてくださいkurihama.hosp.go.jp。併存症があると自殺のリスクも高まりますkurihama.hosp.go.jp。深刻な精神症状が見られる場合、迷わず精神科救急や地域の保健センターに連絡し、危機介入を求めましょう。精神科の治療と並行してギャンブル問題にも対応してくれる医療機関(依存症治療拠点病院など)を紹介してもらえることもあります。
  • 周囲の理解: 併存症を抱える当事者は「怠けている」と誤解されがちですが、実際には複数の病で苦しんでいます。職場や学校で配慮が必要な場合、主治医から症状を説明する書面を書いてもらうなどして周囲の理解を得ることも大切です。もちろん本人の許可とプライバシー尊重は必要ですが、環境調整も回復を助けます。

おわりに

ギャンブル依存症の症例を年齢、性別、背景要因、併存症の有無といった観点から紹介してきました。どのケースにも共通しているのは、「自分だけは大丈夫」という思い込みと、問題の発覚後に訪れる破滅的な結果」です。ギャンブル依存症は本人の意志の弱さではなく、脳の報酬系の変化によってコントロールが効かなくなる疾患だと医学的にも認められていますkurihama.hosp.go.jpkurihama.hosp.go.jp。決して恥ずべきことではなく、適切な治療とサポートによって回復が可能な病気ですncasa-japan.jp

本記事の症例に少しでも「自分に当てはまるかも」「身近なあの人が心配だ」と感じたら、一人で悩まずに行動を起こしてみてください。相談先はたくさんあります。以下にいくつか代表的な支援先を挙げます。

  • 医療機関: 国立病院機構久里浜医療センターkurihama.hosp.go.jpや専門クリニック(例:大石クリニック)では、外来治療から入院プログラムまで用意されています。まずは地域の精神科・心療内科に相談し、専門施設を紹介してもらうのも良いでしょう。
  • 自助グループ: ギャンブラーズ・アノニマス(GA)は全国各地でミーティングを開催しています。公式サイトから最寄りの会場やオンラインミーティング情報を得られます。経験者たちの体験談は大きな気づきと励ましになるはずです。
  • 公的相談窓口: 厚生労働省の委託する「依存症相談拠点」は各都道府県に設置され、電話やメールで無料相談が可能ですkokoro.mhlw.go.jpkokoro.mhlw.go.jp。また自治体の保健所や精神保健福祉センターでもギャンブル問題の相談を受け付けています。匿名で構いませんので、まずは話を聞いてもらってください。

ギャンブル依存症は周囲の協力と適切な支援で必ず回復への道が開けます。本人が「もう無理だ」と感じても、専門家や同じ経験をした仲間は決して見放しません。今回紹介したケースの中にも、どん底から立ち直り新たな人生を歩み始めた人がいます。あなたも決して遅くはありません。一歩踏み出す勇気が、未来の自分を救う第一歩になります。まずはできることから、始めてみましょう。

参考資料・出典(各症例中に引用したもの):国立病院機構久里浜医療センターkurihama.hosp.go.jpkurihama.hosp.go.jp、厚生労働省「こころの耳」体験記kokoro.mhlw.go.jpkokoro.mhlw.go.jp、ギャンブル依存症問題を考える会提供資料nankainn.com、Business Insider Japanbusinessinsider.jpbusinessinsider.jp、専門治療機関の症例紹介ohishi-clinic.or.jp、Minnesota Alliance on Problem Gambling(米国)mnapg.orgほか.

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